その笑顔、たまらなく愛しい 智くんB.D.
title by Catch sight of



「ふぅ」

 五人でのテレビ収録が終わって楽屋へ戻る。時刻は23時を少し回ったところだ。有り難いことに毎年年末に近づくにつれ、俺たちは忙しくさせてもらっている。今日もレギュラー番組の収録に加え、特番のCM撮影を行った。ただ、忙しさと比例して、当然休みは少なくなる。この後も雑誌の取材が一件入っているようで、日付を跨ぐことがザラになってきた。例年通りと言えばそうなのだが、やっぱり休みがないことは肉体的にも精神的にも少し追い詰められる。

「リーダー、どうしたの? 溜息なんてついちゃって」

 衣装のジャケットを脱ぎながら、相葉ちゃんが気遣ってくれた。

「いや、最近休みなくて。さすがに疲れちゃったなぁと思ってさ」

 ソファーに座り込んだ俺に、みんなが目線を投げかけてくる。

「智くんがそんな風に言うなんて珍しいね」
「ホントに。いつから休みないの?」

 翔くんに聞かれ、ここ最近の休日について思い返してみる。

「……俺、11月入ってから休んでない」

 衝撃の事実だ。一週間に一度の休みを貰っていた頃が懐かしい。

「それは……ご愁傷様です」
「リーダーにしちゃ珍しいね。そんだけスケジュールつまってるの」

「俺も、それくらいから休みないなぁ」
「相葉くんも? まぁ、俺も半休くらいしか最近とってないけど」

 みんな口々に自分のことを話し出す。そうだよな。俺だけが忙しいわけじゃない。ここ数年、八月くらいから後半は五人での仕事が多い。ということは、俺の休みがない=みんなも休みがないってことだ。特に個人でレギュラー番組を抱えているメンバーの忙しさは、目が回るようだろう。

「みんな忙しいね」
「有り難いことだけどね」

 返してくれたニノに、眉を下げて笑いかけた。そう。嵐が忙しいのは有り難い。でも、忙しいことで心のバランスが取りにくくなっているのも事実だ。以前はどうやってやり過ごしていたんだろうと考えて、あることに思い当たった。そう言えば、最近絵を描いてないんだ。夏に個展を開き、そこで燃え尽きたかのように絵を描いてないし、粘土も触ってない。番組の企画で物づくりをさせてもらってるから多少緩和できていたのかもしれないが、趣味に没頭する時間が無かったから疲れ果てているに違いない。

「智くん、大丈夫?」

 どっぷり一人の世界に浸かっていた俺を、あいが心配そうに覗き込む。

「俺、絵、描いてないのよ」

 突然の言葉に、一瞬考えを巡らせた彼女はすぐさま俺に問いかける。

「だから、調子出ないの?」
「と思う」

 周りで他のメンバーがなんでもそんな結論になるんだと、呆れたような顔をして話を聞いているけど、原因にたどり着いた俺には気にならない。彼女の言う通り、絵を描いていないことが、きっと一因だ。

「じゃ、絵描こっか」
「うん」

 にっこり笑うあいに思わず頷いたけれど、ここでどうやって描くんだろう。

「唐突だなぁ。何、スケッチ大会でもするの?」
「違うって。どうせならみんなで楽しく描こうよ」

「何だ。あいがモデルになってくれるんじゃないの?」
「それなら張り切って描いちゃうんだけどな」

「ニノ、セクハラー!」

 わいわい言い合っている俺たちを余所に、あいが一冊のスケッチブックと鉛筆をテーブルに置く。

「絵でしりとりしよ」

 その提案に納得する。確かにそれならみんなで描けるし、待ち時間も潰せる。

「面白そう! 順番はどうする?」
「あなた、こういうくだらない遊び、ホント好きだねぇ」

「順番、歳の順でいいんじゃない?」
「ということは、智くん、翔くん、相葉くん、私、ニノ、潤くんの順だね」

 途端にニノと相葉くんが頭を抱える。

「うわー、あいの後とか最悪! 宇宙人と交信しないと分かんないよ」
「それ言ったら、俺だって翔ちゃんの後だよ。芸術的なトトロ描かれても分っかんないよね」

 名前の挙がった二人は心外そうに顔を見合わせた。

「翔くん、二人ともあんなこと言って失礼だよね」
「俺らの絵は前衛的で、時代がついてきてないのかもよ」

 「ねー」と言いながら真面目を装って反論する二人に、他の四人が爆笑する。

「俺らがついていける絵をお願いしますよ」
「それは筆に聞いてもらわないと」

 と、すっかりノッてしまったあいが返す。俺は笑いながら、スケッチブックを持つと、一番はじめの絵を描き始めた。

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