意外と大胆なのはお互い様です
title by 確かに恋だった



「智くん、11月11日が何の日か知ってる?」

 後ろ手に何か隠したあいに、突然問いかけられた。

「ん? 知らない」

 考えることすら放棄した俺の返答に、頬をぷぅっと膨らませる彼女。その顔が見たくてわざとそっけなく返したなんて知ったら、ますます膨れるのだろうか。

「もう! ちょっとは考えてよ。ヒントはこれ!」

 そう言って、隠していた箱を前に突き出す。この赤い箱は知ってる。だってメンバーがCMしてたから。

「んーと、いいニノの日!」

 CMでデビルになってるニノ、面白かったなぁなって考えていたら、口からふざけた答えが出ていた。

「いいしかゴロ合わせできてないし……」

 項垂れるあいを見ると、さすがに申し訳なさが込み上がる。頭をよしよしと撫でると、気分も良くなったのか、彼女の顔が前を向いた。

「11月11日は、ポッキー&プリッツの日でした!」

 大仰に発表すると、手に持った箱をパチパチと叩いた。そんな風にしたら中で割れちゃうんじゃないかなぁ。

「ということで、ポッキー食べましょう」

 何がどう繋がるのか分からないが、言い切ったあいがポッキーを差し出すから、それを受け取って咀嚼する。久しぶりの味に、子どもの頃を思い出した。

「あ、うっめぇ」
「でしょ? こういうのって、時々食べるとすっごく美味しいよね」

 満足そうな顔をしたあいが、次々とポッキーをたいらげる。

「そうだ、智くん。ポッキーゲームって知ってる?」

 尋ねられたけれど、そんなゲームは知らない。首を振って返事すると、予想通りだったのか「やっぱりそうか」と小さな呟きが返ってきた。

「一人がポッキーをくわえて、反対側からもう一人が囓るの」

 あいは説明しながら、ポッキーを一本俺にくわえさせた。そして、自分は反対側から齧り付く。その距離の近さに驚き、心臓が早鐘を打った。

「ポッキーをたくさん食べた方が勝ち」

 もぐもぐと口を動かしながら言う彼女。

「今度は智くんの番だよ」

 そう言いながら、今度は自分がポッキーをくわえる。天然って怖い。自分がどんなに大胆なことしてるのか、絶対分かってない。それでも赤く色づく唇の誘惑には勝てなくて、目の前にあるポッキーを口に運ぶ。少しずつ囓り進めると、柔らかな温もり。チョコレートよりも甘いそれを感じていたくて、しばらくそのまま過ごす。

「あめっ」

 唇を離して言うと、少しだけ頬を染めたあい。ポッキーゲームを始めた時点でこういう事態を想像していなかったのかな? その様子が可愛くて、もう一度ポッキーをくわえさせる。

 さっきより赤みをました唇が色気を放ち、そこから目が縫い止められた。思わず息を呑むと、口の中にチョコレートの甘さが広がる。チョコじゃないものも食べたいかも。と、目に入ったのは彼女がくわえるポッキーの、チョコレートがコーティングされていない部分。あれならまだ甘くないかも。
 あいの口元に顔を寄せ、くわえたポッキーの根本を舌で絡め取る。俺の思惑通り、ポッキーはボキッと折れてビスケット部分を含めて俺の物になった。

「この、チョコ入ってないとこ好きなんだよね」

 あいを見て弁解すると、口元に手を当て、真っ赤な顔をした彼女がそこにいた。

「っ! 口で取らなくても、言ってくれればあげたのに!!」
「そっか。それは思いつかなかった」

「思いつかなかったって! あんな取り方恥ずかしすぎる……」

 そこまで言うと力が抜けたのか、ダラリと炬燵に突っ伏した。耳まで赤くなった彼女は、ポッキーよりも数倍甘そうだ。

「ねぇ、あい」

 自分でも声が艶めかしくなるのが分かったけれど、もう止まらない。

「そろそろ食べさせて」

 返事を聞かずに、首筋に舌を這わす。同時に部屋着のトレーナーの裾から、両手を進入させた。

「智くん……っ!」

 吐息混じりの声は俺の欲情を煽るだけ。快感に天を仰いだ彼女に覆い被さり、ラグに横たえる。ベッドに行く時間すら惜しくて、すぐさま唇を奪った。こんなところで抱くなんて、大胆かもなんて意識が浮かんですぐに消える。


 君から仕掛けたゲームは意外と大胆で、予想できなかった俺に火を付けた。

 理性なんて燃え尽きてしまって、君の甘さだけを求め続けるんだ。 

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