彼のあの言葉をきっかけに、今まで田中にばかりトスを上げていた影山が日向にもトスを上げるようになった。

普通の山なりのトスだと月島のブロックに引っ掛かってしまうため、トラウマでずっと封印していた速攻を試しに使ってみる作戦にでる。

しかし日向は身体能力以外はほぼ初心者であるため、影山のその速いトスをとらえることができず何度も失敗をしては相手チームに点数を与えた。

手探りで探している感じがなんとも青春らしくて良いのではないか、と碧は少し顔を綻ばせる。

「菅原さん?」

そんな二人をまるで母のように見ていると、今まで碧の隣で試合を見てた菅原が一歩また一歩とコートへ近づき転がっていたボールを拾い上げ、言い争っている彼らに渡した。

「それじゃあ、中学の時と同じだよ」

菅原のその言葉に、投げ掛けられた影山は頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。

「…お前の腕があったらさ、」

菅原もセッターだ。
影山と同じ、一人しかその位置につけないポディションだ。

自分が立っていたその位置に、いきなり天才が現れその場所を奪われるというのはどんな気持ちなのだろうか。

悔しいのだろうか、それとも、安心するのだろうか。

「(きっと両方だ)」

碧は中学の頃は帰宅部だし、今はマネージャーだ。
ましてや大体のことは人並み以上にできてしまうので、そんな状況に立たされる事など今まで経験したことがない。

菅原の気持ちを察することしかできない事に歯がゆさを覚えた。

でも、これだけは分かる。

「(菅原さんは認めることのできる、かっこいい人だ)」

自分の技量、相手の才能を認め影山にアドバイスをするその横顔に、碧は目が離せなくなった。



人は空に憧れる
だからそこに近づくための術を探すんだ。

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