君の涙にキスをした
title by 確かに恋だった
□ side N
潤くんが車を発進させたのを、ただ立ち尽くしたまま見送った。何度か点滅したブレーキランプが胸に痛くて、涙が出そうになった。目をしばたたかせて、それを奥へと引っ込める。よし、と小さく口元で呟いて、自分の車に乗り込んだ。
向かうのはあいの家。車に乗ると同時に確認したスマホには、相葉さんからのメッセージ。
「あい、家に送ったから。行ってあげて。」
彼らはきっと潤くんの支えになってくれるだろう。だとしたら、みんなはあいを俺に託してくれたに違いない。いつもより少しだけアクセルを踏み込んで、俺は先を急いだ。
人差し指がインターホンを押す。静けさの中で、あいが鍵を開ける音だけが響いた。
「入るよ。」
一言だけ告げると家に上がり込む。目の端で見たあいは目が赤くて、今まで泣いていたであろうことが見て取れた。
「おいで。」
両手を広げると、動こうとしないあいを腕で囲い込む。どうか一人で泣かないで。
「ちゃんと潤くんと話してきた。みんなも認めてくれた。」
静かに流れる君の涙にキスをする。一人で抱えなくていいんだよ。
「あい、好きだ。」
口にした途端、何かが胸からせり上がってくる。これが愛しいという感情なのかもしれない。
「潤くんの想いも、みんなの優しさも、一緒に抱えて歩いて行こう。」
苦しい気持ちを隠して送り出してくれた潤くん。自分の気持ちを押し殺して俺たちのことを気遣ってくれた相葉さん。想いは告げなくても、きっと本気であいのことを好きでいたであろう翔ちゃん。そして、俺には想像も出来ないくらい深い愛で、あいを包み込むリーダー。その一つ一つを胸に刻んで、俺たちは進まなきゃいけないんだ。
「ニノ……。」
腕の中のあいが驚いたように顔を上げる。細い手が俺の頬を撫でた。そこで初めて涙が一筋流れていたことに気付いた。
「これからも色々ある。でも、どんなこともあいと乗り越えていきたい。」
目を合わせて伝える。きっとこの先待ち受けているのは小さくはない壁。それでも君といたくてたまらない。
「大好きだよ。」
真っ赤にした瞳と、真っ赤にした頬。小さく届いた君の想いに、俺の胸は震えた。
「やっと言ったな。」
「やっと言えたの。」
額を合わせて話す。息も届きそうな距離に、通じ合えた喜びを感じる。
「智くんにもね、言われたの。ちゃんとニノに好きって言いなよって。」
リーダー、ありがとう。相葉さん、翔ちゃん、ありがとう。そして潤くん。やっとあいの気持ちを聞くことができたよ。目を閉じて、心の中で繰り返し呟く。本当にありがとう。瞼に浮かぶメンバーに心からの感謝を告げた。
瞳を開けると、俺のことをじっと見つめる愛しい人。吸い寄せられるように、額に口付ける。
そして君が目を閉じたのを合図に、ゆっくりと唇を重ねた。
やっと口にすることができた想いは、たくさんの人に支えられているから。
これからずっと側にいる。
そう誓う証に、君の涙にキスをした。
-fin-
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