その反応は反則でしょ
title by Catch sight of



「あー、疲れた」

 家に入るなり、鞄も置かずにソファーへ倒れ込んだあい。無理もない。今日は新しい振り付けを覚える日で、普段よりも運動量が多かった。それに加え、彼女はリーダーと一緒に、他のダンスの振り付けもしていたのだ。単純に考えて、俺の三倍は踊っているだろう。

「無茶しすぎ。歳考えなよ」

 心配が悪態として出てしまう。一生懸命取り組むのはあいのいいところだけど、限度を考えないのはいただけない。

「踊ってたら楽しくなっちゃって……。心配かけてごめんね」

 本心を汲み取ってくれた彼女。踊りが好きなのは昔から。踊っているあいは、まるで羽でも生えているかのように軽やかに動く。しなやかさは見慣れているはずの俺たちでも、時々目を奪われてしまうのだ。

「ほら、そこに寝転がって。マッサージしてあげるから」

 顎でラグの上を指し示す。よっぽど疲れているのだろう。緩慢な動作で、あいがそこへ横たわった。

「どこが一番辛いの?」
「えーっと、背中かなぁ」

 あいの上に跨り、両手で背中を解す。リズム良く叩いたり、力を入れて撫でているうちに、「ふぅー」とか「あー」とか言う声が聞こえてきた。

「ちょっと、おっさん臭い」
「だって気持ちいいんだもん。あー」

 そんな会話をしながらマッサージを続ける。と、ふと右手が脇腹に当たった。

「ちょっと、そこくすぐったい!」

 体を捩るあいが可愛くて、もうちょっと悪戯したくなった。

「そういえば、ここ弱かったね。ふふふ」

 両手で脇腹をくすぐる。我慢できなくなったあいが、体を捻って逃げようとした。

「ちょっとやめてよ」
「どうしよっかな」

 目が合うと、何かを企むような顔をした。ヤバイ。この顔をするときは、何か良からぬ事を考えているに違いない。

「そんなこと言うなら、仕返しだ!」

 言い終わるや否や、あいは俺の首をくすぐり始める。特に後ろから触られると、背筋がゾワッとなって身震いしてしまうのだ。

「う! そっちがその気なら、俺だって本気出しちゃうよ」

 そこからはもう、くすぐり合戦。お互いのくすぐったいところを探して、体中を這い回る。二人の笑う声と、制止する声が部屋に響いた。

「きゃっ! そこはダメ!」

 これまでと違う声色が耳に届く。それはとても色っぽく俺の脳を直撃した。

「……感じちゃった?」

 自分でも声に欲が含まれたのが分かった。でも、スイッチ入っちゃったからもう止められないよ。

「そんな訳ないで」

 最後まで言わさずに唇を奪う。さっきまでのじゃれ合いで温まった体。唇まで熱を持っているようで、触れると火傷するかと思った。
 もっともっと熱を感じたくなって、舌を差し込んで求める。咥内を貪るように、彼女を求めた。

 離れがたさを押し込めて、唇を遠ざける。潤んだ目と腫れぼったい唇で俺を見上げるあい。


「その反応は反則でしょ」


 吐息混じりに耳元で囁く。そのまま耳に、首筋に、鎖骨へ唇を落とす。跳ねる体が愛しくて、俺の全てで彼女を高みへ導いた。


(あー、今日の崖登り、肩と腕が疲れたわ)
(揉んであげようか?)
(え? 翔ちゃん、いいの?)
(あいはどこも疲れてない?)
(つ、疲れてない!)
(何だよ、その反応。笑)
(いかがわしいマッサージでもされたんじゃね?)
(智くん!!)
(あい、反応しちゃダメじゃん……)

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