05

althaea0rosea

「うううぁぁぁうぁあ…………」
「きしょい声出すんやないわ。なまえならもっと可愛くできるやろ」
「いやーん!」
「うるさ」

ぶぶぶぶぶ……と低い振動音が部屋に響いている。その音の主はチリさんの手の中に収まって私の体のいろんなところにぶるぶると刺激を与えてくる。
ちなみに、手は手錠に繋がれたままで、既に全裸にされてるから、画だけで見るとまるでお仕置されてる感じ満載だけど、実際はぜんぜんそんなことなくて。今のチリさんは意地悪なことは何一つ考えてないみたいだ。
「どこやってほしい?」
「肩凝ってるから肩」
「マッサージ器やないんやから」
「マッサージ器だよ、それ」
電マ本来の使い方を知らないの?まあチリさんはあらゆるものをえっちに使うから、その認識でも何もおかしくないな。で、私の言った通りにそれを肩に押し当てられた途端、気持ちよすぎてきしょい声が出てしまったのである。
「うううぁぁぁうぁあ…………ぎもぢーー。そこそこそこ……うわああっ!それー!!!」
「もー雰囲気の欠片もないやないの……せや。コホン。お客さま、お加減はいかがですか?」
急に雰囲気の違う言葉遣いが聞こえてきて、背筋がぶるりと震えた。見ると、清楚なお姉さんみたいな営業スマイルで電マをぐりぐりと肩に押し当ててくる。これ、お仕事モードのチリさんだ……めずらし!
「えっと、すごくきもちいです……」
「それはそれは。では、こちらはいかがでしょう?」
「……っ、うああ……」
電マが肌の上を滑って、胸の近くに移動した。くすぐったいのに何も出来ない。それでもわざと何もしないでじっと耐えた。上半身をねじって抵抗することはできるけど、私の身体はいつだってもっと強い刺激を求めている。
チリさんは私の反応を見ながらわざと敏感なところを避けて、なんでもないところに押し当ててくる。焦らされてるような気がする。おもちゃのパトカーみたいにうーうー唸る私。
「焦らしちゃ、やだ……」
「焦りは禁物ですよ、お客さま。こちらの手順に従って頂かないと」
「うー、はあい……」
完全にキャラに入り込んでいる。こういう時は文句を言うともっと焦らされると決まっているから、大人しく返事をした。しかし、いつまで経っても変なところばかり。
「……うー」
いつもならチリさんの腕を掴んで自分から電マを動かしてしまうんだけど、今はそれができないからじっと待っているしかない。胸からお腹へ、お腹から太もも、ふくらはぎへ。しかも、電マと一緒にもう片方の手ですごいもみもみしてくれる。肩凝ったって言ったのは私だけど、マッサージが目的に置き換わったんじゃないかと思うほど全身が良い感じにほぐされていく。気持ちいけど、なんだか、なんだか。
「チリさん、もういいよ……」
「そうですねぇ、どこかほぐし足りないところはございますか?」
「言わせないでよ〜……」
「ちゃんと教えて下さらないと、分かり兼ねます、お客さま。さあ、お次はどこをほぐしましょうか?」
そう尋ねてきながら一度電マのスイッチをオフにした。ふくらはぎを揉んでいた手がすすすすと肌の上を移動してきて、さっきイかされた時のよりもさらにとろとろになったあそこをわざとらしく撫で始める。粘液をすくってぐちゅぐちゅ音を立てて……もうわかってるじゃん。
でも、わざと刺激にならないような際どいところしか触ってくれないから、やっぱり口で言ってほしいみたい。もうしょうがないなぁ。
「…………………………チリさん」
「はい」
「…………………………クリさわって」
「ええ、かしこまりました」
チリさんは私のおねがいに営業スマイルのまま頷くと、言った通りに指を動かす。ぬちぬち。どう触れば私が良くなるのかなんて分かりきっているから、すぐに頭がふわふわしてくる。
「……ぅ、う……」
「気持ちいですか?」
「……うん……、きもちい……」
「それはよかった」
いつまでその顔なんだろ……美人でテクニシャンで、(今は)こんなに優しくて。こんなマッサージ屋さんがあったら毎日大盛況だよ。と、思いながら脱力してきもちいいのを感じていたら、チリさんは電マのスイッチを再びオンにした。うるさっ。チリさんは好きな子のことはいじめたくなるタイプだけど、基本私に甘いもんねぇ、わがままになっちゃおー。
「いや。それ、もうやだ。音うるさいもん」
「何かご要望が?」
「……口でして」
「はい、はい。分かりました」
二度目のおねがいに、今度は若干眉をあげて嘲るように笑ってる。なにその顔。でもやっぱり言う通りにしてくれるから、今のチリさんはすき。(いじわるなチリさんもすきだけど。)
出番の終わった電マをぽいっと放り投げて、足の間に入ってくる。顔を近づけ、すんすん匂いを嗅ぐようにしてからそこに舌を這わせた。
「……んん、……っ」
きもちい。チリさんのそれ、すき。ざらざらしてる舌でぐりぐりされるの、すき。あたたかい吐息が当たると背筋が震えて、こっちの方こそ息が漏れる。そのまましばらくたべられた。
でも、でも……やっぱり物足りない。こないだみたいにもっと強くていいのに、チリさんってばえっちの度に人が変わるよね。チリさんの頭を太ももではさみこんで、尋ねた。
「ねぇ、……いつまで、それ……?」
「チリちゃん、このまま一時間はいけるわ」
「ええ……」
なんか急にお仕事モード終わっちゃった……。ていうか一時間って長すぎ。しかもずっと刺激が少ないように舐めてるから、イきそうなのにイけない感じを続かせようって魂胆が丸見えだ。チリさんのいじわる……すき。
そのまま耐えること数分間。本気で一時間やるつもりなのかな……でもチリさんならやりかねない。前にバイブを突っ込まれたまま「一時間我慢しや」と言われて本当に一時間放置されたことがあるから、一時間はチリさんにとって大袈裟な時間ではないのだ。素知らぬ顔して入口のところにずぽずぽ舌を出し入れするチリさんの体を、弱い力でげしげし蹴った。
「ぁ、や……もう、だ、だめぇ……」
「は?何がや。だめやないやろ?」
「う、うん……」
だめだけど、本当はだめじゃない。でも、もっと先に行ってほしいの。
「いい子のなまえ。ほれ、人にお願いする時、なんて言うんや」
「も、もう、いきたいの……、チリさんだいすき……おねがい……」
すると、チリさんは一旦顔を離して、のしのし四つん這いで這い上がってくる。私の三度目のおねがいににこりと笑って、顔の横にちゅう、と口付けていい子いい子と撫でてくれた。

「ええ、承知しました」

それずるい……。


「そいや、新しい子買ったんよ。使てもええ?ええよー。よっしゃあ、なまえならそう言うと思っとったわ」
「なにそれ……きもちわる……」
もうさっきのお仕事モードはなかったのことのように、いつも通りになってしまった。残念。
指の次は口で、私が幸せな気持ちになっている間にチリさんは新しいおもちゃをどこかから持ち出してきた。たぶんバイブだ。もともときもちわるい見た目なのに、チリさんが空中でスイッチを入れた途端にぶいぶい言わせながら信じられない動きをし始めた。きも!
「きもちわるい!や、やだぁ、近づけないで」
「なはは」
面白がってる、この人。
「これ、なまえのなかに入ったら、どうなるやろな?」
「ううう、ぜったいきもちいよぉ……」
「せやろなぁ。実際良かったわ」
「使用済み……!?」
チリさんが一人でえっちしてるとこ、見たかったなぁ。いつも見せてくれない……いつやってるんだろう。

「はい、挿れるで〜」
ぬりぬり、丁寧にローションを塗りたくってから、さっそくそれを私のなかに押し込んでくるチリさん。一度チリさんのなかに入ったものだと思うと緊張する。
それより、さっきいっぱい焦らされたのがなんだったのかと思うほどぐいぐい挿れ込んでしまうから、その様子が気になって上半身を少し浮かせた。……そろそろこの繋がれた体勢も辛くなってきたな。
「チリさん、この手錠いつ外してくれるの?」
「何言っとん、もうずっとそのまんまやで」
「ええ〜!そんなのやだ!もうこの格好疲れちゃった!せめて、ベッドのやつだけでも外してよ!」
「なんのための拘束やねん。なんもできひんなまえを可愛がる時間なの!今は!」
なの!じゃない!自由な足をバタバタさせて抗議する私。そしたらチリさんはそれぞれの足を両脇に抱えてしまった。動けない。唇を尖らせてじっと目を見つめる。少し、目をうるうるさせながら。
「……チリさんはいいの?これで」
「なにがや」
「私はやだ……。だって、これだとチリさんのこと抱きしめられないもん……」
「……」
ぱちくりと瞬きをするチリさん。
「今すぐ外したるから待っててな」
ちょろすぎ〜〜。ちょろすぎて可愛いチリさんは、私のなかにモノを残したまま膝立ちでベッドを移動する。それからベッドサイドの上に手を伸ばして……しばらくして、何かに気づいたように首を傾げるから、私も同じように首を傾げた。なにしてるんだろ、チリさん。
「なあ、鍵どこやった?見当たらんのやけど」

嘘でしょ?


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