画面にキスしてみても
黒子くんに応援に来てほしいと言われて指定された時間に会場に行ったけれど、そこで試合をしていたのは誠凛ではなかった。
試合をしていたのは、緑間くんが入学した秀徳高校。最前列で応援しようと思って端っこの席まで人混みを必死になって抜けていったから、そのことに気がついたのは最前列に出たあとだった。
中学校の頃とかわらない緑間くんのプレースタイル。変わったのは、一緒にプレーしているのが赤司くんや黄瀬くんたちではないことくらい。緑間くんが放つ、ボールは綺麗にリングに吸い込まれていく。そして、ボールがリングをくぐり抜けると周りから大きな歓声が鳴り響く。
『緑間くん、』
なんとなく、歓声に紛れてしまえば私の声なんて聞こえないだろう。
そう思って、彼の名前をつぶやいたのだ。
だけど、
私の視線の先にいる緑間くんは、私の声に反応したかのようにこちらを見上げた。
本来ならば、この大きな歓声で私の声だけを聞き分けるなんてできるはずがない。とにかくここから居なくなるに越したことはない。そう思って、大きく目を見開いてこちらを見ていた緑間くんの視線を振り切り、わたしは人混みの中に逃げ込んだ。体育館の中の人通りの少ない通路にしゃがみ込んで、ケータイを取り出す。画面に映るのは先程まで見ていた緑間くんが楽しそうに帝光バスケ部のみんなと話している写真。あの頃に戻りたいよ。いつの間にか視界が涙でぼやけ、ケータイの画面も涙で濡れ始める。
『緑間くん、大好きだよ』
勝手に何も言わないままいなくなってごめんなさい。
画面にキスしてみても
貴方からの言葉は、何もかえってこない
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