そして番組も反省会も終えて深夜一時過ぎ。充実感と疲労感を引き連れて楽屋へ戻る。生放送の緊張感はいつまで経っても慣れない。
「翔くん、お疲れ様」
ドアを開けると予想しなかった声が俺を出迎える。
「え? 何であいいんの?」
動揺を隠せない俺に彼女はくすりと笑った
「最後の仕事がしやがれの打ち合わせだったから、翔くん終わるの待ってたんだ」
そう言う彼女の手に握られているのは、六色に彩られたスマートフォン。もしやと思って、自分のをチェックする。
「翔ちゃん、今日もナイスなイチメンでした!」
「噛まないところがさすが翔くん」
「雪の日の滑らない歩き方、参考にします」
「今日のネクタイも格好良かったよ」
「今日も一日お疲れ様」
仲間たちからのメッセージに、顔の筋肉が解れるのを感じた。
「日付は変わっちゃったけど、最後にもう一回言いたかったから」
あいが静かに立ち上がり、俺の側で止まった。
「翔くん。誕生日、おめでとう」
その笑顔に少し鼓動が高まるのを感じて、いつもより歯止めが利かなくなった自覚はある。彼女を抱き寄せると、ふわりと香るあいの匂いに胸が熱くなった。こみ上げる思いのままに、彼女の髪へ口づけを落とす。
「あい、ありがとう。側にいれること、ホントに幸せだよ」
腕の中で小さく頷く彼女の頭をゆるりと撫で、少し強く抱きしめた。身を委ねてくれるあいに愛しさが募る。この気持ちを何と表せばいいのだろう。
願わくば、これからの誕生日も一緒に過ごせますように。
髪の毛へのキスにこめられた意味は思慕。俺が君のことを愛しくてたまらないこと、君は知らなくていい。
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