「整列ー!!」

青城と練習試合をやる、と聞かされたとき、正直負けると思っていた。(人員も欠けていて継ぎ接ぎだらけのチームがここまでできるとは思っていなかった)

「はぁぁぁぁぁ〜…」
「どうしたんですか?」

一気に緊張が解けたのか、武田が盛大にため息をつきイスに座り込んだ。

「あ、そうか。先生は3対3見てないから、日向と影山の攻撃見るのは今日が初ですもんね」

スゴいでしょ、と後輩自慢を始める菅原が、碧には母のように見えて思わず口元が緩んだ。

「「お願いしアーす!」」
「先生、講評をお願いします」

一気に自分の元へ走って来た部員たちに戦く武田に、碧が横からコッソリと耳打ちをする。

えっと、と少し考え頭の中を整理すると、一つ一つ彼が試合で感じたことを言葉にしていった。
さすがは国語の先生だけあって、言葉の選び方がすごく上手だ。(まるで一つの短い物語を聞いているようだった)

部員たちも、彼の言葉を真剣に聞いている。(若干二名を除き)

武田が講評を終えると一斉に礼をし、青城の監督の元へと走って行く。
その背中は、以前の試合の時よりも少し大きく見えて、碧少しだけ成長を喜ぶ親の気持ちが分かったような気がした。




「………」
「…………」

彼らの帰り支度を待っている間にトイレへ行っていた碧は今、窮地に立たされている。

碧はこう見えても女性なので、当然ながら女性用のトイレを使用するのだが、残念なことに現在の見た目は完全に男性のソレなのだ。

女子トイレから出たとき、ちょうど男子トイレに入ろうとしていた少年(及川と交代していた子だ)とバッチリ目が合ってしまった。

「え、変質者…?」
「……!?」

人はピンチになると声がでなくなるというのは本当らしい。
弁解しようとも言葉がうまくまとまらず、喉が貼り付き声がでない。

「あれ、御輿」
「…!岩泉さんっ!」

そこにたまたま通りかかった岩泉が、碧には救世主に見えた。
彼は及川の幼馴染みで、及川を通して何度か顔を合わせたことがある。

「岩泉さん、この人と知り合いですか」

『この人』と碧を指差す少年の目は明らかに奇怪なものを見るような目で、それを岩泉にも向けていた。(そりゃ変質者の知り合いだったら誰だって引いてしまう)

「及川の友人だ。それにそいつ、女だからな」
「えっ、」

その言葉に目を丸くさせ碧を見る少年に、岩泉は「ミーティングだ」と伝えると彼の背中を押して歩くよう促す。

碧が「ありがとうございました」と軽く頭を下げると、岩泉は一瞬だけ彼女を見て手を上げそれに応えた。

普段、及川と一緒にいるため彼に隠れてしまっているが、岩泉も実は凄くカッコいい人なのではないか、と碧は小さくなっていくその背中を只々見つめていた。


グローイング
そして成長した彼らは、時期に巣立っていく

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