瞼に描く未来



 今日は久しぶりに、二人揃っての休日だ。珍しく晴天で、しかも日曜日と重なった。世間が休みの時は仕事をしている俺たちにとって、こんなことは余りない。だからと言って遠出をするわけでもなく、近所のスーパーへ買い物に行こうと、あいと二人で歩いていた。

「ほら、見て。運動会やってる」
「ホントだ。幼稚園みたいだね」

 わいわいと賑やかな声のする方を見ると、ピンクや黄色の帽子をかぶった小さい子たちが、必死に走っている。
 「よーいどん!」のかけ声の前に走り出しちゃう子、お母さんの方に手を振りながら走って、どんどんゴールから離れて行っちゃう子、後ろの子を振り返りながら走る子など様々だ。でもどの子も可愛くて、自然と目が細まるのを感じた。

「可愛いね。みんな一生懸命だ」
「ね。ちょこちょこしてて、おもちゃみたい」

 そう表現した俺に、「和っぽい言い方」と笑い出すあい。でもその瞳は、園庭を走る子どもたちに釘付けだ。嬉しそうに笑う子を見て、頬を緩め、転んで泣き出しそうな子を見て眉を下げる。コロコロと変わる表情が愛しくて、いつまでも見ていられると思った。

「お家の人の熱の入りようもすごいよ」

 見ると、走る子どもをビデオにおさめようと必死になる余り、自分が転んでしまったお父さんの姿。

「子どもの晴れ舞台だもんね。そりゃ必死になるよ」
「和もそうなるのかな?」

 ニコッと笑いながら問いかける彼女。当たり前のように告げられた未来に、歓喜が押し寄せる。

「なるね。可愛いんだろうなぁ。あいの子ども」
「何言ってんの。和の子でもあるでしょ?」

「いや、俺に似たら可愛くないかも」
「そんなことない。きっと笑顔にみんなメロメロだよ」

 なんて話しながら指を絡めた。結婚することは認めて貰った俺たちだけど、次の段階、つまり子育てにも慎重にならざるを得ない。仕事のタイミングを見極めないとグループに迷惑がかかるから。
 それでも、こうやって願いを巡らすことは思いの外楽しくて、心が弾んだ。

 幸せな空間に後ろ髪を引かれながら、本来の目的地であるスーパーへ足を向ける。進行方向の道路に、手を繋いだ俺たちの影が映し出された。
 ふと目を閉じた瞬間、瞼に浮かんだ光景。それは小さな子を真ん中に挟んで歩く、俺たち。すぐには叶わなくても、きっとそう遠くない未来だ。

「幸せだね」

 言葉がふと口をついて零れた。それほど大きくなかったそれだけど、隣にいたあいには届いたようで。

「和が隣にいるからだよ」

 微笑んだ彼女が、どうしようもなく大切で、絡めた指に力を込めた。


 目を閉じて願う、君と歩く道。

 瞼に描く未来は、煌めいている。


(リーダー、相談があるんだけど)
(ん? 何?)
(俺、子ども欲しいんだよね)
(ぶはっ! そ、それは智くんに言ってもダメじゃない?)
(一応、リーダーに許可とっとかないと、と思ってね)
(で、リーダー、どうなんすか?)
(いいんじゃない。あいの子なら、絶対可愛いじゃん)
(だね。いやー、楽しみ! そんな予定あんの?)
(まだだけど。お望みとあればいつでも)
(……ちゃんとあいの許可とれよ?)
(事後承諾もありだよね?)
(ニノの笑顔が黒い……。あい、健闘を祈る……)

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