▼ First impression. side-boy

彼女は高校の入学式のときから、その見た目の良さ故に人目を惹いていた。
高校生には見えないほどのスタイル、ほどよい色味の茶髪、グレーの瞳。
噂ではハーフらしく英語も堪能らしい。

帰国子女に加えて成績も優秀で、運動神経も良く、見た目も美人という恐ろしいほどのハイスペック。
どこか危うげな儚さも、恐らくは人の目を引く理由になっているんだろう。

けれど彼女は…。
男女問わず、誰とも友人として関わりを持とうとはしなかった。

話し掛けてもすぐに強制終了とされてしまうらしい会話は繋げるに繋げられず、高校2年生となった今でも誰かと親しげに話しをしたり移動をしたりする彼女を見たことは一度もない。
彼女はいつも、ひとりぼっちだった。



「おい見ろよ降谷。今日も如月さんは綺麗だよなぁ。」

「…おまえ、好きだな。」

「好きって言うか、あそこまでいくと鑑賞物として見える。いやー、あれこそまさに"高嶺の花"ってヤツかね?」



友人に突かれて見た先には、ひとり教室でもの静かにお弁当を食べている彼女…如月まいかの姿が。
隣で「いやー本当美人だよ。如月さんのハートを掴む奴が羨ましい」なんて言っている友人は、この際無視だ。

如月さんはいつも無表情で、笑ったところなんて見た人は誰も居ない。
何をするにしても淡々としているし、所属している弓道部でも彼女が優勝したところで喜ぶ姿は見受けられないのだと、風の噂で耳に挟んだ。

はっきり言って俺は彼女に興味がある。
異性として好意の興味ではなく、たぶん人間としての…生き物としての興味。

普段人の前で笑うことのない彼女が笑うと、どんな表情をするのだろうか。
普段表情を変えない彼女は、いったいどんな出来事で表情を変えるのか。
それに対しての、興味が湧いた。

けれど俺と如月さんは2年になった今のクラスも違うし、1年の頃だって同じクラスになったことは一度たりともない。
接点もなく彼女に関わるにはどうするべきなのか、と考えて夏・秋・冬が過ぎ。
いつの間にか、俺たちはもう、高校3年生になっていた。



「あ…。」



今年で高校生活も終わるのか、と思いながらクラスを確認するためにクラス表を見たとき、思わず目を丸くした。
同じクラスの一覧には、確かに"如月まいか"と名前があり、どうやら俺は、高校生活最後でやっと彼女と小さな関わりが持てるらしい。

名前順で座るから、席はわりと遠いが。
それでもこの1年、彼女と関われるのであればなんでも良いとさえ思った。


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