好きだと言われた時は耳を疑った。目の前の苗字は日誌を書きながらサラリと今日の晩ご飯何かなみたいなノリでオレのことを好きだと言った。そう、だから、しくじったのだ。いかにも的なシチュエーションだったら、こうやって答えようとか事前に用意できたのに。いや、もし言われたら何て言おうなんて前から決まっていた。でも、こんな簡単に言われれば告白された側なのに妙に焦ってしまい、あんなことを言ってしまった。
「バレーに専念したいから、悪ぃ」
「うん、分かってた。気持ちを伝えたかっただけだから。春高行けるといいね、応援してる。頑張って」
分かってたとはどういうことなのだろうか。振られると分かって告白をするなんて自分には到底出来ない。
「黒尾くんさ」
もうすでに立ち去ったと思っていた相手はまだそこにいて、言いにくそうな顔をしていたが意を決してという感じで話し始めた。
「いつもその返事だよね?」
「?」
「『バレーに専念したい』ってやつ。まぁ、それも本当なんだろうけど…私の顔と名前も一致してなかったでしょ」
ギクリとした。だってそうだろ、1度も同じクラスになってなくて呼び出されて初めて名前を言われて、あぁこの子がその名前の子なのかって認識したと思ったら好きですって言われれば、そんな返答が一番傷付かないだろ。
「黒尾くんのソレ有名だから。私だったらそういう風に見られないとか、私のこと知らなかったとか、本当のこと言って振って欲しい。そうしたら諦めがつくから」
「………」
「いや、うん、最初から振られるって分かってる時点で諦めてるのかもしれないけど…でも淡い期待を抱く人もいるかもよ。本気で告白してるんだから、傷付くかもしれない返事でも納得できるし」
何も返せない。そりゃあそうだろう、振る時点で傷付けんのに、曖昧な返事なんて意味ないのかもしれない。でも、傷は浅い方がいいんじゃないかって自分の中で思って傷付かなさそうな言葉を選んでいたつもりだった。
「でも、黒尾くんはアレだね。好きな人がいる、でいいんじゃない?」
「は?」
「ふふ、間抜けな顔〜。じゃあね」
すげぇ爆弾投下して今しがたオレを好きだと言った相手は颯爽と立ち去って行った。
「やっくん、オレって分かり易い?」
「何が?」
「何って…」
そう言って同じ教室にいる苗字に目をやれば、やっくんもそれを辿って苗字に行き着いた。
「あぁ…」
その一言でやっぱりとそうかと顔を覆った。自分ではひた隠しにしているつもりだったのに。
「まぁ、皆が皆気付いてるわけじゃないと思うけど?何かあった?」
「いや…」
「さっさとくっつけばいいのになーとは思ってるけど、告んねぇの?」
もう無理なのは分かってる。
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2016.11.06
そろそろ行動を起こそうか
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