唇の上のイスとりゲーム



 今、俺たち5人はゲームの真っ最中。
 いつスタートがかかるか分からないこのスリルの中、俺たちは内ポケットの武器を握りしめるんだ。


「あー、唇がかさかさだ。」

 全てが始まったのは、あいのこの言葉からだった。

 リーダーがデザインした絵が飛行機に描かれた、そのお披露目会でのこと。
 1回目が終わり裏に引っ込んだ俺たちは、小声で雑談していた。

「リーダー、すごいね!」
「淡いタッチの絵も素敵だよ。」

「俺たちも描いてみたかったよな。」
「一生懸命描くのにね。」

「あなたたちが描いたら、航空会社が潰れちゃうでしょうが。笑」
「ははははは。」

 画力については、嵐で底辺を争う翔ちゃんとあい。
 パンケーキで絵を描く企画では、あの有名な顔を食べさせてあげる正義の味方を描いて、スタジオの悲鳴を上げさせた翔ちゃん。
 対して、その企画で画力がないにも関わらず、見た目は子供、頭脳は大人な探偵さんらしきものを描いて、スタジオをしーんとさせたあい。

「誠心誠意やらせていただきますよ?」
「最先端なものができあがるかもよ?」

 ニヤニヤしながら言う二人に、笑い転げるリーダー。

「腹いてぇ……。また今度正義の味方と探偵さん描いてよ。笑」
「うん。練習しとくね。」

「リーダー、それどうすんの?」
「落ち込んだ時に見る。」

「気分どん底になるかもよ。笑」
「俺らの絵に、そんなマイナス効果無いわ!」

 他愛のないやり取りの中、翔ちゃんが内ポケットからリップクリームを取り出した。
 そういえば少し乾燥するかも、と考えながら唇を触り確かめる。

 隣を見ると、俺と同じことを思ったのか、同じように人差し指で唇をなぞるあい。

「あー、唇がかさかさだ。」

 そして、冒頭の言葉に戻るわけだ。

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