ガチャリ、乱暴な音を立てて開かれた扉からは苛立った様子の見慣れたひとが現れた。ルルーシュ・ランペルージ、わたしの幼なじみはこの数ヶ月で今までわたしの横にいた彼とは別人になってしまったように思う。すべては彼の最愛のあの子のために。

「なまえ」

少し前までは慈愛のこもった温かさを持っていたはずの彼の紡ぐ名前はひどく冷たい音をしていて、思わず喉がひゅ、と空気を漏らす。
それに気づいているのかいないのか、傍に来たルルーシュはわたしの顎を掬うと、彼の湛える紫で私を射抜く。この瞳に見つめられると決まってわたしは何も出来なくなってしまうのだ。彼の視線は毒のようにわたしの動きをゆるやかに殺していく。

『ルルーシュ、』

なんとか喉の奥から絞り出した言葉はルルーシュのくちびるによって奪われてしまい行き場を失う。秘め事のはじまりを感じさせるような水音が脳髄に響き、ひどく恥ずかしい気分にさせられた。わたしをゆっくりとソファに押し倒し、ぷつぷつとブラウスの留め具を外すルルーシュの表情は長い前髪の影になって見えない。開かれた胸元にいとおしむ様にくちづけを落とされるのが何よりも嫌だった。

『ルル、やだ、やめて』

いつしか呼ばなくなった愛称で彼を呼んで必死に抵抗しても彼とわたしがすっかり男と女に変わり果ててしまったことを知らされるだけで、余計にむなしくなるだけだ。

「すまない、どうか許してくれ……」

たわごとのように謝罪を繰り返しながらきつくきつく抱きすくめられる。ねぇ、誰に謝ってるの?今あなたの瞳には誰が映っているの?

変わり果ててしまった何もかもがゆっくりと彼の心を壊していく。わたしだけは変わらないでずっとそばに居ると誓ったのは数ヶ月前のこと。ここにいるのはもうわたしの知るルルーシュ・ランペルージではない。それでも、それでも。

覆い被さる彼の背にそっと腕を回すと頬に雫が滴った。

『ルルーシュ、わたしはずっとあなたのそばに居るから』

地獄の果てまでも、離さないでいてね。


こんな言葉、呪い以外のなにものでもない。







あまい