俺が『マイク』、翔くんがこれまたあいにしか分からない『草』を描き上げ、続く相葉ちゃんが『酒』を描いた。そしてただ今スケッチブックを持つのはあいだ。
「け、け、け、け」
「さて、あいに描けるかな?」
松潤のからかいの言葉も耳に入らないようで、あいは真剣に鉛筆を走らせる。太鼓のような形の上に、線が何本か突き刺さる。……洗面器に溜まる雨?
分かった? というように俺を見上げるあいに、首を振ってまだ分からないと答える。すると彼女は太鼓の上に、逆三角形のものをいくつか描いて、中に点々を入れた。あ! もしかして……。
「ケーキ?」
俺が答えると突然楽屋の電気が消えた。その暗さに驚いて辺りを見回すと、後ろのドアの方が明るくなった。
「「「「「ハッピーバースデー!!」」」」」
みんなの声が響いてやっと理解した。そうか、今日は俺の誕生日だ。
翔くんに促されてケーキのろうそくを消す。ゆらゆらと揺れる炎の向こうで、あいが嬉しそうに笑っていた。
「いやー、焦ったよ。まさかあいに『け』がいくなんて」
「リーダーに伝わるかどうか心配で心配で……」
二人にやいやい言われて、頬を膨らませるあい。
「智くんは、ちゃんと分かってくれたもんねー!」
「あいの絵、すぐ分かったの?」
あいが期待するような目で見てくるけれど、嘘のつけない俺は咄嗟に首を横に振ってしまった。だから俺の答えを見て項垂れる彼女の頭を撫でておく。
「みんな、ありがと」
メンバーの顔を見ながらお礼を告げる。今年も終わりに近づき、忙しい最中にこうしてお祝いしていくれようとする気持ちがとても嬉しい。
「企画、演出あいだからね」
「そうそう。俺らはそれに乗っただけ」
「とんでもない。みんなの協力があったからこそです!」
満面の笑みを浮かべる彼女の左手を取る。お礼の気持ちを込めて、手首に一つキスを落とした。
「ちょっと智くん!」
「何なのリーダー、突然キザなことして」
「お礼にしてはやりすぎだなぁ」
「祝って貰った喜びが溢れちゃったんじゃね?」
口々に俺への不満を言うみんなを受け流し、未だ繋がれたままの手に視線を落とす。彼女はこの小さな手で、どれくらいの人に笑顔を届けているのだろう。
「あい、ありがと。これからもよろしくね」
顔を覗き込むと、真っ赤に染まった頬。それでも俺の言葉に君は笑顔を返してくれる。その笑顔、たまらなく愛おしい。
「こっちこそ、これからもお願いします。そして、お誕生日おめでとう」
ふわりと微笑む彼女を脳内のキャンバスに描く。歳を重ねてあいのこんな顔が見られるならば、今年はとても良い一年になりそうだ。
願わくば、これからの誕生日も一緒に過ごせますように。
手首へのキスにこめられた意味は欲望。だから、きっと叶えてみせる。
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