あっという間に時は流れて12月23日。東京公演初日が無事終わり、松潤の提案通りみんなでホテルの一室に集まっている。コンサートの演出を手がける松潤主導で、明日変更するコーナーについて話し合いの真っ最中だ。
「ということで、あいの意見でMC前を変更したいと思うんだけどどうかな?」
「クリスマス仕様ってことでしょ? いいんじゃない」
翔ちゃんの言葉に、みんな一斉に頷く。それを見たあいが安心したように息をはいた。
「どうせならクリスマスっぽい曲入れたいね」
「やっぱり『WISH』じゃない?」
ニノの意見に俺も賛成する。嵐でクリスマスソングと言えば『WISH』だと思う。ニノのソロ曲『メリークリスマス』と言う手もあるけれど、それは本人が嫌がるだろうから。
「それでいい?」
松潤がぐるりとみんなの顔を見回す。意見がないと言うことは、満場一致で決まりだ。
「じゃあMC前に『WISH』入れるとして。終了時刻はそう延ばせないから、挨拶気持ち短めに切り上げてください。後は、MC前の一曲を『WISH』と差し替えで」
言いながらセットリストの一曲を松潤が指差した。一曲入れ替えると流れが変わる。俺は間違えのないようにそれを頭にたたき込んだ。
「踊りはいつも通り。詳しい流れは明日リハでやるから。照明とかはクリスマスっぽくなるように、スタッフさんと相談しておいたから大丈夫」
「もう一つだけいい?」
スッと挙手したあいが話し出す。リーダーが視線で続きを促した。
「『WISH』の後、短いクリスマス曲入れようよ。『We wish you a merry Christmas』とか」
「それってアカペラでもいける?」
松潤が考えているのは、バンドメンバーの負担だろう。何度か演奏したことのある『WISH』ならともかく、初めての曲を突然お願いするのは気がひける。
「いけるよ、ねぇ、智くん?」
あいはリーダーに呼びかけると、指でリズムを取りだした。そしてリーダーと二人、目と目を合わせて歌い出す。
「「We wish you a merry Christmas,We wish you a merry Christmas,」」
二人の透き通った声が、まるで賛美歌のように響き渡り思わず聞き惚れてしまう。
「これは……」
翔ちゃんが息をひそめた。
「「We wish you a merry Christmas,And a happy New Year.」」
ワンフレーズを歌い終えたあいとリーダーが、俺たちの方を見つめる。
「あなたたち、いつの間に練習したのさ」
嫉妬したように言うニノだけど、その歌声の美しさを感じているからこその言葉だと分かった。
「えっと、休憩中とか?」
「さっきもしたよね?」
何でもないことのように言ってのけるのは、声を合わせて歌う機会の多い二人だからだろう。
「アカペラで十分だよ。ってかむしろアカペラがいい!」
興奮気味に話す翔ちゃんに賛成する。
「俺もそう思う。メインを二人で、サビはみんなで歌うか」
松潤の言葉で明日の流れが決定し、俺たちは歌練習に入った。
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