「お前、先に入って着替えたら? 待っててやるよ。」
「こんな真っ暗な中、先に入るなんて怖すぎる……。潤くん入ってよ。」
あいが俺の服の裾を掴んで小さな声で訴える。少し下がった眉が怖さを表していて、不覚にも笑みが顔に浮かんだ。
「仕方ねぇなぁ。じゃ、一緒に行ってやるよ。」
そう言ってノブに手をかけ真っ暗な楽屋のドアを開ける。と、その時、
「「「「「ハッピーバースデー!」」」」」
聞き慣れた声が耳に届き、少し遅れてクラッカーの音が周りに響き渡る。呆気にとられている俺の前には、悪戯そうな顔をした4人の男達。
「松潤、びっくりしたでしょ?」
「ふふ。大成功ってとこかな。」
「なかなか来ないから、俺寝そうになったよ。笑」
「智くん、ちょっと寝たでしょ? カクってなってたよ。笑」
口々に言うメンバーをぼーっと見ていると後ろからあいがクスクス笑いながら入ってきた。その手にはバースデーケーキ。
「秘密にしててごめんね。びっくりさせたかったから……。」
そう言われて見た時計は0時5分。昨日までは誕生日だって覚えてたのに、今日はすっかり忘れていたことに気付く。
「あい、もしかしてレッスン場に連れて行ったのも計画通り?」
「う……。だってニノが私に潤くん連れ出せって言うんだもん。」
「だって、それが一番確実でしょ? 潤くんなんだかんだ言って、あいのお願い断れないじゃん。」
「松潤、俺のお願いも聞いてくれるよ?」
「ひゃは。リーダーのこと、好きだもんね。」
俺に黙っていた罪悪感から小さくなるあいからケーキを取り、ろうそくに火を付けていく翔くん。
「まぁまぁ、松潤めでたい日だから許してよ。ほら、歌、歌うから火消して。」
再び静かになった楽屋にみんなの歌声が響く。ろうそくに照らされたメンバーはみんな笑顔で、胸があったかくなった。
「「「「「誕生日、おめでとう!!!!!」」」」」
俺がろうそくを吹き消すと拍手が巻き起こる。
「ケーキ、ケーキ。」と言いながら、あいが切り分けたケーキをみんなで頬張る。
「松潤のケーキだけおっきい……。」
「そりゃ、潤くんの誕生日だから。何言ってのさ。」
「でも、おっきいの食べたいよね。リーダーの気持ち分かるわ。」
「あー、美味しい。幸せだー。」
ふにゃりと顔を崩しながらケーキを食べるあい。その掌には白い生クリーム。
「あい、クリームついてるぞ。」
そう言いながら色白の手をとる。そこに唇を落とし、クリームを舐めとった。
「ちょっ、ちょっと松潤!」
「刺激つえー!」
「あー、あい固まっちゃったよ。」
「俺もあいにちゅーしたい。」
顔を真っ赤にしてどもる翔くんの肩をバシバシたたきながら盛り上がる相葉くん。ちょっと眉を顰めて不服そうな顔をするニノと、自分の欲望に正直なリーダー。
そして、俺に手を握られたまま動けないあい。
「まだケーキ残ってるけど、食べさせてやろうか?」
口の端を上げて笑うと我に帰ったあいが騒ぎ出す。
「ちょっと、潤くん、何すんのよ! 心臓止まった−!!」
「ふふふ。俺に秘密にしてた仕返し。」
「あー、もう、ホントに。信じられない。色気だだ漏れなんだから……。」
そう言って頭を抱えたあいを笑いながら帰り支度を始める。メンバーが俺の方を恨めしそうに見てたことは気付かないふりをする。みんなの気持ちも分かるけど、誕生日なんだから大目にみてくれてもいいじゃないか。
「じゃ、俺先に帰るわ。ケーキごちそうさん。誕生日も祝ってくれてありがとう。」
「おぅ。気をつけて。また明後日VSの収録で会おうぜ。」
まだ固まっているあい以外のメンバーに見送られ、楽屋を後にする。きっとこの後、ニノあたりが
「いつまでも浸ってないで、さっさと帰る準備しろ!」とか言って急かすんだろう。
慌てる彼女が頭に浮かんで笑みが零れる。
そんな唇に残るのは、華奢な彼女の掌の感触。触れた束の間の感覚。
願わくば、これからの誕生日も一緒に過ごせますように。
掌へのキスにこめられた意味が懇願だなんて、絶対教えてやらない。
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