「元さん、これ、どういうこと?」
机の上の雑誌を指さし、問いただすような口調で松潤が元さんに尋ねた。その話し方と俺たちの様子を見て、苦笑する元さん。
「今日発売日だったか。」
「元さん、知ってたの?」
「一応チーフマネージャーだからな。」
「何で教えてくれないのさ。」
不満を隠さずそう告げると、俺たち一人一人の目を見据え、ゆっくりとした口調で話し出した。
「お前らが反対すると思ったからだよ。」
「だったら!」
「雑誌読んだなら分かるだろ。あくまでも女性がターゲットだ。」
「でも、そういう目で見るヤツらだって、絶対いる。」
「あいもそれは承知だ。それでも挑戦したいと言った。だから許可した。」
「あいが……。」
「お前らになら分かるだろ。新しい分野の仕事に挑戦するときの不安が。」
元さんの言葉に、俺たちは唇を噛みしめる。そんなこと、痛いくらい分かるさ。ジャニーズだから、アイドルだからって、ちゃんと評価してもらえない事なんて山ほどあった。
「みんなが嵐に新しい風を吹かせてくれるから、私も挑戦したいんだと。」
「それ、あいが言ったんだね。」
「あぁ。」
「分かった。」
一言返事をすると、ニノはゲーム機を取り出して再開した。その手が強く強く握られていたことは、見ないふりをする。
楽屋にはニノがゲームを操作する音だけが響いていた。
どのくらいたったのだろう。とても短い時間だった気もするし、ものすごく長かったようにも思える。
言葉を発しない静寂を破ったのは、ギーッというドアの開く音。
「おはよう。……って何かあった?」
いつもと違う空気に違和感を感じたのか、あいが訝しげな顔をする。と、ゲーム画面から顔を上げずに、ニノが答えた。
「見ちゃった。」
「見ちゃったって、何を?」
「机の上。」
「……今日発売日なのに、早いね。」
「キレイだったよ。今度は俺の、ストライプのYシャツ持ってくるわ。」
そう言ってあいの顔をからかうように見つめるニノ。その言葉に周りの空気が柔らかくなる。
「着ないよ!」
「じゃあ俺も持ってくる!」
「だーかーらー、着ないって言ってるじゃん!」
「こんな綺麗なあいさん、目の前で見たいじゃん。笑」
「そうそう、いつの間にこんな小悪魔な表情できるようになったのかな?」
「私だってやればできるんだからね。笑」
そんなやり取りを見て、ホッとしたように息をついた元さん。その後ろからノンちゃんが入ってきた。
「あー、皆さんお揃いですね。あれ、その雑誌もう手元にあったんですか。でも、せっかく持ってきたんだから配っちゃお!」
そう言いながら俺たちに例の雑誌を渡してくる。それも何故か二冊ずつ。
「ノンちゃん、これくれるの?」
「そのあいさん、すっごくいい出来でしょ? きっと皆さんから頼まれると思って、用意しといたんですよ。」
「でも、何で二冊なの?」
「そりゃ、観賞用と保存用です!」
胸を張って言い切ったノンちゃん。その様子にニノと翔ちゃんがたまらず吹き出す。
「いやー、ノンちゃんその通り。二冊いるわ。笑」
「一冊は毎日持ち歩くか。」
「ちょっと翔ちゃん、変態発言。笑」
「なんでこんなにたくさん配るのよ……。」
笑い転げる俺たちの側で、恥ずかしそうに肩を落とすあい。そこに流れるのは、いつもの空気だ。
夢と現実の区別がつかないほど、馬鹿じゃない。だって俺たちの仕事は夢を届ける仕事だから。
それでもメンバーの行動でこんなにも心乱されることもある。
労うように、慰めるようにニノの肩を叩いた松潤。そして眉を下げて困ったように笑い返したニノ。
きっとこれからも、俺たちには乗り越えるべき壁があるだろう。
一つ一つの現実を一緒に乗り越えたい。ここにいる仲間たちと。
雑誌を見ながら笑い合うあいと相葉ちゃんを見ながら、小さく心の中で誓った。
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