飴玉蜜玉


2


長くかかってしまった通話を切ると、

「なんだか問題発生っぽいですね。」

手をつけないまま冷めたものと入れ替えられたコーヒーが置かれた。
横に、70%カカオのチョコレートも。

「問題とまではいきませんが...ここまで進んだ今になってそれを言い出すか?というような事です。」
「や、それって思いっきり大問題じゃないですか。」

気遣ってくれる彼に申し訳なく思う。
彼が、私と共に過ごす休日を楽しみにしていたのは知っているし。
連続で飲んでいたボルドーの代わりに、冷蔵庫でブルゴーニュが冷えているのも知っている。
が。
その一方で、今まで話していた相手と会う明後日までに私がやるべき事の事の段取りも頭の中で始まっている。
察しの良い彼の

「じゃ、明日は俺も仕事してますよ。」

に、謝りかけて不意に思い直す。

「羽柴さん。その仕事が急ぎでないなら、私に付き合って下さい。行きたい所があるんです。」





私にとって幸いな事に、現物は移築され保存されている。
クライアントの十の説明よりも、この目で見て触れた方が


「色々と、今日はすみませんでした。」
「なにがですか?」



「仕事に夢中になれるって、カッコいいじゃないですか。今日の伊達さんを見てるだけでも、俺は充分楽しかったですよ。」

そう言って笑った彼に、心に痛みが走った。
彼は本心からそう言ってくれていて、彼は

「羽柴さん。今夜も泊まって良いですか?」


前後左右に聞こえないように言った私の小声を

「もちろん。」

彼はちゃんと拾ってくれた。



- 2 -

*前次#


ページ: