03
ユキは一旦無視することにして、再び手嶋くんに向き直る。手嶋くんはというとまだユキの事を気にしているようで、視線がウロウロとさまよっていた。
「手嶋くん、私だけ見て……今だけ」
後頭部へ手を回してキスをする。何度か舌を絡ませると手嶋くんの視線もようやく私を見据えるようになって、手を誘導してやれば挿入したままだった指を優しく折り曲げたり、伸ばしたりして刺激をくれる。手嶋くんも経験があるだけはあって、壊滅的に下手な訳では無く、私の息も段々と浅くなる。
ふ、と顔を上げると、ユキが楽しそうに私達を眺めながら、適当な本を広げていた。あ、それ、私が好きな作家で発売日に買いに行った小説。
「言っといて自分がよそ見しないでよ」
「目敏いなあ」
「ったく。……いれていい?」
「うん。……あ、ゴム……その棚の中。真ん中の」
ベッドサイドの棚を指差す。一番上がアイマスクや化粧落とし、二番目がコンドームやジェル、一番下にはアダルトグッズがいくつか収められている。別に何を見られても構いやしないが、急に一番下を開けると驚かれてしまいそうだ。手嶋くんが緩慢とした動作で二段目を引き出す。
「おあ、お徳用」
「あっ」
普通の人はお徳用のコンドームなんて買わないのだった。
「……いや、いやいや。思うところはまあ、あるけど、色んな人とシてたのは知ってたし……うんうん、知ってた知ってた……」
「いやいやいやごめんごめんごめん!そんなつもりは無かってん!驚かして悪かったって!」
「おもしれ〜」
小説を読み進めながら、ユキは我々の問答を聞いてケラケラと笑っている。手元にスナック菓子があればそれを摘んでいそうなくらい余裕そうだ。なんだ、その立場。その内この関係に慣れた時には私がその位置に立って……いや、座ってやるからな。
「まあ、今、名字ちゃんが俺を見てんならいいよ。何でか黒田も居るけど、名字ちゃんが自分の好きを見つけるためだってんなら、構わない」
「我慢させてる?」
「……いや、なんていうか……こう言うと変態みたいだけど、案外……悪くないよ。誰かの手で良がってる名前ちゃんも可愛い。相手が知らねー男だってんなら我慢ならなかっただろうけど、黒田ならまあ、納得もいくし、黒田も名字ちゃんも本気で互いの感情に興味が無さそうだし。なんか知らねーけど黒田やたらキス上手いし……?」
「あは、うんうん。楽しんでんならええのよ、私は」
うん、と呟いた後、手嶋くんは充分に硬さを持った自身にゴムを装着して短く息を吐いた。大きいね、と幹を擦ると、手嶋くんは息を詰めて、名字ちゃんが可愛いからだよ。と返した。
「来て」
向き合ったまま、胡座をかく手嶋くんの上に乗るようにして濡れそぼる膣口とゴム越しの亀頭を擦る。我ながらどうかと思うが、久し振りのその感覚に足が震え、我慢ならなくなって陰茎を手で支えてゆっくりと挿入した。
「ぁ……あ!は、ん………」
「わ、そん、急に……っ、ぁ!」
器用に腰をくねらせて、自分のいい所に擦り付ける。手嶋くんのペニスが子宮口とくっ付いて、ピリ、と痛みが走る。なんだかそれすらも気持ちよく感じて前後に腰を揺らせば噛み合ったように亀頭がポルチオを突いた。
「はあ、はッ……く、気持ちい……おく、当たるぅ……♡」
「も、はぁ……、エロ」
「嫌い?」
「……好き……」
素直な手嶋くんはまるで嘘もつけない子供のようだ。本当はいくらでも嘘をつけるのだろうし、きっとそれを用いて相手を煽ることだって出来るだろうに、私の問いかけにはいつも素直に返してくれていたように思う。それは手嶋くん流の友人との接し方なのか、私への気持ちによるものか。恐らく前者だろうと私は踏んでいる。
「私が動くから、私のイイとこ、覚えて……っ」
「ほんと、慣れてるな……、っ!うぁ」
手嶋くんに強く抱きついて、緩慢な動作で腰を動かす。少しおしりを持ち上げて、ゆっくり、味わうように下ろす。そのまま最奥に感じる硬さを確かめるように腰を前後に動かして、ポルチオが亀頭に押し上げられる感覚に甘い快楽が背中を突き抜けた。
「ぅ、はぁ……は、う、気持ちい……きもちー……」
「は、……奥、好きなんだ」
「んぅ、うん、好き」
手嶋くんと唇を合わせる。手嶋くんの舌は私の唇を割り、上顎を舐めあげた。ぞく、と痺れが腰へ落ち、それを見透かしたように手嶋くんは私の腰を掴んで突き上げた。
「あ!?ぁ、ちょ、手嶋く……っ」
「奥、突き上げられるのは好きじゃなかった?……っ、上に乗ってたら、やりにくいんだと思ったんだけど」
「や、ん!好き、好きけろ、すぐ、ぅ、イッちゃうから……あ!♡もったいなくてぇ」
「イイならいいじゃん、俺も、は……ちょーいい……」
皮膚同士がぶつかり合う音と、ぐちゅぐちゅという水音が混ざり合う。私も段々と訳が分からなくなっていって、手嶋くんの背に手を回して、情けない声を上げるばかりだった。彼の肩越しにユキを見ると、何か満足気に頷いていた。それに訝しむ余裕もなく、どんどんと快楽が脳をのぼっていく。
「ぁ、あ……く、イク、……てしまく、」
「っ……かわい……いいよ、イッて。俺も、も、キツ……」
「はぁ、あッ……あ!イク、いくい、く……ぅ……♡っ!」
「うわ、や、ば!出……ッ!……っあ、ぅ」
ぎゅう、と背中に回した手に力がこもる。少ししてから手嶋くんも体を震わせ、コンドームへ精を吐き出したようだった。こもっていた力は徐々に抜けて、ベッドへ身を投げ出した。その拍子に繋がっていた部分は抜けて、手嶋くんはゴムを処理している。
ユキの方へと目を向ければ、ようやく出番かとばかりに首を鳴らしながら立ち上がり私達を見据えていた。見ればユキの凶悪な陰茎がその爪を顕にしていて、無意識に喉が鳴った。手嶋くんは平均的で少し太い印象を持ったが、ユキは太さは平均的なものの、長さがあるようだ。
「インターバル無し? 手嶋くん、どう?」
「え、連チャンってこと?いやー、いけなかねーけど……」
ゴムの口を締めてティッシュに包みながら手嶋くんが振り返る。どこに捨てれば良いのか指示を仰いでいるように見えたので、そのままベッドサイドのゴミ箱に捨ててくれとジェスチャーで指示をした。
「俺はどっちに何しても良いんだけど」
「今日は初めやねんからベーシックに行くつもりやと思っててんけど」
「セックスにベーシックもクソもあるかよ。そもそも3Pなんだから」
それもそうか、と私を押し倒すユキに同意をした。ユキは私と手嶋くんのどちらを見て勃起したのだろう。ユキの恋愛対象は女性だと思うけれど、ユキと私は恋愛のラインに立ってはいない。もしかしたら私達どちらかの個ではなく、セックスそれそのものや、状況そのものが良かったのかもしれない。
「手嶋復活したら好きに混ざれよ」
「あ、ああ……うん。混ざらないとスゲー複雑な気分になりそうだし、そうさせてもらうわ……」
「私手嶋くんのキスの仕方好き」
「……なんか目覚めそー…………」
「勝手にしろ」
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