「相葉さん、相葉さん。あいが言いたいことあるって。」

 肩を叩かれ振り向くと、そこには悪巧みを隠しもしないニノとあいの姿。まさかこの流れは……。

「Trick or Treat!」

 やられた。自分が仕掛けるばっかりで、仕掛けられる可能性を考えていなかった。

「相葉くん、早くお菓子あげないと悪戯されちゃうよ。」

 翔ちゃんまで参加して、俺がどういう反応するか見ている。あー、お菓子なんて持ってたっけ?
 慌ててポケットを探そうとするも、それはドラキュラの衣装。ポケットなんてついているはずもなく。

「お菓子ないのかな? じゃあ悪戯しちゃうぞ!」

 ふっふっふと笑いながら近づいてくるあい。後ずさりしようにも、ソファーに遮られて動けない。
 俺の横に回り込んだあいが、そっと両手を右肩に置いた。

 次の瞬間、右耳にふーっと息をかけられる。突然の出来事に腰が抜けたように座り込んだ。

「ちょ、あい……」
「これはダメだ。」

「ここに小悪魔がいるよ!」
「猫耳つけた堕天使だ!!」

 口々に騒ぎ立てるみんなの声も、少し距離があるみたいにぼんやりとしか聞こえない。

「相葉くん、大丈夫?」

 翔ちゃんに腕を引っ張られ、なんとか立ち上がった。

「相葉くん、ハッピーハロウィン!」

 悪気もなく満面の笑みで笑うあいには敵わなくって、「ハッピーハロウィン。」と力なく返した。
 その時浮かんだ俺の企み。反対する人は誰もいないだろう。お礼はきっちりさせてもらいますとも。

「あい」

 そこまで言って、みんなに手招きする。それぞれ理解したようで、俺の周りに集まった。そして同時に息を吸い込み、にこやかな笑顔で言い放つ。


Trick or Treat!


 今度はあいが慌てふためく。けれどさっきまでたくさん貰ったお菓子は全てお腹の中。準備の良い松潤に、そこらにあったお菓子も全部隠され打つ手なしの状態だ。

「あれ、お菓子くれないの?」
「じゃあ、悪戯しちゃおっかなぁ。」

「ふふふ。そんな逃げなくてもいいんじゃない?」
「とりあえず、そのもふもふを愛でようか。」

 みんな言葉と表情が裏腹で、どんどんあいを追い詰める。少しずつ後ろへ下がるあいは気づかない。その先にあるのは壁ってことに。

「覚悟して。」

 左手を壁にドンとつき、あいを囲い込んだ。所謂壁ドンってヤツだ。さっき、翻弄してくれたお返し。たまには意識して貰わないとね。


 そして俺らは嫌がる猫耳ふわもこあいと、それぞれツーショット写真を撮る。後ろから抱きしめる人、猫っぽいポーズをさせる人など、リクエストは様々だ。4人との撮影が終わって、若干泪目のあいが俺のところへやってきた。

「……相葉くん、やってくれたわね。」
「そこはお互い様じゃない?」

 ふふんと笑って、翔ちゃんが持つ俺のスマホを指で示す。

「ほら、写真撮るから、とびっきりのアイドルスマイルして。」

 そう言うと、不服そうではあるもののスマホに向かってスマイルを浮かべる。

「じゃあ、撮るよ。はい、チーズ!」

 翔ちゃんの合図と同時に、少ししゃがみ込んであいの頬に口付けた。ふんわりと香るあいの匂いに、俺の執着心が刺激される。名残惜しくてゆっくり離れると、頬を押さえて固まるあいに、口をあんぐり開けた翔ちゃん。

「翔ちゃん、ちゃんと撮れた?」

 動かない翔ちゃんからスマホを奪い取って確認する。もちろんすぐに保存し、ロックをかけることも忘れない。

「ちょっ、相葉さん! 今のはダメだろー!!」
「俺ももう一回撮り直す!」

 ぶうぶう文句を言う末っ子二人をさらりと躱し、あいの腰を抱いて楽屋を出た。

 初めに着替えた楽屋へ押し込み、耳元で囁く。

「あい、来年のハロウィンも楽しみにしてる。」


 大好きな仲間たちと過ごす、ちょっぴり特別な一日。

 来年のその日には、君が俺の言葉でいっぱいになればいいなと思った。

prev / next
better tomorrow