「お姫様、お手をどうぞ。」
紳士然とした笑みを浮かべた智くんが右手を差し出すと、まるで操られるかのように、あいはそこに左手を乗せた。そして少し広い場所までエスコートすると、優雅に踊り始める。いつも俺とふざけてするミュージカル調のものではなく、周りの空気まで一緒に踊っているようなしなやかさ。
初めは呆気にとられていたあいも、徐々に笑顔になりクルッとターンを決めてフィニッシュ。お互いが向かい合って一礼する時には、無いはずのドレスの裾を摘む仕草まで見せた。
「さすがは俺のお姫様。」
くしゃりと笑った智くんがすかさず額に口付けた。途端にさっきまでとは打って変わって、あいの頬は林檎みたいに赤くなる。
「なんだよ、見せつけてくれちゃって。」
「お城の舞踏会みたいだったよ。」
「楽しかったけど、お姫様なんて言われるのは、恥ずかしすぎる……。」
智くんはあいの手を引いてソファーに座らせると、満足そうに言ってのけた。
「俺、社交ダンスの才能あるかも。」
「今度、コンサートの振りに入れてみたら。」
茶化してそう言うと、松潤が「いいかも。」と構想を練り始めた。あいと踊れるなら、それも悪くないなぁなんて思っていると、ニノが静かにあいの前にしゃがみ込んだ。
あいの首に左手をまわして、お互いの額を合わせる。言葉なんて無くても、お互いの気持ちが溢れ出てしまいそうな距離。視線を合わせたまま、ゆっくり三度瞬きして囁いた。
「このまま……時が止まればいいのに。」
吐息のような声に思わず鳥肌が立った。絡み合った視線は解かないまま見つめ合う。それがどれだけの時間だったのかは分からない。一瞬にも永遠にも感じた時間は、二人だけのものだった。
やがて思い切るように額を離して、鼻の頭に口付けを落とした。
「くぅー、甘いね! キザだね!」
「なんか見てる方が恥ずかしくなっちゃう。」
「されてる方が、もっと恥ずかしいわ!!」
両手を握りしめて主張するあいに「俺に惚れるとヤケドするぜ。」とウインクをとばすニノ。調子の良い様子に笑いが零れた。
そしていよいよ俺の番。音を立てずにあいの背後に回る。
腕を回し、後ろから抱きしめた。あいの肩にそっと顎を乗せ、耳元へ唇を寄せる。ふわっと香る甘い匂いに心臓が跳ねた。
「君は僕が守るから。」
少しだけ腕に力を入れて、体を密着させると、俺の腕にあいの手が添えられた。そのぬくもりをしばらく感じてから、頬に優しく口付けた。
「なんか見てて切なくなる。」
「まさに胸きゅんだ。」
小さな声で言い合う二人を、後ろからあいを抱きしめたまま見ていた。
「翔くん……、もう限界だから離して。」
あいが、俺の腕をぽんぽんと降参するように軽く叩くから、小さく笑って元の席に戻った。
「いやー、楽しかったなぁ!!」
「これ、俺はまりそう。」
「キザな言葉、メモっとかないとね。」
「次回開催はいつ?」
「え? 明日くらいじゃないの?」
口々に言う俺たちをぽかんとした顔で見るあい。しかし、徐々に唇を尖らせ、ふてくされたような表情へ変化した。
「もうやらないんだから!」
いつもより5歳は若く見える拗ね方に、俺たちは一斉に吹き出す。お腹を押さえて笑い転げる俺たちにつられるように、あいも小さく笑った。
「でも、俺は楽しかったよ。あいの色んな顔が見られて。」
ニコッと笑って伝えると、ほんのりと頬が染まった。
「甘い言葉はもうたくさん。」
ハの字眉でそう言う君に、みんなで目を合わせて笑い合う。
大好きな仲間と過ごす、かけがえのない時間。
キザな言葉なんて無くても、君がそこにいるから、僕らの世界は何時も甘い。
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