They were left behind. And... 2

船の番をパガヤ達に任せ、カズハはコニスと共に一向に目を覚まさないサンジとウソップの介抱を引き受けた。浮かんだ汗を拭い、お絞りを交換しているときにコニスはそう言えばと口を開いた。

「この包帯カズハさんが巻いたんですってね。とってもお上手です。」

「ありがとう...ございます。」

賞讃するコニスに対しカズハは歯切れの悪い返事を返した。膝の上に置かれた手はギュッと握られていて、悔しそうに歯噛みされた唇には血が滲んでいる。
不思議に思ったコニスがどうしたんですか?と聞くとカズハは話し始めた。

「私...焦ってるんです。森で目が覚めるより前を何にも覚えてなくて、もし覚えていたらもっと皆の役に立てたんじゃないかって...」

こんな大変な時でも何かできる事があるんじゃないかと烏滸がましいとわかっていても考えてしまう。
そんな彼女の考えをコニスは静かにきっぱりと否定した。

「そんなことありませんよ。カズハさんは十分皆さんの役に立ててます。だって私にはお二人の手当てをこんなに綺麗にすることはできませんから。」

本当にとってもお上手なんですよとコニスは笑いかけた。それでもカズハの顔は晴れず、次の言葉を考えているコニスを見て言葉を続けた。

「二人の手当てもそうです。どうにかしなくちゃって考えてたら勝手に手が動いてて...まるで私じゃない誰かが体を動かしているようでした。」

自分のことをこれっぽっちも思い出せないのに、体は自分が誰なのか知っているようだ。意識のある自分より無意識であろう体の方が自分についてより詳しくて、そして自分はまだ記憶が戻る片鱗すら見せない。

「どうして私は包帯を巻けたんでしょうか?私は私のことを何にも知らないのに、手当てをすることができたのはどうしてでしょうか?」

どこにも矛先を向けられない憤りをカズハは感じていた。自分のことなのにどうしてと、そんな彼女を見てコニスはカズハの拳に手を重ねる。

「焦らなくても思い出す時が必ず来ますよ!まだその時ではないだけです。カズハさんは青海のお生まれなのでしょう?青海に戻ったらきっと、思い出すことができるはずですよ。」

優しい表情で話されたそれはカズハにちゃんと届いた。
そうでしょうかと自信なく紡ぎ出される声にコニスはしっかりと頷く。そして何を思ったのかクスッと笑った。

「怖がっていたと思えば怒ったり、焦ったり...カズハさんはお忙しい方ですね。」

「だって...仕方ないじゃないですか...私を知っている人は誰もいないのに.........」

バツが悪そうに視線を逸らすカズハを見てコニスはまた笑った。

「知ってますよ。」

「え...?」

「知ってますよ。カズハさんのこと、残念ながら記憶を無くす前のカズハさんは知りませんけどね。」

「コニスさん.........」

にこやかに笑う彼女を見てカズハは溢れそうな涙を押し込み微笑んだ。
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