おまけ―――――J.Kのイギリス滞在記


【8月某日 天気:晴れ】
 研究の関係でしばらくイギリスに滞在することになった。来月の5日は環の20歳の誕生日だ。イギリスのおしゃれな雑貨などをプレゼントするのはどうだろう?明日の仕事帰り、ロンドンで探してみようと思う。

【8月某日 天気:晴れのち雨】
 環の誕生日プレゼントを探しにロンドンをふらついていた途中、なんと雨に降られてしまった。残念だが今日は諦めることにする。それにしても女性が好みそうなおしゃれな雑貨屋に、私のような男が入ることは許されるのだろうか?

【8月某日 天気:くもり】
 今日は雑貨屋の中に入って商品を見てみようと試みたが、なんだか小恥ずかしくて店先をうろつくだけにとどめてしまった。明日また挑戦したい。


【8月某日 天気:くもり】
 今日も駄目だった。

【8月某日 天気:晴れ】
 今日は向かいのブロックにあるカフェで雑貨屋に入るタイミングを見計らってみることにした。しかしどの時間帯にも若い女性がいてなかなか私のような男が邪魔して良い雰囲気にはならない。6時間ほど店先で粘っていたら、近所に住むアンソニーさんとクローイさんという気の好さそうな老人夫婦と仲良くなった。

【8月某日 天気:くもりのち晴れ】
 今日も同じカフェで雑貨屋の観察を続ける。『気恥ずかしくて雑貨屋に入れない』だなんて正直に言うわけにもいかないため、クローイばあさんは私が雑貨屋の店員に片思いをしているのかと勘違いしたままだ。しかしばあさんは知らないのかもしれないがあの雑貨屋を切り盛りしているのはばあさんたちとそう年の変わらないフランス帰りの物静かなじいさんである。そして今日も何も収穫を得られないまま一日が終わる。カフェの主人が明後日から1か月海外へ夫婦旅行に行くのだと楽しそうに話しているのが印象的だった。

【8月某日 天気:雨】
 今日は仕事で雑貨屋の観察に行けなかった。この二日間よくしてくれたカフェの主人に挨拶をしたかったので残念。明日から『そそっかしいけどブラックコーヒーを淹れるのがうまい、頑張り屋さんの一人娘』が店を開けると主人が他の客に言っていた気がする。刻一刻と帰国の日が近づいてきている。埒が明かないのでイギリスに住んでいる環の友人に助けを求めることにした。良い返事を期待する。

【8月某日 天気:晴れ】
 今日は午後休みをもらえたので、環の友人宅にお邪魔することにした。彼女の話を聞くうちに、雑貨屋で何を買うのかまったく具体的なプランを考えていなかった自分に気が付いた。恥ずかしい。

【8月某日 天気:くもりのち晴れ】
 今日は3人の環の友人と、その恋人たちに見守られながら雑貨屋で目当ての品を購入した!喜んでもらえるといいが・・・


(裏話
雑貨屋の主人の正体はルパンさん。クローイばあさんは女性に変装したルパンさんを見たため、そう思い込んでいる)