何度か練習した後、「じゃあ仕上げで通してみるか」と言う翔ちゃんの言葉で俺の背筋が伸びた。『WISH』の後、俺の曲振りで歌い出すことになったからだ。

「それではここでもう一曲。クリスマスの魔法にかかっちゃってください」

 その声を合図に、リーダーとあいが視線を合わせた。ゆっくりと息を吸うと歌い始める。

We wish you a merry Christmas,We wish you a merry Christmas,

 ゆるやかなメロディーに乗せるように、俺たちも歌い出す。

We wish you a merry Christmas,And a happy New Year.

 お互いの息遣いを感じながらしっとりと。

Good tidings we bring To you and your kin;,

We wish you a merry Christmas,And a happy New Year.

 最後はスローテンポになるよう、呼吸を合わせて調節する。リーダーの手に合わせて歌い終えた。やり終えた満足感に俺が浸っていたその時。

「せーの!」

 これまでの様子とは打って変わって、元気いっぱいにあいがかけ声をかけた。

Happy birthday to you, Happy birthday to you,

 呆気にとられる俺を嬉しそうに見ながら歌い上げるメンバー。

Happy birthday, dear まーくん, Happy birthday to you.

 まーくんをやけに強調するニノも、最後のto youにビブラートを効かせてくるリーダーも、ちょっと照れくさそうに笑う松潤も、温かい笑顔で見守ってくれる翔ちゃんも、何よりも嬉しそうに拍手し続けるあいも、全てが有り難くて言葉が出なかった。

「相葉くん、誕生日おめでとう!!」

 この声に、クラッカーがパンパンと鳴り響く。咄嗟に時計に目を遣ると〇時を少し回ったところだ。そこから察すると、翔ちゃんが仕上げようかと言ったのも、全てがタイミングを図っていたのだろうと思い至った。

 運ばれてきたケーキについたろうそくを有り難く吹き消す。ろうそくの灯りの向こうで、笑顔のあいがゆらりと揺れて見えた。

「みんなありがとう! マジですっげぇ嬉しい!!」

 心からの感謝を伝える。大好きなメンバーの笑顔に囲まれた誕生日。こんな幸せなことなんて滅多にないって、心から言える。

「喜んでもらえた? これ、あいが考えたんだぜ」

 松潤の暴露に恥ずかしそうな顔をするあい。ありがとうを伝えたくて、乱暴に頭をくしゃりと撫でた。

「え、じゃあコンサートの演出の件は?」

 途端に不安になってみんなに尋ねる。もしかして今までのことは全部嘘なの?

「あれも本当。明日はさっき練習した流れで行くからね」
「嘘なら、すげぇ壮大なドッキリじゃん」

 二人の返事に安堵した。みんなで練習した美しいクリスマスソング、ファンの人にも聞いてもらいたいから。

「世間はクリスマス・イブかもしれないけど、俺たちにとって、24日はまず相葉ちゃんの誕生日だから」

 目を細くして笑うリーダーの言葉が心に響いて、思わず抱きつく。「よしよし」と背中を撫でてくれる手はとても優しくて、俺の涙腺を刺激した。

「翔ちゃんもありがとー!」
 続いて翔ちゃんに抱きつくと、「おめでと」と力強く抱き返される。

「ニノちゃーん!」
 飛びついた拍子によろけたニノをガシッと抱きしめた。「全く感激屋さんなんだから」と口では言いながらぽんぽんと背中を叩く手が嬉しかった。

「松潤、サンキュー!」
 ギュッと抱きつくと、「喜んでくれたなら何より」と抱擁される。涙脆い松潤の瞳が潤んでること、さっき気づいたよ?

「あい、ありがとっ! 好きだよー!!」
 愛しい温もりを腕の中に閉じ込める。「相葉くん、お誕生日おめでとう」と耳元で囁かれて、胸が熱くなった。これまた感激屋さんのあいの目元に、キラリと光る涙。たまらず瞼に口づけてそれを吸い取った。

「ちょっと相葉さん、聞き捨てならないし、その行動はどうかと思うよ?」
「抜け駆け禁止」
「嬉しすぎてたがが外れちゃってるなぁ」
「早くあいから離れなさい!」

 口々に俺への不満をぶつけてくるけれど、そんなの構わない。俺のことを思って、こうやって計画を立ててくれるあいが好きでたまらないのだから。

「あい、本当にありがとう。これからも一緒にいようね」

 抱きしめた腕を少し緩めて顔を覗き込む。恥ずかしそうにしながらも、目を合わせて頷いてくれた彼女。何度でも何度でも伝えたいありがとう。どうか伝わりますようにと願いを込めて、もう瞼にキスを落とした。


 願わくば、これからの誕生日も一緒に過ごせますように。


 瞼へのキスにこめられた意味は憧れ。君の隣で過ごす未来へ強烈に憧れていること、君は知らなくていい。

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