「よーし、復活!!」
あいが体を起こしたのは、ちょうど10分後。
タオルをテーブルに置き、目の周りを軽くマッサージすると、両腕を大きく上げて伸びをした。
「目の調子も良くなったし、これならコンタクトしても大丈夫そう。ニノ、ありがとね。」
「いえいえ。でも、まだしばらく眼鏡にしときな。」
「うん。メイク行くまではそうする。」
そう言って再び眼鏡をかける。そんなあいを見て、リーダーが一言呟いた。
「眼鏡って、キスするとき当たんないの?」
「えー、どうなんだろう?」
あいも首を傾げると、自分の他に唯一メンバーで眼鏡をかけてる松潤に顔を向ける。
「どっちか一人だけだったら当たんねぇよ。」
「だよね?」
そんなもんなんだと、眼鏡のお世話になっていない俺は思う。
「二人ともかけてたら当たるの?」
「智くん、すっげぇ気になるのね。笑」
「うん。松潤とあいが二人とも眼鏡なの見てたら、気になっちゃって。」
「えー、どうなんだろう?」
あいは腕組みをしながら天井を見つめている。きっと頭の中で、リーダーから聞かれた状況を思い浮かべているのだろう。
「ちょ、あい立って。」
そんなあいの手を引き、立たせる松潤。向かい合うと、あいの耳元へ手を差し込み、顔を寄せる。
二人の唇が重なりそうになるのが、まるでスローモーションのように見えた。その衝撃に、俺たち4人は時が止まったように動けない。
「当たんないんじゃない? 眼鏡。」
「だね。顔をすっごく近づけたら当たるかもしれないけど。」
「こういうこと?」
今度はあいの頭の後ろへ手をやり、引き寄せようとする。ちょっ、それは明らかに大人な深いヤツをする体勢じゃないか!
そう感じた俺たち4人の行動は速かった。松潤を引きはがす翔ちゃん。あいの唇を後ろから手で塞ぐ俺。二人の間に入り込むニノに、大声で制止するリーダー。
その反応時間0.1秒。
「ストーップ!」
俺たちの行動に呆気にとられた二人が固まる。
「二人とも、何考えてんの?」
「もー、焦った! ホントにちゅーするかと思ったじゃん。」
「あいもちゃんとよけなさい。」
「どさくさに紛れてちゅーしようとするなんて許しません!」
ようやく頭が動き出したのか、翔ちゃんの腕をほどきながら松潤が反論する。
「ばっ! お前らバカか! ホントにするわけねーじゃん!」
「そんなに赤くなって。ホントかどうか。」
「潤くんのいう通りだよ。そんな空気じゃなかったでしょ?」
「いや、俺らが止めなきゃ最後までしてたね。」
言い訳をするも、ニノにじろりと睨みながら嫌みを言われて、首を竦めるあい。
「最初に聞いたのは智くんじゃん……。」
下を向きながらブツブツと文句を言うあいに、リーダーが悪戯そうに告げる。
「今度、鍵マニアの眼鏡持ってくるから、その時に確かめてみよ。」
「じゃあ、俺も執事の眼鏡持ってくる。期待しちゃうよ?」
「俺は虹のやつね。ピアノ弾きながらとかもいいね。」
「それじゃあ、俺はマナブのヤツ持ってくる。ロケ先で隠れてしちゃうか!」
「するわけないでしょー!!!」
叫ぶあいの姿に大笑いする。一瞬とはいえ、俺たちをヒヤヒヤさせたささやかな仕返し。
ドラマや映画などであいのキスシーンを何度も見てるとはいえ、役でもない場面でなんてごめんだ。
大声を出したせいか、少しずり落ちた眼鏡を両手で直してあげる。
「ありがと。」と小さい声で返すあいには教えてあげないけど。
きっと明日から俺たちの鞄に増える荷物が一つ。ケースに包まれた眼鏡が一つ。
取り出すまでの反応時間0.1秒。
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