まっすぐみつめて
title by 確かに恋だった



 歌番組の入り時刻より早くテレビ局に入る。翔くんが示してくれた共演者の方への挨拶のためだ。もちろん毎回事前の挨拶は欠かさないが、今回は訳が違う。この番組は私たちのための番組ではない。アーティストの方が楽曲を発表する場だ。そこで私的なことを公表しようとしているのだから、いつもよりも言葉を尽くして挨拶したいと思う。

 私とニノが二人で挨拶すると主張したにも関わらず、みんな一緒に行くと言ってくれた。個人的なことに巻き込んで申し訳ないと思うけれど、「これは嵐にとって必要だから。」と譲らなかった。そして6人で楽屋を回る。詳しい内容は伏せたけれど、自分たちの持ち時間で話すこと、迷惑をかけてしまうことへの謝罪などを伝える。
 反応は様々で、持ち時間ならご自由にどうぞという方や、喋るのが苦手だから、自分の分の時間も使って欲しいと言う方もいらっしゃった。もちろん露骨に嫌な顔をする方もいらっしゃったけど、当然の反応だと思う。それでも、智くんが、翔くんが、相葉くんが、潤くんが、私たちと一緒に頭を下げてくれた。

 最後に司会でお世話になるタモリさんの楽屋へ行く。ノックをするとすぐに入室の許可が下りた。

「失礼します。」

「おぉ、こんばんは。今日はよろしく。」

 テレビで見るのと変わらないあの独特のテンション。高くもなく低くもなく、常に同じ調子が大御所の貫禄を感じさせる。

よろしくお願いします。

 一斉に頭を下げた私たちに、苦笑しながら声をかけてくれる。

「社長から連絡あったよ。しかし、生放送で発表するなんて、バカだなぁ。」

 その声が世話のかかる子どもに向けられているようで、肩を竦める。

「不器用だけど、俺、そういうの嫌いじゃないよ。」

 サングラス越しにニヤッと笑ってくれたのが分かった。これはきっとタモリさんなりのエールだ。

「ありがとうございます。」

 お辞儀をして見つめ返す。

「どういう返しなのか、楽しみにしとくから。」

 言葉とは裏腹に、優しい口調で励まされた。


「さぁ、本番だな。」

 潤くんの声でスイッチが入る。一番の目的は、最高のパフォーマンスを届けること。そして見てくださる方々に誠実であること。
 目を閉じて集中する。新曲が体を駆け巡り、脳内で振り付けが再生された。歌うみんなの中での立ち位置を確認する。

「いくか。」

 智くんの合図でスタンバイ位置へ移動する。オープニング曲が流れ、そろそろ出番だ。と、右手が一瞬だけ和の手に包まれた。包み込むような眼差しを送られ、彼をまっすぐみつめて小さく頷いた。


 そして、いよいよ私たちのコーナー。アナウンサーの方から今日の質問が読み上げられる。

『では、嵐さんへのMQです。最近、ニノちゃんとあいちゃんの間の空気が甘い時がある気がするのですが、付き合ってるんですか? とのことですが……。』

 戸惑いを隠せない様子のアナウンサーの方とは対照的に、普段通りのタモリさん。

「いや、なかなかの質問が来てるけど、嵐どうなの?」

「付き合ってます。」
「いや、あなたが答えるの? 笑」

 即答する智くんに、会場の空気が柔らかくなる。笑いを堪えきれず吹き出した翔くんとタモリさん。

「リーダーに聞いてないから。笑」
「で、どうなの、ニノ。付き合ってんの?」

 軌道修正しながらも、重い雰囲気にならないよう話を振ってくれる、潤くんと相葉くん。

「あ、はい。付き合ってます。」

 左手で前髪をかき上げ、はっきりと言い切った和。

「認めちゃうんだ。生放送だけど大丈夫?」

 タモリさんに問われ、和と二人で大きく頷く。

「はい。せっかく下さった質問ですし、きちんとお答えします。」

「じゃあ聞いちゃおうっかな。二人はいつから付き合ってんの?」

「大体二年くらい前からですかね。」

「へぇー、よく今までバレなかったね。」

「そりゃ、鉄壁のガード張ってましたから。笑」

 そう言いながら、バリアを張る真似をする和に、みんなくすくす笑う。

「でも、今回ファンの方にはバレてますけど。」
「そこはもう、我々のことをよく見てくださっているからとしか言いようがない。」

「ホント有り難いですよね。」
「これからも、こうして観察していただければ。笑」

「今後とも嵐をよろしくお願いします。」

お願いします。

 心からの感謝と謝罪を胸に頭を下げた。

『それでは、嵐の皆さんにはスタンバイをお願いします。』

 その言葉に私たちは席を立った。

 CMの間にマイクの音量や立ち位置などの最終チェックを行う。軽く髪を直してくれたヘアメイクさんに、「応援するから。」と小声で告げられる。お礼を言うと笑顔が返ってきて胸が熱くなった。ここにも見守ってくれる人がいる。それを力に変えよう。
 6人でいつものように円陣を組む。みんなで顔を見合わせ、手を重ねた。

「最高のパフォーマンスを。」

 智くんの声に重ねた手を小さく下げる。たくさんの言葉はいらない。みんなと合わせた目と目がそう言っていた。

 CMが終わり、曲紹介。

『それでは歌っていただきましょう。嵐でLove so sweet』

 同時にイントロが流れる。そこからは無我夢中だった。テレビの前のファンの方、私たちに携わってくださるスタッフさん、そしてこれから対応に追われ、迷惑をかけるであろう社長を始めとした事務所の皆さん。たくさんの人の顔を思い浮かべながら歌い、踊る。
 そして湧き上がるのは歌が好き、踊りが好き、嵐が好きだという思い。知らず知らずのうちに笑顔になる。カメラをまっすぐみつめた。どうかこの思いが伝わりますように。

「伝えきれぬ愛しさは 花になって 街に降って」

 潤くんのソロが終わり、最後のサビ。
 一列に並び、みんなで歌い上げる。

光ってもっと 最高のLady きっとそっと

思い届く

信じることがすべて

明けない夜はないよ

信じることがすべて

Love so sweet

 最後のLoveのところで、和が人差し指を私へ向けてくる。その視線がとても甘くて、笑顔が弾けた。


 そしてエンディング。

「いやー、嵐、良かったよ。」

ありがとうございました!

「俺にもやってよ、バキューンって。」
「いやいやいや。何を仰るんですか、タモリさん。」

 見られてないと思っていたのか、少し焦る和を楽しそうにからかうタモリさん。

「次来てくれるのが楽しみだなぁ。」
「私たちも楽しみにしています!」

『では、また来週。』

 こうして生放送が終了した。私たちは共演者の方々へ挨拶に回る。吃驚したよ、お疲れ様と労って下さる方、背中をバシバシ叩きながら、最高だったよーと言って下さる方。最初に嫌な顔をされた方も、「パフォーマンスは良かったわ。」と仰って下さった。迷惑をかけたにも関わらず、寛大な対応の皆さんにお礼を伝える。
 そして楽屋へと戻るタモリさんを、全員で頭を下げて見送った。


 楽屋へ戻ると、対応に追われる事務所のスタッフの姿。これから迷惑をかけるなと申し訳なく思ってたら、後ろから頭を軽く叩かれた。

「お疲れさん。よくやった。これからは俺たちの仕事だ。気にするな。」

 元さんがそう言って、ニヤリと笑う。

「お世話になります。」
「二宮がそう丁寧だとやりにくい。」

 元さんなりの励ましに、くすりと笑みが零れた。

「ニノ、あい、お疲れ!」
 肩を組んでくる相葉くんの背中に腕を回して、お礼を伝える。

「めっちゃいい笑顔だったじゃん。」
 頭を撫でてくれる潤くんに、笑顔を返す。

「楽しそうに踊ってたね。」
 片手を上げて待つ翔くんには、ハイタッチを。

「よくできました!」
 ゆるりと抱きしめた智くんの胸に顔を寄せて、ありがとうと呟いた。

「よし、お前ら、これから忙しくなるぞ。とりあえず速やかに家へ帰れ。送るから、車に乗れ。」

 きっとマスコミが殺到するはず。衣装から着替えると元さんの指示に従う。

「二宮とあいは一緒にいろ。二宮の家でいいだろう。これからの対応については連絡するから待っておけ。」

 頷いて荷物を手に持ち、移動した。


 震えそうになる手は、隣できつく握られる。

 竦み上がりそうな気持ちは、分け合えばいい。

 私たちは、ただ、まっすぐみつめて伝えるだけ。

 貴方への想いを 信じることがすべてだ。

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