なみだは一筋だけ
title by 確かに恋だった
□ side M
「ニノ、悪いな。ちょっとだけ言っておきたいことがあって。」
「いや。俺も潤くんと、ちゃんと話したかったから。」
俺の目をしっかりと見つめて返事をするニノ。その瞳の力強さに誰かと似たものを感じて、少し胸が軋んだ。
「昨日、あいの家に行った。」
少しだけ見開いた目が、ニノの動揺を伝える。
「伝えたよ。俺の気持ち。ありがとうって言ってくれた。」
しっかりと届くように、ゆっくりと話す。どうか声が震えないように、それだけ気を付けて。
「いつからかなんて分からない。気付いたら好きだったんだ。」
下を向いていると涙が零れそうになるから、目だけ上を向けて続けた。
「きっと、これからもずっとずっと好きだよ。でも、それは自分のものにしたいわけじゃない。」
こみ上げてくる気持ちは止められない。でも、君には心から幸せになって欲しいんだ。
「大切なんだ。自分の想いよりも。だから。」
どうか、俺の想いを繋いで欲しい。そして、あいの笑顔を守って。
「あいを幸せにして。」
なみだが一筋だけ流れた。
「約束する。」
俺の肩を抱きながら、低い声で答えたニノ。背中に回された手は、俺よりも小さいはずなのに、何故か大きく感じた。
「潤くんの分も、あいを幸せにするから。」
体を離し、俺の目を見据えると、少し笑ってこう言った。
「だから近くで見張ってて。」
ニノらしい言葉に少しだけ笑ってしまう。これはきっと、これからも嵐として、共に歩いて行くという宣言なのだろう。
そうだな。俺たちは運命共同体だから。いつまでも一番近くで見ててやるよ。
「覚悟しろよ。」
「お手柔らかに。」
どちらとも無く、握手を交わす。それだけで言葉にしなくてもわかり合える気がした。
別れ際の駐車場。もう一つだけ伝えなくちゃいけないことがある。
「ニノ、も一個だけお願い。」
俺の声に、車へ進む足を止めた。
「ちゃんと、あいの口から、好きだって言わせてやって。」
振り返ったニノの顔は少し泣きそうで、きっと俺もこんな顔をしているんだろうなと思った。
「俺が、ニノのこと好きなんだろって聞いても言わないし。」
だらんと下げられた手が、痛いくらい握りしめられる。
「きっと色々ぐるぐる考えて、今まで言えなかっただろうから。」
俺は意識的に笑顔を作る。大好きな二人のために。
「だから、ちゃんと言わせてやってね。」
そう言い残して、自分の車の方へ足を向ける。
「潤くん、ありがとう!」
後ろからかけられた声に、顔だけで振り返る。
「大好きだよ。」
伝える相手が違うだろと思いながら、口元に笑みが浮かぶ。俺だって、大好きだよ。
「じゃ、また明日。」
手を挙げて、足を進める。
流したなみだは一筋だけ。
それは止められなかった、君への想い。
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