お望みなら、添い寝だってしてあげる
title by 確かに恋だった
俺の彼女は可愛い。
顔が可愛いとかじゃない。いや、もちろん顔だって俺の好みど真ん中だし、俺はいつも可愛いと思っている。でも、そんなんじゃないんだ。
彼女は俺より一個年上のOLさん。会社でも何人か部下がいて、指導したりもしているらしい。しっかり者で頭の回転が早くて、こっちの言いたいことをすぐに察してくれる。ホントに俺にはもったいないくらいの女性なんだ。
そんな彼女は家でもテキパキと動く。煮物を煮込んでいる間に洗濯機を回し、お皿を手早く用意して。一連の動作で一体いくつの作業をこなすのだろう。だからと言って、急かされると感じることもない絶妙なバランス。
一度彼女に聞いたことがある。何でそんなにシャキシャキ動くのかと。帰ってきたのは、「手早く用事を済ませたら、後はゆっくりできるじゃない」というさっぱりとした返事。要はメリハリがついているってこと。
どこから見ても隙のない完璧そうな彼女。だからなのかもしれない。甘えるのは少し下手で、寂しさを押し殺したり本音を言えなかったりすることも多い。だからこそ、一緒にいるときくらいはドロドロに甘やかしたいって思ってしまう。
それなのに、今の状況は何だろう。気がつけば、俺は彼女の程よく柔らかい膝に頭を乗せ、髪の毛を優しく撫でられている。するりと間を通る指の感触が心地良くて、うっとりと目を閉じてしまいそうだ。
「って、何で俺膝枕してもらってんの?」
飛び起きるのはもったいなくて、顔だけであいを見上げて問う。
「雅紀くんが眉間にしわ寄せて考えているから、疲れてんのかなと思って」
確かにどうやって彼女を甘やかそうか考えていた。それなのに、俺が甘やかされるなんて反対じゃないか。
「疲れてない。あいがいるだけで癒されるもん」
彼女の頬へ手を伸ばし、ゆっくりと撫でる。俺の仕草に恥ずかしそうな態度のあいが可愛くて、ちょっと強引に引き寄せて口付けた。
「俺ね、あいを甘やかしたいんだけど」
突然の提案にぽかんと口を開ける彼女。でもそれは一瞬のことで、すぐにクスクスと笑い出してしまった。真剣なのに、そんな風に笑われるとどうしていいのか分からなくなっちゃう。
「ご、ごめん。雅紀くんがあまりにも可愛くて」
謝りながら何とか笑いを収めたあい。彼女に可愛いなんて言われて嬉しい訳ないじゃないか。少し不機嫌になった俺をあやすように、彼女がまた髪を梳いた。
「私のこと考えてくれてありがとう」
優しく微笑まれて心臓が跳ねた。そんな顔されて平常心を保てるほど、俺は人間ができていない。ガバッと起き上がり、あっという間に彼女をソファーへ横たえた。そして軽く体重をかけ上から覆い被さる。片手は彼女の顔の横へ着いて、もう片手で彼女の両手を軽く拘束し逃げられなくした。
「心だけじゃなくて、体だってドロドロに甘く溶かしたい」
視線を絡ませてそう告げると、あいの顔が赤く染まった。それが林檎みたいに美味しそうで、思わずペロリと舌で舐める。
「ちょっと、雅紀くん!」
焦ったように呼ぶ声も、今の俺には欲情を加速させるエネルギーになる。
「あいがお望みなら、このまま添い寝だってしてあげるよ」
意識的に柔らかく微笑んで拘束を緩める。彼女が願うことなら、世界征服だって叶えたいと思うくらい惚れてるって伝わらないかな。
「……でも、今は止めたくないかも」
正直に口から出てしまう欲望に、あいは目を細めて微笑んだ。
「止めなくて……いいよ」
小さいけれど確かな肯定の言葉。確かめるためにゆっくりと唇を近づける。彼女が目を閉じたのを合図に、荒々しく口付ける。閉じられた唇をこじ開け、潜んでいた舌を引きずり出す。執拗に絡めると、微かな吐息が漏れた。
「一緒に溶けあおっか」
キスの間に宣言し、返事も聞かずに彼女を抱きしめる。緩く背中に回された腕が答えだ。
君の願いはどんなことだって叶えたい。
でも、まずはとびっきり愛させて?
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