1


−王都セイファード・ギルド「光明の輝き」本部兼孤児院−

ギルドを立ち上げたはいいものの、来る依頼はほとんどが小規模な物で、家事手伝いやら何やらの平和なものばかりだった。
…まぁ、平和が一番なんだが…、リュートは"つまんねぇ!!"としょっちゅうぼやいている。
そういや、ギルド立ち上げ当初に、シオンの親がここに文句を言いに来た。

"貴族がギルドの汚い仕事をするだなんて家の恥だ!"とか、"うちのシオンディーヌにそんなことをさせようとするなんて…!!やっぱり此処に預けたのが間違いでしたわ!?"だとか言ってたっけ。
シオンはそれっきり此処に現れてない。
蜜柑が言ってたが、シオン家の警備は厳重で、脱け出せない状況らしい。
因みに今日は雨だ。
それだと言うのにリュートは街の警備と称して喧嘩に行っているし、ハヅキは依頼探しに行っている。
…どうせ何もないだろうに。
   バタンッ!!

…なんだ?
扉がやけに乱暴に開かれたな…。

「シグマっ!!」

ハヅキが血相を変えて飛び込んできた。

「どうした。」

「怪我人っ!!怪我人だよ!!リオールいる!?」
…怪我人…?
こんな雨の日に…、魔物か?

「…待ってろ。」

俺は取り敢えず、リオールを呼んでくることにした。

   * * *

リオールの部屋は二階の一番奥だ。
扉を二度ノックして、開いた。

「リオール、怪我人だと。」

「雨の日に怪我人ですか…、あのとき以来ですね。」

「言うな。思い出したくもねぇ…。」

「そうでしたね…、すみません。」

「…別に。」

そんな会話を済ませ、リオールと下に向かった。

   * * *

「これは…!!」

リオールが真っ先に声をあげた。
床に寝かされた少年は、赤い髪に色白の肌。怪我は、脇腹の辺りと腕にあるらしく、薄緑色の上着に、赤い血が滲んでいる。その他の部分もボロボロだ。
彼はぐったりとしていて、痛がりもしない。

「こいつ、街の入り口で倒れてたんだ。門に寄りかかって。うるせぇ兵士に見つかる前にオレが背負ってきた。」

「…ご苦労、様でした。」

リオールは床に倒れてる少年を直視しながらも、リュートに言った。彼は少年の側に跪く。

「……彼の者の傷を修復せよ。ヒーリングライト。」

リオールが詠唱すると、少年の傷口が塞がった。

「念のため、心臓が動いているかどうかを確認してみましょう。」

彼が少年の胸の辺りに手をかざすと、少年の周りに赤い光が現れ、ゆっくりと波打った。

「…どうやら、命に別状は無さそうですね…。」

リオールはそっと胸を撫で下ろした。

「なぁ、色つきの光が出たってことは、こいつもサージュってことか?」

「…そうなりますね…。」

リュートが訊くとリオールは俯きがちに答えた。

そう、リオールが胸に手をかざすとどんな生物からでも光が現れる。その生物が死んでいれば光は動かないし、そいつが生きていれば光が波を打つ。
稀に色付きの光が出ることがあるが、それはそいつがサージュであることの印のようなものだ。
因みに、光の色によって属性がわかる。緑なら風、瑠璃色なら水。
この少年の場合は赤だったから、焔を操ることができるはずだ。

さらにこの孤児院にいる連中は、皆サージュだ。それ故の家庭事情もあり、それによる家出で保護されたやつもいた。

「…兎に角、この子を空いてる部屋に寝かせましょう。」

リオールの意見に皆賛成した。






.


- 5 -

*前次#


ページ:



[表紙へ]
[storys portalへ]
[別館topへ]
[本館topへ]