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-ナイトメア帝国・ルイーザリ城の一室にて-

「……ってわけで、今回の任務はこういう結果だったよ」

「……ふーん?」

頭に四角いゴーグルをつけた少年、ハヅキがかなり適当な様子で言う。
対する人物は、毛先が青み掛かった空色の髪に、黄色い目の少年。
左側の目を前髪で隠しており、頭には王冠をつけている。
そしてやや豪奢な椅子に座りながらも、彼は少々退屈そうな表情だ。

「ふーんじゃねえよ、報告くらいは真面目に聞きやがれ。ったく……」

その隣に佇む紅に黒髪が混じった髪色の少年は、その灰色の目を呆れたように細めた。

「あはは、退屈だった?」

ハヅキはその様子を特になんとも思っていないのか、はたまたその相手の反応がいつも通りなのか、苦笑いの調子で問う。

「そうだね、だって何の利益もなかったんでしょう?それにその今回のクライアントである、聖來とやらにあげた特効薬の件を合わせれば、どちらかといえば不利益寄り。そりゃあ退屈にもなる。」

王冠をつけた少年は、今回の“取引”が不利益だったことに関して、かなり不服な様子。

「でも好きにしろっつったのはお前だろ?」

黒メッシュの少年は呆れたような様子を正さない。

「……まぁね、あいつの言うことなんて聞きたくなかったし。それに“偽物”の言うことなんて更に聞きたくないしね。
あと、ハヅキにも何か思うところがあったみたいだし?」

王冠の少年は機嫌悪げに答える。

「ははは、お気遣い痛みいるよ。」

苦笑いしたままのハヅキ。

「じゃあなんでそこまで機嫌悪そうなんだよ」

「単にめんどいからさ。あの陰険隈男への報告が。
あいつ不利益にはくっそうるさいからなぁ……」

王冠の少年はかなり荒んだ様子である。
しかし陰険隈男とは一体誰を示しているのか。

「あはは、キミは本当にあの方が嫌いだね」

「当たり前じゃないか、あいつは……」

「まぁそんなキミでも一瞬で興味を示すだろうってことがあったから、よければ土産話と思って聞いてよ。」

長くなりそうだったのか、ハヅキは王冠の少年の発言を遮って、“興味のありそうな話”を提示した。

「……ほー?話してみなよ」

予想通り食いついた王冠の少年。
それに対してニコニコとしながら話し始めるハヅキ。

「実はね、瞬間転送術式(フォワード)を知っている子に出会ったんだよー。」

「……へぇ?今どき珍しいね」

「瞬間転送術式って言えば……今回の洞窟の作戦に使ったアレか?なんかそんなに珍しいのかよ」

疑問符を浮かべる黒メッシュの少年。

「珍しいも何も、もう何百年も前に廃盤になった術式だからね。元々はこの国の前身、地上から落ちてきたっていう旧エヴィニエス帝国が使用していた術式で、転移術式がメジャーになったこの世界じゃあ、使ってるとこだってない。
……ボク達以外はね。」

「へぇー、そうだったのか、よく知ってるよなぁ、流石は魔術馬鹿」

解説を受け、頷きつつも毒づく黒メッシュの少年。

「今ナチュラルにボクを馬鹿にしたろ」

「いやいや、流石に博士殿は違うなーと思っただけだぜ?」

「……はぁ……お前本当にいつかぶっ飛ばすからな……。
……それにしても、そんな術式を知ってるなんて、どんな奴なの?」

いつの間にやら前のめりな態勢で話を聞いている王冠の少年。

「んー、そうだなぁ、丁度……キミの髪の色を薄めたような色をした髪に蒼い目の、僕達と同い年っぽい子だったよ。
それに魔術の感じとかを見たところだと、かなりの魔力量してるんじゃない?
何と言っても、遁走術式で12人まとめて一人で外に運んでたからね。」

「…………へぇ。」

それを聞いて、王冠の少年の口元が、ニヤリとした笑みに変わった。
実のところ、遁走術式はそう大人数を一挙に脱出させられるほど出力の高い物ではない。
移動出来ても一度に4人までが限界の数字である。
それを12人まとめてともなれば、魔力量、魔術技量も揃わなくては扱いきれず、最悪何人か取りこぼすことになる。
それを、被害無しでやってのける術士がいたのだ。
友人から魔術馬鹿と称される少年が、興味を持たぬわけもない。

「お?興味でも湧いた?」

「まぁね、そいつの魔力の量がどんなものかっていうのは見てみたい。」

「あーあ入っちゃったよ、魔術研究者としてのスイッチが。」

黒メッシュの少年は、面倒くさそうに王冠の少年を見る。
対して王冠の少年はクツクツと笑うと、

「研究するつもりはないよ、ただ、ボクと渡り合える魔力かどうか見たいだけさ。
ま、きっと下位互換くらいが精々だろうけどね?」

と静かに嘲笑った。

「はー……、こりゃあ護衛としても忙しくなりそうだな……。」

「はは、精々頑張って。」

呆れ返りつつも少し楽しそうな黒メッシュの少年に、ハヅキは他人事のようにそう返すのであった。

         ***

-ソフトライム王国・ノースロリエ郊外-

「今日は雪が降るのかしら?」

とある家、とある部屋で、濃灰色の髪の少女が歌うように、笑いながら問う。

「今日は降らない予定だよ」

濃灰色の髪の少年は、長銃の手入れをしながら答える。

「明日、雨は降るのかしら?」

少女は相変わらず、歌うように笑いながらくるくる回っている。

「明日は雪になるかもね。」

少年は、長銃を磨いている。

「あの子は元気にしてるかしら?」

少女の問いに、少年の長銃を磨く手が止まった。

「……さぁ、どうだろうね。」

「駄目だよソレール、そんな不機嫌な顔しないで?」

不機嫌そうに答える少年、ソレールの頬に、少女が眉を寄せながら手を添える。

「ああ、そうそう、そうだった、笑わなくてはね。リュネール。」

ソレールが笑う。
リュネールと呼ばれた少女は満足げに微笑むと、また笑いながらくるくると踊り出した。

あはははは、うふふふふ

「「笑顔で送ってあげなくちゃ、死は救いなのだから」」

部屋に残響する笑い声。
彼女達の足元には、鮮血の紅。
口を塞がれた家主は、その教示を否定できぬまま……。

今夜も銃声が鳴り響く……。








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