全てを吐露した時には、いつの間にか足のヒレが無くなって、私の足が戻って来ていた。
スカート以外の着ていたものや履いていたものはどこかに行ってしまったのだけれど。
しゃくるようになる喉ももうかなり落ち着いて来た。
空条承太郎だ、と改めて自己紹介をしてくれた彼はそんな私の背中をさする訳でも、諭すわけでも、慰める訳でも無くただただ泣きじゃくる私の隣に居た。
「…お前、これが見えるか。」
唐突にそう呟いたかと思えば、彼の後ろには半透明の像が映し出されていた。
それこそ今流行りのプロジェクトマッピングのようにその場になじんでいる。
「見えるけど…これは一体何?CG…って訳じゃなさそうだけど…。」
そう言うと彼は少し怪訝そうに眉を寄せてから何かを考えるようなそぶりを見せる。
「お前のさっきの下半身、あれは『スタンド』だ。お前、DIOって名前に覚えはねえか。」
スタンド、DIO。全く聞きなじみのしない単語をぽんぽんと出されて困惑するが、とにかく質問は後にしよう。
「DIOっていうのは人?物?どっちにしろ聞き覚えは無いかな。ごめん」
裸足で触る海水は思いのほか冷たくて驚く。寄せて来ては引く波を目でおいながら指先に触れる海水の温度を確かめる。
彼の力になれなかったのはとても残念だが、ここで嘘を吐く訳にもいかないと当たり前の事を強く心に思った。
少し目を離した隙に彼の後ろの映像(?)はいつの間にか霧散していた。アレも彼の言うところのスタンドなのだろうか。
「そうか。なら良いんだ。…名前、お前行くところが無いんだろう。」
「えっうん」
初めて名前を呼ばれた衝撃に頭を打たれたような幻覚さえも感じる。
彼の低い声はえらく私を安心させたから、私の名前を紡ぐだけで心が弛緩するようだ。
すくりと立ち上がった彼は、未だに座っている私に手を伸ばす。立て、という事なのだろう。
その手に引かれた私はふとこの足で地を踏むのは久しぶりだと思い出す。
使う事の無い筋肉は急激に劣化するようで、私は彼の補助が無いと一瞬倒れ込みそうにさえなってしまった。
流石に数歩足を進めれば感覚を思い出し、危なっかしいながらも歩く事が出来た。この調子だとあとほんの少し歩き続ければいつも通りに戻ることだろう。
「ごめんね、長らく海に居たもんで」
えへへ、と笑いかけたら彼は表情は変えなかったけれど私の頭を一度だけ撫でた。
その手は私よりも二周り程大きい。
私たちの歩の先には小さく人影が見える。どういう事なのかは分からないけれど、彼を信用する他無いのだ。
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