想いの強さが胸を打つ



□ side N

「話があるんだけど、ちょっとだけいいかな。」

 収録の終わった楽屋。帰ろうとするみんなを引き留める。俺の言葉にビクリとしたあいを、目だけでソファーに座るよう促す。

「どうしたの?」
 何時になく真剣な俺の様子に、相葉さんもあいの向かいに腰掛ける。

「いいけど、何だろ?」
 張り詰めた空気を感じたのか、不安そうな翔ちゃんも、相葉さんの隣に座った。

 無言であいの隣に腰を下ろしたリーダーと、その横に座った潤くん。
 みんなが座るのを確認した俺は、翔ちゃんの隣に座った。

 向かい側にいる潤くんが、一時も目を逸らさずに見つめてくる。それが俺の気持ちを試されているようで、背筋が伸びた。

「ニノ、何?」

 リーダーに促され、深く息を吸った。冷たい空気が全身を巡るのを感じた後、俺は口を開いた。

「あいが好きなんだ。付き合いたいと思ってる。」

 ひゅっと息を呑む音が相葉さんの方から聞こえた。目だけでみんなの様子を探る翔ちゃんに、ピクリとも動かない潤くん。あいは両手を強く握りしめている。
 驚くほどの静寂。時計の音だけが響いていた。

「俺たちは、6人で嵐だって分かってるよね。」

 静けさを破った翔ちゃんの声。先の先まで考えているのかという無言のプレッシャー。仕事として取り組んでいる以上、グループに迷惑をかけるわけにはいかない。
 もし、俺とあいが別れるようなことになったら、確実に悪い結果しか生まないのだから。

「分かってる。先のことも考えてる。」

 確かな未来なんてないけれど、必ず手繰り寄せてみせるよ。

「事務所には話した?」

 心配そうな顔を向ける相葉さん。色々言いたいことはあるだろうに、まず一番に心配してくれちゃう相葉さんに、いつも救われる。

「この後話そうと思ってる。」

 容易いことではないと分かっていても、もう諦められないんだよ。

「松潤はどうなの。」

 俺の目を見据えたまま、リーダーが問いかける。潤くんはリーダーの顔をちらりと見ると、すぐ俺に視線を戻した。

「泣かせたら許さない。」

 まっすぐ届いた想いの強さが胸を打つ。潤くんは、あいのことをこんなにも想ってる。

「分かってる。ずっと側で見てて。」

 約束するから。潤くんの想いと一緒に、あいを守るから。

「そっか。」

 そう言うと、リーダーがあいの耳元で何か囁いた。小さな声は聞こえなかったけれど、聞いたあいが、くしゃりとうれし泣きの顔をしたから、大丈夫だろう。

「俺ら先に帰ってるよ。松潤、ニノと話したいことあるんでしょ。」
「あいは、ちゃんと送り届けるから。」

 翔ちゃんと相葉さんが席を立つ。荷物を持つと、翔ちゃんが座るあいの腕を支えて、引っ張り上げた。

「んじゃ、お先に。」

 後を追ったリーダーが振り返る。そしていつものようにへにゃりと笑った。

「ニノ、良かったね。」

 その声に認めてもらえたんだと、安堵の気持ちが広がる。と、ドアを出ようとしたあいの足が止まった。

「あい」

 席を立った潤くんがあいの手を取る。愛おしそうに指を絡めると極上の笑顔を見せた。

「お前が幸せだと、俺も幸せ。だから笑っててね。」

 そう言うと、名残惜しそうに指を離していく。最後の一本が離れるときの顔が、胸に痛くて、俺は脳裏に刻みつけた。

「ありがとう。」

 応えたあいは、ちゃんと笑顔で。潤んだ瞳は隠せなかったけど、きっと精一杯の感謝を伝えたのだろう。
 絡み合った視線を解き、潤くんは俺に向き直る。あいはドアから出る。

 その光景が、何だか美しいドラマみたいで、胸を打った。 

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