5月1日。地球を爆破されるまで残り11ヶ月になった。かと言って私は何をするわけでもなく未だ傍観者に徹している。
そんな中クラスに一人の先生が赴任してきた。
先生の名はイリーナ・イェラビッチ。学校側の意向で呼ばれたみたいだけどそれは本当なのか...と言うことは置いておこう。彼女はとても美人だ。胸がでかいし。でも...
「ああ...見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいなつぶらな瞳、曖昧な関節...私虜になってしまいそう。」
なぜか先生にベタベタ抱きついている。これがなければ少しは好感持てたんだけどな...
ところで先生は彼女のことをどう思っているのか、彼女が暗殺者だとすると彼は何を考えているのか、気になって先生を観察すると彼女の胸の谷間を見て何の捻りもない締まらない顔をしていた。
(あ、なんかもう...どうでもいいや。)
一気に熱が冷めたので寝ようと思う。しばらくすると誰かに肩を叩かれた。まだ授業が始まる時間じゃないし、一体誰が私を起こそうとしたのか、顔を上げると茅野ちゃんがそこにいた。
「ねえ、沢田さんも一緒に行かない?」
「今からみんなで暗殺を混ぜたサッカーをするんだ。」
「なんで私?」
茅野ちゃんの後に後ろにいた渚が説明を加える。突然の誘いに首を傾げると茅野ちゃんは笑顔で強いからと言った。
「体育の授業で烏間先生との実戦訓練があるでしょ。沢田さんっていつも烏間先生と互角に戦ってて凄いなって、殺せんせーの暗殺、沢田さんもやろうよ。」
烏間先生は強いから手を抜くなんて勿体ない。そう思って真面目にやってるけど、烏間先生と互角...本当にそうなのだろうか。
「...そう言ってくれるのは嬉しいけどごめんね。そう言うのには興味ないんだ。それに烏間先生との対戦、昔から武道やってるからできるだけだし。経験があればだいたいできるから大したことないよ。」
「じゃあ、せめて運動場までどうかな?参加しなくていいから。何か気付いた事があったらアドバイスして欲しいな。」
茅野ちゃんと渚は真っ直ぐな目で見てくる。無下に断る理由もないのでしょうがないなと立ち上がる。
喜ぶ二人、それに対して一部始終を見ていた磯貝、前原らが私に何かやってほしいことがある時は渚か茅野ちゃんに頼もうと会話しているのが聞こえた。聞こえなかった振りをして早く行くよと二人を促す。
「沢田さんありがとう。」
「別に。」
沢田さんがいてくれると心強いよねと二人は話す。
「...力ってのはね、誇示するものじゃなくて隠すものなんだ。」
「え?」
「私が言うのもあれだけどね、力は隠した方がいい。強ければ強いほど要らないものを引き付けてしまうから。」
茅野ちゃんは私が強いと言った。私はそう思わない。だってそうだろ。本当に私が強かったら守りたかったものを守れているはずなんだ。
「...変な話しちゃったね。行こっか。」
外に出ると何人かがもう始めていた。
もちろん私は通常運転で階段に座ってそれを眺めてるだけ。しばらくすると後ろから軽快な足どりでイリーナ先生が走ってきた。
「殺せんせー!烏間先生から聞きましたわ。すっごく足がお速いんですって?」
「いやぁそれほどでもないですねぇ。」
「お願いがあるの。一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて、私が英語を教えている間に買って来て下さらない?」
「お安いご用です。ベトナムに良い店を知っていますから。」
そうして殺せんせーはマッハ20でベトナムへ行ってしまった。するとイリーナ先生は殺せんせーがいなくなった途端態度ををガラリと変え“イェラビッチお姉様”と呼ぶようにと言う。でも、ここで先生を茶化すのはカルマで、先生の呼び方がビッチねえさんに。
「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスタービッチねえさん1人で殺れんの?」
「...ガキが。大人にはね大人の殺り方があるのよ。潮田渚ってあんたよね?」
「?」
(うっわぁ〜。)
渚に近づくとビッチねえさんはキスした。それも深いやつ。可哀想だね渚。ビッチねえさんのせいでクタクタになってるよ。て言うか、
「カルマ...あんたは何に関心してんの?」
「え?奈々緒もしかして妬いてんの?」
「は?」
何言ってんのあんた...少しは渚の心配してあげなよ。可哀想じゃん。
標的の情報を教えるように強要する先生の後ろにはガタイのいい男が三人。
「少しでも私の暗殺を邪魔したら...殺すわよ。」
あ、無理だこの先生嫌い。授業受ける価値もないし本人も授業をするつもりないだろう。本人もああ言ってることだし邪魔しないで寝ていよう。
それから数十分後、諸々あって下唇を噛む生徒に混じり気持ち良さそうに寝る生徒の姿が目撃された。
01
別に気にしてなんかない。