Trick or Treat!
今日は10月31日。そうハロウィンの日だ。俺は小さくない紙袋を抱えて仕事へ向かった。どんないたずらを仕掛けてやろうとワクワクしながら。
現場に着き、こういう時の相方を探す。見つけた。イベント事にはお祭りコンビってね。お目当ての人の側へ行き、声をかける。
「あい、おはよう。」
「相葉くん、おはよう。どうしたの、そんな大きな荷物持って。」
早速俺の持ち物に目を付けたあい。よし、このタイミングで一気に巻き込もう!
「ふふふ。今日は何日でしょうか?」
俺の質問に一瞬思考を巡らせた彼女は、途端ににんまりした。
「ハロウィンだ!」
「ってことで、しません? 仮装。」
わざと小さな声で秘密を共有するように話す。
「しますか、仮装。」
うっしっしという表現が似合いそうな顔をしたあいが、俺の隣で笑った。
「俺も着替えてくるから、あいもどうぞ。」
紙袋の中から自分の衣装だけを取りだして、残りを渡す。きっと可愛く変身するんだろうなぁ。想像しただけで俺は浮き足立ち、近くにいたニノに頭を叩かれた。
「全く、何企んでんだか。大体予想つくけど。ちゃんと可愛い衣装選んだんだろうな?」
予想つくどころか的中じゃん。俺はニノの質問には答えず、任せといてとの意思表示のため、サムズアップを返して、自分の衣装に着替え始めた。
ノックをしてあいの楽屋へ入る。楽屋とは名ばかりの着替え部屋だ。男女が同じ楽屋で着替えるのはさすがによろしくないため、大部屋とは別にあい用の小部屋が用意されている。そこへ入ると、部屋の隅で小さくなった彼女。腕を取って立たせ、上から下までじっくり見る。そしてたまらずあいに抱きついた。
「可愛いー!」
腕の中のあいをまだまだ愛でていたいけれど、じっくり鑑賞したい気持ちの方が強くて離れた。
今回俺が用意したのは黒猫の衣装。上半身は、白いファーに囲まれた大きめのフードに、可愛い猫耳がついた黒いもこもこを羽織る。下は膝丈より短い黒のショートパンツに、白のもこもこレッグカバー。色んなとこにリボンがついていて、可愛らしさを演出する。総じて言えば、もこもこしていて、抱きしめると大変心地良い。
「相葉くん、さすがにこれは恥ずかしいかも。私の年も考えて……。」
少し袖が長かったのか、掌が半分くらい隠れた手で顔を覆いながら恥ずかしがるあい。何だよ、その表情。むしろもっとやってくれ。
「せっかくのハロウィンだし、これくらいしないと! 俺だって恥ずかしいけどちゃんと着てるでしょ。」
あいを宥めるように、自分の衣装を指し示す。俺はドラキュラの格好をしている。白いシャツに、裾がギザギザにカットされた黒いマント。大きめの襟はしっかりと立てて。俺にも羞恥心はある。でもせっかくだから楽しまないと。
「相葉くん、CMでもそんな格好してるじゃん……。」
「あれはまた別。ほら、みんなのとこ行くよ。」
まだ納得いかなさそうな彼女の手を引き、俺たちの楽屋へ入る。みんなの反応が楽しみでたまらない。俺は、高鳴る鼓動を押さえきれずに一歩踏み出した。
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