静かな歌舞伎町の街に陽光が差す。

いつもだったら朝方になると勝手に目が覚めるのだが、色んな疲れが溜まっていたのか、ぐっすり眠り込んでしまっていた。


「…さん」と誰かを呼ぶ声が聞こえ、目を覚ますと隣の銀さんを揺すって起こそうとしている新八くんがいた。


「……うわぁ!」

朝で頭が回っておらず、漫画のキャラが目の前いることに驚いて間抜けな声が出た。その声に新八くんもビックリして私と距離を取る。そしてようやくこの漫画の主人公、坂田銀時が目覚めた。


「寒……って新八何してんだ?こんなとこで……」


そう言いながら隣に座っている私を見て、キョトンと固まった。この顔は私が誰だか分かってない顔だ。昨日の時点で誰だっけ?って聞いてたもんなぁ。


「銀さんあんた、酔っ払って女の人お持ち帰りして、挙句こんな所で寝てたのかよ」

「いやいや!誤解誤解!俺もこの人知らねーもん!」

「覚えてないとか最低すぎるだろ!!」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


新八くんが銀さんに積極を始めたところで止めに入り、昨日あった出来事を話した。酔っ払いに絡まれ、それを助けてくれたのが銀さんで、その後酔いつぶれたのでここまで運んできて……。
結局そこまで話しても、新八くんから銀さんに対しての「お前最低だな」は変わらなかった。


「そのーなんだ、色々すいませんでした」

「あ、いえ、私こそ助けてもらって、ありがとうございました」

「うちのバカがご迷惑をおかけしました……。さ、銀さん。家に入りますよ」


新八くんは軽く頭を下げたあと、銀さんの肩に腕を回し階段を登り始めた。こんなにアッサリさよならするのかと呆気に取られてしまった。そりゃそうだ。わざわざ知らない人に関わる必要もないし。
でも、私はこの世界にこの人たちくらいしか知ってる人が居なくて。ここでさよならされたら、路頭に迷う末路しかない。

私は立ち上がり、階段を上る2人に向かって叫んだ。


「あのっ、万事屋さんに相談したいことがあるんです!!」



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あの後事情を聞いてもらうために万事屋に招いてもらい、寝起きの神楽ちゃんと定春と対面した。2人も漫画で見た姿と全然変わらず、神楽ちゃんにいたっては可愛すぎて、同じ女として悲しくなった。


「えーっとつまりは、僕たちは漫画のキャラクターで、苗字さんはその漫画の世界に来たと……」

「ほんとアルカ!私ヒロインアルカ!キャッホウゥ!」

「ゲロインの間違いだろ」

「うるさいネ!金欠ゴミ野郎が主人公なんて終わってるアル」


見覚えのあるソファに4人で座り、銀さんたちが漫画のキャラクターであること、その漫画の世界にトリップしてきたことを話した。信じてもらえないだろうなと思ったが、その反対ですぐに受け入れてくれた。


「じゃあなんだ、行き場がなくて困ってるから助けて欲しいってか」

「そんな感じです……」

「それじゃあ、ここに住んだらイイネ!銀ちゃんが面倒見てくれるアル」

「そうですね、あんまり贅沢な暮らしはできないですが、雨風しのげてご飯も食べられますし」

「いやいや、何勝手に話進めてんの!?」


話は今後の住む場所になり、神楽ちゃんが万事屋に一緒に住めばいいと提案した。どこか住み込みで働ける仕事紹介してもらえれば、とは思っていたが、仕事もすぐに見つかるか分からない。しかし人の家に上がり込むのは、申し訳ない気がしてならない。


「それは申し訳ないんで大丈夫です!例えば住み込みで働ける仕事とか紹介してもらえたら……」

「それならここでイイネ、万事屋の掃除炊事するヨロシ」

「確かに、住み込みバイトと同じような感じですね」


うんうん、と話をまとめる神楽ちゃんと新八くん。本当にいいのかなという申し訳ない思いと、1人でやっていけるのかなという不安な思いが湧いて来る。どちらにせよ、家主の銀さんがイエスと言ってくれない限り住むことはできない。

私は、静かに銀さんの方を見た。



「……わーったよ、ここに住みな」

「ほ、本当ですか?」

「行くとこねぇやつを放っておけねぇからな」

「やったネ!!名前に美味しいご飯作ってもらうアル!」

「名前さん、これからよろしくお願いします」

「あ、ありがとうございます!皆さんよろしくお願いします」


お礼を述べるのと同時に立ち上がり、深々と頭を下げた。こうして、万事屋に居候させてもらう事となった。誰かと住むなんて家族以外初めてだったので、迷惑にならないようにいっぱい働こうと心に決めた。




さよなら日常



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