▼ First impression. side-girl

中学までアメリカで過ごしていた私は、高校入学と同時に父の故郷でもある日本へとやってきた。
どうも父が日本で仕事をしなければならないらしく、それで私たち家族は日本へとやって来たのだ。
日本には何年かぶりに来たが、やはり住み慣れたアメリカとはすこし違って、どこか落ち着かない。

そう思っていた矢先。
高校入学のとき、私はある人に目を奪われてしまった。
と言っても異性に抱く気持ちでの意味なんかではなく…失礼だとは解っていたのだが、こんな子が高校生なのか、という意味で目を奪われたのだ。

その人は顔立ちが他よりもすこし幼く、ぱっと見では中学生くらいにしか到底思えはしないような人で。
彼は女の子から人気があるのか周りの女の子たちが毎日騒いでいるようだった。

確かに、顔の作りは悪くはない。
けれどアメリカの男性を見過ぎだからなのかは解らないけれど、私から見たら彼はまだ外で遊びまわっている子どものようにしか思えなくて。
少々顔立ちの良い男の子、という、そんな抽象的な印象を受けて久しぶりの日本で過ごす高校1年生が終わる。

高校2年生になりひとりで歩いていると例の彼がよく視界に入るようになった。
2年生にもなれば目立つ場も増えるし、彼は"そういった人間"らしく、その目立つ場に立ってさらに学校中の人の目を一斉にかき集めていた。

彼の名は、"降谷零"と言うらしい。
名前を訊いて思ったのが女子生徒が騒いでいたのはやはり彼なのだということ。
名も知らずに1年を過ごしたのは、恐らくは私が人と関わることを拒んだから。

私は、深い浅いは関係なく多くの人と関わりを持つことを苦手としていた。
アメリカ時代の友人でさえ数少なく、人と接することが少ない私には高校で上手く立ち回ることなんて出来ないままに、結果いつもひとりで毎日を過ごすことになってしまったんだ。

けれど別段、それが嫌だとは思わない。
ひとりならひとりでも別に構わないと思うし、結局は自分が招いたことなのだ。
こればっかりは、現実を受け入れなければ…どうにもならない。

だけど…彼、降谷零には興味がある。
周りに人は絶えることはないが、どこか冷めた目をするときもあるし、なんとなく彼は何かを隠しているようにも思えるときがあるから、だ。

彼が何かに熱中することはあるのか。
はたまた彼が誰かに依存してしまうようなことはあるのかと、すこしだけではあったが気にはなる。
しかし私は彼とクラスは別で、関わりを持つことだって難しい立場にいるのだ。
興味があるから知りたいと思っても、関わりが無ければそれは到底無理な話し。

けれど私は高校3年生の春。
彼と関わりを持つこととなった。



「はじめまして、如月さん。」



彼と、同じクラスになったのだ。


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