碧が練習の用意をしていると次々と部員が集まって、部活開始10分前には全員が体育館に集合していた。

「あ、リッキーおはよう!」
「ぐっ、…おはよう、御輿」

碧は縁下の背中を見つけると一目散にその背中に飛び付いた。
不意の攻撃を受けても律儀に挨拶を返してくれるあたり、彼の人の良さが滲み出ている。

「リッキーのそういうところ好きだよー」

そうして彼の短めの後ろ髪に頬擦りをすると、さすがにくすぐったいのか碧の脇腹を小突いた。

「うぐっ」

いや、小突くなんて可愛いもんじゃなかった。
正確には『ど突かれた』という表現が正しいだろう。

遠くからその様子を見ていた月島と山口はその勢いに少し引いている。
見慣れた2、3年勢は『兄弟のようだ』と微笑ましい視線を二人に送っていた。

ネットも張り、タオルやドリンクの用意も終わっていよいよ試合が始まる。

日向・影山の方には田中が、月島・山口の方には澤村が入ることになり、他のものは見学だ。
碧はスコアボードをめくるために位置についた。

ネットを挟んで対峙する一年同士は決していい雰囲気とは言えない。
月島に至っては相手を挑発するような事をわざと聞こえるように言っている。
第一印象は比較的良かったが、彼はとても性格が歪んでいるらしい。

「(第一印象は信用するなって、誰かが言っていたしな)」

彼のその豹変ぶりに(実際には碧が勝手に彼のイメージを植え付けていたのだが)碧は少し驚いた。

清水が大きく息を吸い込みピーッとホイッスルを響かせる。

「お願いしあーす!!」

それを皮切りにピリリと場の空気が引き締まり、彼らの目付きも鋭くなった。

日向・影山チームには勝って欲しいが、向こうには澤村がいる。
彼の実力をよく知っている田中は最初こそ顔を強ばらせていたが、今はやる気(殺る気)に満ちていた。

きっと先程の月島の挑発が彼に火を付けてしまったのだろう。
彼の導火線は短い。
それは碧も重々承知していた。

ピッ、とホイッスルが鳴り澤村がサーブを放つ。
きれいな放物線を描き、それは相手コートへと入っていった。

サーブレシーブはセッターである影山の元へ返り、彼はそれを目的の人物がいるであろう場所に渡す。

「そオオォらアアァ!!」

馬鹿でかい掛け声と共に、それと比例する程の強烈なスパイクを叩き込む。
それはブロックをしていた月島の手を弾き飛ばし、向こう側のコートへ突き刺さった。

あれだけ強いスパイクを打てたら、きっと気持ちが良いんだろうな。
碧は一点入れただけで上着を脱ぎ騒いでいる田中を見ると、少しだけ彼が羨ましくなった。

「田中、うるさい」

でもさすがに煩かったようで、碧は眉間にシワを寄せながら軽蔑するような目で彼を射ぬく。

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