上手な嘘の吐き方
title by 花涙
□ side A
誰か教えて欲しい。大きくなりそうな想いには、どうやって蓋をすればいい?
大切で大切でたまらない人が悲しそうな顔をしているときには、どうしたらいいのだろう。
答えの出ない問いかけに、俺は天を仰いだ。
ニノと松潤の様子が違っていることには、しばらく前から気付いていた。それはほんの些細なことで。よくよく考えなくては分からないようなことばかり。それでも俺が察知したのは、同じ人を見てたからとしか言えない。
それはあいに向ける視線だったり、ふと触れたときの態度だったり。他のみんなにも少なからずあったけれど、二人のそれは、やっぱり違った熱情を持っていた。
「諦めるしかないかなぁ。」
一人の部屋で呟く。ニノと松潤。そして俺。3人から一斉に好意を向けられたら、一体あいはどうなるだろう。
想像して身震いした。きっと自分を責めて、彼女から笑顔が消えてしまうだろう。
俺はそんなこと望んでいない。だって俺を惹きつけてやまないのは、君の心からの笑顔なんだから。
向日葵みたいな満面の笑み。夜の空に浮かぶ月のような慈愛に満ちた微笑み。そして、恥ずかしそうに頬を染めた笑い顔。
脳裏に浮かぶ全てが愛おしくて、心がストンと決まった。
あいの笑顔を守るためなら、この気持ちは無かったことにできる。
それに……彼女はきっといつか選ぶだろう。俺の親友とも言える、アイツのことを。
そうなった時、俺は心からおめでとうと言ってあげたい。強がりではなく、本当に心から。
そして俺は恋心を手放すことを決断した。窓から細く月の光が差す夜だった。
決めたからと言ってすぐに恋しい気持ちが無くなるはずはない。それでも少しずつ少しずつ、一滴一滴落ちるように、俺はあいへの想いを変えていった。
上手な嘘の吐き方なんて分からない。でも君のためなら嘘だって吐いてみせる。
あいは大切な仲間で、親友の想い人。
そう思う度に軋む心を、苦笑いで宥めながら切ない日々を過ごした。
そして今日、ニノがみんなの前で告げた。あいを好きだと。ちゃんと付き合いたいと。
正直目眩がした。もう平気になったと思っていたのに。あの夜に、恋心は置いてきた筈なのに。
誰も何も言えなくて、時間だけが過ぎていく。口火を切ったのは翔ちゃん。あぁ、翔ちゃんだってあいのことを想ってるのに、引くつもりなんだね。
翔ちゃんの問いただすような質問にも前を向いて、確かな口調で答えたニノ。
それなら、ニノがそう言うなら。俺は二人の背中を押してみせる。だって二人とも大切だから。
車の中でも泣かないあいを家に送り届ける。ホントは泣きじゃくっていいのに。
目は真っ赤にして、それでも涙を零さないあいの小さな手をやんわり握った。
「ニノを信じて。ニノを想って。」
今こそ嘘を吐くときだ。絶対バレないとびっきりの嘘を。
「ニノとなら、絶対、幸せになれるから。」
ホントは、俺が幸せにしたかった。この手で。でも君が求めてるのはニノの手だから。
彼女の頬を伝った涙を見ないふりして車に戻った。運転席に戻ると、目尻から零れた涙を乱暴にグイッと拭う。
さよなら。俺の大切な恋。
まだまだ胸が痛むことはあるけれど、俺が松潤に言ったから。
「いつか愛になる日が来るよ。」
嘘だって吐き続ければ真実になる。いつかきっと、君を穏やかに愛しく思えるようになる。
だから最後に言わせて。
「あい、好きだよ。」
小さく呟いた告白は、夜空の星だけが聞いていた。
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