SEE YOU 9
廊下に落ちていた指輪をはめるようになってから、眠くなりやすくなったように感じる。記憶のレギュラスが消えてしまってからの私にとっては、少し有難かったりする。眠ってしまえば現実と向き合わなくていいから。
現在の時刻は深夜3時。夜空には蒼い月が出ている。暗い部屋にぽつんと置かれたベッドの上で丸まりながら、夢の世界へと引きずり込まれそうになっていた。完全に意識が引きずり込まれる、というときに近くから誰かが私の名前を呼んだ気がした。

「メル、タオルケットをきちんとかけないと風邪をひいてしまいますよ」

なんだかこんな状況は前にもあった気がする。わかってるよって返事したいのに上手くしゃべれない。うっすらと閉じていた目を開けると、心配そうにこちらを見ているレギュラス。幻が見えるようになるなんてとうとう私も末期だなと思う。

「今まで辛い想いばかりさせてすみませんでした」

彼の手が優しく私の前髪を撫でるから、私はふにゃっと笑ってしまう。

「1週間メルと一緒にいて、決めました。

記憶の姿ですけど、メルが死ぬまで僕はずっと一緒にいます。」

撫でていた手で前髪をよけて、レギュラスが私の額にキスをする。
あれ?ちょっと待て。どうして実体のないはずのレギュラスが私に触ったり、キスしたりできるんだろう。一気に眠気が吹き飛んで、目の前の彼をまじまじと見る。

『え!?どうして透けてないの!?』
「気がつくのが遅すぎです」

どういうこと!?と勝手に一人でパニックを起こしている私を見て、レギュラスがため息をつく。

「メル、最近酷い眠気に襲われていませんでしたか?」
『うん、かなり』
「それ、僕のせいです。というか、ちゃんと手紙を読みましたか?」

最後の手紙を渡され、もう一度読み直す。うん。わたしちゃんと読んでる。一通り目を通して顔をあげるとまたため息をつかれた。

「もっと、下のほうも見てください」

もっと下・・・言われた通りにするとすごく小さい文字で何かが書かれていて、思わず凍りつく。

“消えるのは、記憶の状態を維持するための力を失ってしまうためなので回復すれば見えるようになります。
記憶の僕が刻まれている指輪をメルがつけてくれれば、早く回復できると思います。
でも、メルが酷い眠気に襲われてしまう上、魔力も少し減らしてしまうのであまりおすすめはしません。
あと、力が完全になれば一時的にですが、実体化できるようです。
記憶の僕が必要になったときはそうやってください。”


今度こそ、最後まで読み終えて恐る恐る顔をあげる。

「メルって本当にバカですよね」
『返す言葉もございません』

じとーっとした目で私を見下ろすレギュラスの視線がすごく怖い。

「さっきも言いましたが、僕はメルのそばにいると決めました。あの1週間であんなに泣いている姿を見せられてしまったら消えるに消えきれません。ねえ、メル。僕はメルのそばにいると決めましたが、貴女はそれを許可してくれますか?」

答えを知っているくせに聞いてくるレギュラスはいじわるだと思う。だけど、またレギュラスと一緒にいられるんだという安心感から涙がぼろぼろとこぼれだす。

『お、お願いします・・・私のそばにいてください』

この前まで泣いている顔を見て、ひどい顔と言っていたレギュラスは珍しく「ありがとう」と言って抱きしめてくれた。

ねぇ、レギュラス。
私は貴方に出会えて本当に幸せだったし、今も幸せだよ。
私を選んでくれて、本当にありがとう。


イン


(雨はいつか止むのでしょうか)
(そっと差し出した傘の中で温もりに寄り添いながら)
(僕たちは再び歩き出す)

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曲:【レイン/シド】
10/19