二年生一学期末のテストは、去年より一つだけ順位が上がった。去年はどんなに頑張っても八位をキープするのがやっとだっただけに、今回七位に上がれたのはとても嬉しい。

でも、これで慢心してはいけない。上に行けば行くほど順位争いが激しくて、気を抜いたらすぐに落ちてしまう。私の上にはあと六人の成績優秀者がいて、その内三人は本多くん、風真くん、美奈子ちゃんだ。しかも僅か一点差。あのメンバーを追い越すのは相当苦労するだろう。
ひとまず次は七位のラインをキープしつつ上を目指すのが目標だ。


(それにしても、なんで廊下に順位表を貼り出すんだろう?)


はば学は下位だからと馬鹿にする人がいないのが救いだけれど、個人の点数なんてあまり他者に見せびらかしたいものではない。と、私一人が文句を言ったところで聞き入れられる意見ではないから、黙って受け入れている。

個人的には「見られるのが恥ずかしいなら、恥ずかしくない順位に上がれ」という無言の圧力だと捉えているのだが、どうだろう?
私と同じ考えの人っているんだろうか?


(まぁ、三年までの辛抱だから良いけれど)


順位表の前は先ほどまで確認する生徒たちでごった返していたけれど、今はだんだんと疎らになってきている。もう一度自分の順位を見て満足し、私も自分の教室に戻った。


* * *


「あ、野良猫ちゃん!」

「ん?」

「野良猫ちゃんに教えてもらったとこ、ちゃんと正解したよ! ありがとね!」

「うん。どういたしまして」


席に座った直後に駆け寄ってきた山本さんに、テスト勉強を見てあげたことへのお礼を言われた。クラス委員の彼女はどちらかといえば頭は良い方なのだが、私と同じく好みによって偏りが出てしまうタイプだった。文系は余裕で満点を取れるのに理数系は苦手らしく、同じことを何度も聞かれた。でも、根気よく問題を解いていった成果はちゃんとテストにも現れたようだ。


「はい。これ、お礼。あとで食べてね!」

「えっ? あ、ありがと」


可愛くラッピングされたクッキーを机に置いて、山本さんは去っていく。

少し教えたくらいでこんなお礼されて良いのだろうか?
七ツ森くんもそうだったけれど、別に食べ物でお礼しなくても良いのに。


(……もしや餌付け? 更なる見返りが必要? そんなことないよね?)


お礼だと言うのだから素直に貰っておこう。また何かお手伝いできることがあったら協力すれば良いし。

山本さんがくれたラッピングの中には、猫や魚の形のクッキーが五枚ほど入っていた。“野良猫ちゃん”だから猫にしてくれたのだろうか。可愛くて食べるのに躊躇してしまう。家に帰ってたくさん眺めてから味わって食べよう。


「よ。順位上がってたじゃん、雛田」


クッキーを鞄に仕舞ったところで、七ツ森くんが帰ってきた。順位表は何ヵ所かに貼り出されているから、私とは違う場所を見に行ったのだろう。随分と長いこと眺めていたらしい。


「あれ? 七ツ森くんって去年の私の順位知ってたの?」

「ダーホンから聞いた。雛田は三学期とも八位で凄かったってさ」

「……三学期とも一位の本多くんの方が凄いと思うけど」

「俺にはどっちもレベル違いデス」

(そんなことないのに……)


七ツ森くんだって毎日同じように勉強していたし、何なら放課後ずっと遊んでいた男子たちよりかなり頑張っていたと思う。
たまに一緒に帰れない時は、バイトか何かで忙しかったらしい。そういう日は勉強できなかったそうだが、私と勉強していた日は苦手な科目だって嫌だと言いながらも理解できるまで復習していた。もっと自分自身を誉めて良いと思う。


「でもさ、雛田たちには敵わないけど俺も今回は上がった。あんたのお陰」

「それを言うなら、私も七ツ森くんに教えてたお陰で覚えてるもの多くて七位に上がったし、お互い様。七ツ森くん様々だね。ラッキーセブン」

「ははっ、言われてみたら確かに」

「今年度は七位キープ以上で頑張る」

「おお、応援してる。俺も落ちないように頑張ろ」


頑張ると言う七ツ森くんだが、コソッと声を潜めて「またノート見して?」と聞いてくる。どうやら私の勉強法はお気に召してくれたらしい。
「見せるのは構わないけれど、まず自分で勉強してからね」と言っておいた。期待され過ぎても困るので。


「でもま、二学期末より先に夏休みやら修学旅行やらで盛り沢山のイベント消化が先でしょ」

「そうでした」





そうだった。忘れちゃいけない夏休み。

八月末のフリーマーケットで着ていく服について、予め美奈子ちゃんにメッセージで相談したのだ。フリマでお手伝いすることも伝えると、みちるちゃんとひかるちゃんにも一緒に見て貰った方が良いと言われた。美奈子ちゃんもあの二人によく相談に乗ってもらうらしい。

女子四人のグループに同じ相談を送ると、すぐに興奮したひかるちゃんからメッセージが届いた。


「リリィ、何か売るの!?」

「いや、私はお手伝いだけ。出店するのは、私が内職させてもらってるお店の人」

「内職? 何やってるの?」

「アクセサリー作りを、ちょっと……」

「アクセサリー!? 見たい見たい!」

「ヒカル、落ち着いて。話が逸れてる」


というやりとりの末、来週の放課後に公園通りを散策することになったのだ。とりあえずはフリマ用の服を選んで色々アドバイスを貰えたら、後日自分でも他の服を物色しに行こうと思う。





「雛田は夏休みどこか行ったりすんの?」

「あんまり家から出たくない。溶ける」

「ククッ、雛田ならまじで溶けそう」


フリマのことは敢えて黙っておいた。七ツ森くんに秘密にしたいわけではないけれど、学校だとどこで誰に聞かれるかわからないし、知り合いにはあまり見られたくはない。万が一、中学が一緒だった人に見られようものなら一生家から出られなくなる気がする。


(思い出すな、あっちいけ。しっしっ)


頭の中に浮かんだ顔と名前をホウキとはたきで一掃するイメージで排除した。記憶も消しゴムで消せたら良いのに。無理なこととはわかっているけれど、こういうタラレバを考えるのはやめられない。


「七ツ森くんは夏休み出掛けるの?」

「俺も自分からはそんなに出掛けないかも。誘われたら行くし、仕事……バイトあるから出掛けざるを得ないけど」

「そっか」

「ま、ヒマな時は連絡ちょーだい。俺もメッセージ送るし。あ、電話でも良いけど?」

「メッセージおんりーで」

「ふはっ、即答ウケる。りょーかい」


クツクツ笑っている七ツ森くんには失礼だけれど、この低温ボイスを耳元で聞いたら頭おかしくなるよ、絶対。

悪口ではなく、何というか彼の声って頭にじんわり染み渡っていくような……、落ち着くのに心音が速まっていくのだ。上手い表現が見つからないけれど、甘いケーキにほろ苦いブランデーシロップが染みていくみたいな感じ?
……誰も理解できなさそう。


「でも、七ツ森くんがメッセージくれるの嬉しい」

「ほんと?」

「ん。それに何もなく九月になったら、七ツ森くんにも人見知り再発して話せなくなるかも」

「うわ、それは困る。週三でメッセ送るわ」

「ふふ、了解」


去年の夏休みは誰かと連絡をとることもなく、ずっと家の中で過ごしていた。二学期になって無口に戻った私に、本多くんが不思議そうにしていた顔は今でも覚えている。


(今年はそうならずに済むと良いな)


現状、去年と違う予定は弟と妹が泊まりに来ることと、一緒に花火大会に行くこと、そしてフリマだ。
本当は去年もきょうだいで過ごす予定だったけれど、初の一人暮らしで私の身体が追い付かず体調を崩してしまったのだ。今年は気を付けているし、去年の分も楽しく過ごしたい。


「楽しみだね、夏休み」

「だな。くれぐれも俺との喋り方忘れないように」

「ガンバリマス……」

「ははっ、カタコト〜」


[newpage]


翌週の放課後。校門前で待ち合わせしていた美奈子ちゃんたちと合流し、早速公園通りに向かう。

道中はひかるちゃんから私が作っているアクセサリーについての質問攻めで、答えるのがちょっと大変だった。でも、私の辿々しい説明にもしっかり頷き返してくれるのが嬉しい。女の子友達と下校する感覚も凄く懐かしく感じて、一人では味わえない幸福感で胸がいっぱいだ。

小中学生の頃に戻りたいとは思わないし、今の方がずっと楽しい。せっかくできたこの繋がりを、今度こそ一生かけて守りたいと思った。


「ついたよ!」


公園通りの一角にあるガールズショップ。前に私がショーウィンドウに飾られた服を眺めていたお店だ。あの時はエコバッグ片手にダサい私服で入れなかったけれど、今なら制服だから問題ない。

当然のように入っていく三人に続いて、私も店内へと足を踏み入れた。

並べられている服はフリルやリボンたっぷりの可愛い服が多めで、奥にはもう少しシンプルで大人っぽいものも取り揃えられている。


「ゆずちゃんにはどんな服が似合うかな?」

「そうだなぁ。ひかるはシックなのが似合いそうだと思うけど。リリィは何系が好き?」

「な、何系とは?」

「例えば、キュート系が良いとか、ナチュラル系が良いとか」


ひかるちゃんと美奈子ちゃんが何を話しているのかちんぷんかんぷんだ。キュートとナチュラルって違うの?

助けを求めてみちるちゃんを見ると、服の属性を見極めてコーディネートしていくのが大事なのだと教えてくれた。属性と聞いても私にはいまいちよくわからない。


「なんか、難しそう……」

「物凄く大雑把に言えば、スポーツ選手が着るようなランニングシャツで、お人形みたいにフリルたっぷりのロングスカートを着たら、見た目的にも相性が悪いでしょう?」

「あ、なるほど。わかった」

「ふふっ、凄い大雑把な例え」


そうか。そういう上下の組み合わせも大事なのか。
だとすると、私が好きな属性はどれになるのだろう?

おおまかに分けると、キュート、ビビッド、セクシー、アクティブ、ナチュラル、シックの六属性あるらしい。セクシーは露出度高めで、アクティブはスポーツで着るような服だろうとわかる。シックも恐らく清楚で大人な感じなのかなと想像できる。
でも、他の三つは何が何だかサッパリだ。


(キュートは可愛いやつだろうけど、ナチュラルとは違うの? いや、ナチュラルとシックも何か近いものに感じるけど……。ビビッドって何ぞ?)

「あはっ、リリィ混乱してるね」

「うーん……」

「ゆずちゃん、普段はどんなの着てるの?」

「……私、外出って言っても最近はスーパーくらいしか行ってなくて、普段着は地味なのしか買ったことないの。遊び歩くことも無かったから、自分に似合うものとかわからなくて……」

「そっか」


──服と中身が釣り合ってないの、わかんないのかな?


陰口を自覚して間もない頃に言われた言葉が、頭の中で勝手に再生される。言われた時は大きなお世話だと思ったけれど、言葉のナイフというものは刺さればズブズブと深くまで沈んでいって、なかなか抜けないものだ。その傷跡はもう一生癒えることはなく、きっかけさえあれば再びジクジクと痛んでくる。

あの一言があってから、私は自分で服を選ぶのが嫌になってしまった。
……なんて、“服を選ばない”という選択をして今まで放置していたのは私なのだから、結局誰のせいでもなく私の自業自得なのだけれど。


「じゃあさ、リリィが「コレ!」って思う服を選んでみて? それに似合う組み合わせがあったら、ひかるたちがアドバイスするから!」

「そうね。まずはリリィの好みを知りましょう」

「賛成!」

「う、うん……」


言われた通りに、とりあえず一人で店内を物色してみる。フリルがありすぎるのも可愛い過ぎて手を出しづらい。

ちらっと三人を見るとそれぞれ気になる服があるようで、身体に当てて鏡を見たり、試着したり、値札を見て戻したりと自由にしていた。


(退屈はしてなさそう?)


優柔不断な私が悩んでいる間に退屈させていたら申し訳ないと思っていたから、この方が有難い。三者三様に見極めている服は、どれも彼女たちに似合うものばかりだ。楽しそうに服を選んでいる様子が少し羨ましい。
いつかは私もあんな風になれるだろうか?

さて、三人のことよりも自分の服を選ばなければ帰れない。時間は有限。無駄遣いは禁物だ。

今度はもっと奥にあるシンプルなものを着たマネキンを眺め、その近くのハンガーラックを漁ってみた。


(ノースリーブだと二の腕出すの恥ずかしいし……。でもあんまりシンプル過ぎるのも地味かな……。…………あ)


目に留まったその服をラックから引き抜いてみる。

全体が紫色でチェック柄のチュニックだ。袖がリボンでキュッと結んである。可愛さもありつつ、ちょっと大人っぽさもあって良いかもしれない。
でも私にはちょっと色が濃いかな?


「ふーん、なるほどね」

「へっ? み、みちるちゃ……」


いつの間にか隣のハンガーラックにいたみちるちゃんが、私の持つ服を見て吟味するように目を細める。音もなく近くに立たれて、驚きでドッドッと心臓が跳ねた。


「リリィはそういう服が好き?」

「え? う、ん……そうなのかな。なんか良いなぁって思った」

「ふふ、そう。私もソレはリリィに似合うと思う」

「私じゃこの色、濃すぎない?」

「全然! リリィの肌色にピッタリ!」


みちるちゃんが言うなら大丈夫なのかな。不安になって彼女の顔を窺い見ると、にこりと優しく微笑んでくれた。


(……うん、大丈夫。信じられる)


自分のセンスは全くもって信じられないけれど、みちるちゃんたちの目は信じて良いはずだ。今日は私からお願いしたのだから、みんなのセンスを信じよう。


「ねぇねぇ、リリィ。フリマに行くならコンタクトにはしないの?」


試着室から出てきたひかるちゃんが、服をカゴに入れながら言う。どうやらお買い上げらしい。


「うーん、どうしよう? コンタクトはあるにはあるけど、最近ずっとメガネだったから……」

「リリィは学校でもずっとメガネかけてるわよね」

「コンタクトだと勉強してる時に目が疲れるから、なるべくメガネが良いなって」


実家にいた頃は、外出する時にだけたまにコンタクトをつけていた。家族で出掛けなきゃいけない日限定だったけれど。でもドライアイで目薬は必須だし、だんだん瞼が重くなって眠気も出てくるしで長時間付けるのはあまり好きではない。

でも、新しい服によってはメガネは無い方が良いのだろうか?


「ね! ゆずちゃんが良かったら、今ちょっと眼鏡外してみてもらえないかな?」

「え? うん、良いけど」

「ついでにその髪ゴムも外してみてくれる?」

「ん、わかった」


美奈子ちゃんに言われてメガネを取り、髪ゴムもスルリと外して手首に付ける。
視力はかなり悪いため、裸眼ではみんなの顔もわからない。辛うじて髪の色でどこに誰がいるのかがわかる程度だ。
ずっと伸ばしっぱなしだった髪は、背中の真ん中より長くなってきている。そろそろバッサリ切るべきだろうか。猫の尻尾みたいだと言われるのは嫌いじゃないけれど。

景色がぼんやりしていてどこを見ていたら良いのかわからないから、とりあえず美奈子ちゃんのいる方を見る。


(……誰からも反応が無い)


他のお客さんと店員さんの声や店内BGMが聞こえてくるだけ。さすがに何か言ってくれないとどうしたら良いのかわからない。


(何も言えないほど不細工ってことかな。コメントに困る顔をしてるんだろうな私は)


そりゃそうだ。だって超絶美人な双子の姉妹と文武両道才色兼備な美少女に比べたら、私なんて泥つきの野菜以下。
いや、御影先生だって地面に植わった野菜もべっぴんさんだって言うんだもの。野菜にも失礼だ。私は成長するのをすっかり忘れてそのまま土の中で腐った種より格下なんだろう。メガネ外すんじゃなかったかも。


「あの……、もうメガネかけても良いかな?」

「リリィ!!」

「ふぁっ!? はいっ」


居たたまれなくなってメガネをかけ直そうとすると、ハンガーラックを挟んだ向かい側に明るいピンク色が近付いてきた。ぼやけて見えないけれどこの声はひかるちゃんだ。


「メガネかけない方が良いよ! フリマの時は絶対コンタクトにすること!!」

「ぇあ、で、でも……」

「メガネじゃなきゃいけない理由でもあるの?」


今度は隣からみちるちゃんに問われる。声色からして疑問を抱いてるだけで、責め立てているわけではないようだ。


「視力悪いからかけてるだけだけど……」

「じゃあフリマは絶対にコンタクトね! ひかるとの約束!」

「は、はい……」


絶対の約束と言われてしまった。良いけどちょっと恥ずかしい。


(自分の顔、あんまり好きじゃないけど……)


この顔は、母さんの嫌いな顔だから。
母さんの大嫌いな人と同じ顔だから。

私はその人じゃないけれど、でも私を見る母さんの目は、私を映していながらその人の面影を見つめていた。
私はその人を知らない。だけど、家にいると私だけ顔が違うし、母さんが「似ている」と言うのだからそうなのだろう。


(似てるとか似てないとか関係ない。私は私なんだから)


ドライアイなのは事実だけど、そこまで不便なわけではない。本当はメガネじゃなくコンタクトでも良い。でも周りから見られる目はやっぱり怖くて、数年間ガードのつもりでメガネをかけていた。
もう一人暮らしなんだから気にしなくて良いのに、本当に臆病者だ。


「ふふっ。ゆずちゃんはメガネ無い方が可愛いね」

「えっ? そ、んなこと、無いと思う。初めて言われた」

「なんでこんな大きいメガネかけてるの? 分厚さは視力のせいにしても、リリィの顔には大きすぎるでしょ?」

「だって大きい方が視界の端まで見えるから良いなぁって。これ安かったし」

「実用性重視で選んだんだね」

「もう! リリィはまだまだ新芽ちゃんだね。ひかるたちがとことんオシャレを教えてあげるから、覚悟してね!」

「お、お手柔らかにお願いします」

「そうと決まれば、次はリリィのボトムスを選びましょう」

「おー!」


ウキウキルンルンと鼻唄を歌いながら服選びへと戻っていく三人。取り残された私もメガネをかけ直して、三人に倣ってボトムスのコーナーへ向かう。先ほどと違うのは、全員選んでいるのは私の服だということ。


(私のため……)


今日付き合ってくれたことも、こうして服を選んでくれていることも、全部私のため。少しでも面倒だと思っていたら、とっくにお開きになっていただろう。今更だけれど、こんなに長時間一緒にいてくれる女の子友達が本当に嬉しくて、ほんの少しだけど口角が上がる感じがした。


「……ありがとう」

「……! どういたしまして!」

「リリィ! コレ着てみて!」

「その次はコレね」

「ふふっ。あ、わたしもコレ着てほしいな」

「ん、着てくる。へへっ、楽しい」

「良かった。わたしたちも楽しいよ」


アレもコレもと何度も試着して、やっと決まったフリマ用の服。フリマのためだけに三人の女の子にコーディネートされるなんて凄く贅沢者だ。


「また一緒にショッピングしようね!」

「うん。今日はありがとう」


因みに、帰る間際。みちるちゃんとひかるちゃんからコラムを見るように言われ、そこで初めて私は彼女たちが現役のモデルであることを知るのだった。

とんでもなく贅沢なことをしてたのね、私。
今度ちゃんと美奈子ちゃん含めて三人にお礼します。