眠り姫は襲っていいんだ
title by 確かに恋だった



 目の前に眠るのは俺の大切な人。今日訪問するはずが、仕事が押した関係で約束の時間よりも随分遅くなってしまった。先に休んでいて欲しい旨を伝え、それに了承の返事が来ていたから、この状況は予測できた。それはいい。遅くなった俺が全面的に悪い。

 でも想像してみて欲しい。愛しい彼女がいつも俺が来ているスウェットを握りしめたまま、ベッドで眠っている状況を。なんて可愛いんだろう。こんなの我慢できる人がいるだろうか、いや、いない。

 ここまで考えるのに多分一分もかかっていない。よし、あいには悪いけれど、可愛すぎる彼女にも責任があるってことで。そうと決まれば俺の行動は早かった。


 手早くシャワーを浴び、歯みがきなどの就寝準備を済ませて彼女のベッドへ潜り込む。一人用のそれは普通に寝るには狭くて、新しいのを買わないとと思ったりもするけれど、あいを抱きしめて眠る口実ができるからこのままでいいかと考え直す。眠る彼女に軽い口づけを落とす。俺の意志とは裏腹に深くなっていく口づけを止められず、欲望に任せた。

「ふ……んっ」

 艶めかしい吐息を漏らしたあいの瞼がうっすらと開く気配を感じ、唇を離す。俺を認めて目をまん丸にした彼女の髪をそっと撫でた。

「えっ!? 雅紀くん!? 何でいるの?」

 驚く彼女が可愛すぎて唇を掠めとった。少し身じろぎしながらも受け入れてくれるあいに愛しさが増す。

「遅くなってごめんね」

 囁いてゆるく抱き寄せる。胸に頭をすり寄せる彼女に鼓動が跳ねた。

「ううん。来てくれて……ありがと」

 小さな声で、けれどもはっきりと呟いた彼女。少しだけからかいたくなって、悪戯っぽく言葉にした。

「俺の服抱いて眠るほど思っててくれたんだ?」

 ボン! と音がしそうなくらい頬を赤くした彼女。まるで熟した林檎みたいだなってクスクス笑ってしまう。

「えっと、これは、その……」

 抱えたスウェットの存在を今まで忘れていたのだろう。右手にあるそれを自分の後ろへ隠してみても、今さら遅いよ。

「そんな偽物じゃなくて、俺自身を感じて欲しい」

 寂しい思いをさせてごめんなんて、口にする方が申し訳ない気がする。俺だってできることなら毎日会いたい。この手で唇で、あいを感じたい。

「好きだよ」

 叶わないなら、せめて一緒にいる時くらいは。愛しい気持ちを注ぎ込むように、あいに追い被さって唇を奪う。唇を分け入れば、応えてくれる舌に歓喜した。


 俺の大切な眠り姫。健やかに眠らせてあげたいけれど、今日は襲っていいでしょ?

 その分、ドロドロに溶けあうまで愛するから。

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