時をかけるように空を飛んだ灯吏と轟はそのまま無事に屋上へ着地し、そのまま(上辺は)何事も無かったかのように教室へと向かった。
やはり教室内は校門前に群がっていた報道陣の話題で持ちきりで、何人かはインタビューまでされたらしい。
興奮気味に語るクラスメイトの視線が扉を開けた灯吏と轟を捕らえた。
「湊川と轟は大丈夫だった?」
オーキッドピンクの肌をした葦戸から声をかけられ、彼らはそちらに視線を移す。
クリクリとした大きな黒い目は何かの期待でキラキラと輝いていた。
一瞬、灯吏は轟と目を合わせ「大丈夫だよったよ」と灯吏が葦戸に向かって軽く手を上げると、彼女は意外そうな表情を見せた。
大方、彼らの容姿をマスコミが放っておくわけがないとでも思ったのだろう。
灯吏の返事と彼女の表情を見つつ、轟は「空飛んであからさまに避けたからな」と心のなかで彼女に告げた。
もちろん葦戸は届いていない。
そこで轟ははたと気がついた。
さっきから灯吏を見ているとなぜだか胸がざわついて仕方がない。
的確な表現が見つからないが、きっとこれを『苛立ち』と呼ぶのだろう。
問題はその苛立ちの矛先は何処なのか。
なにも告げづにいきなり個性を使ったからなのか。
そんな個性の使い方があるのに、戦闘訓練のときはなぜ使わなかったとか。
灯吏と葦戸の会話なんて頭の中に入ってこない。
ぐるぐると思考を巡らせても糸は絡まって大きくなっていくばかり。
「おまたせ、轟くん」
スッと入ってきた声に顔をあげると灯吏がこちらを向いていた。
その瞬間大きく固まった糸の絡まりは水に浸けた綿飴のように一瞬で溶けてしまい、さっきまで苛立っていた事さえも無かったかのように一緒に連れ去った。
「待ってなくても良かったのに」
灯吏はまるでエスコートするかのように轟の腰に軽く手をあてると、自分たちの席がある教室後方へと歩みを進める。
轟もそれをさも当然であるかのように受け入れた。
「(そうだな、待たなくても良かったんだ)」
灯吏のその言葉に自分の行動を見返して疑問を抱く。
が、その答えは当然出るわけがない。
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