イヴ まとめ
イヴ・プロテティカ(Eve・Protetica)
白銀色の髪と青色の瞳を持つ少女。
相棒である「魔神さん」とともに歴史の裏側で暗躍することになった。
不本意ながら運命のキューピット。
プロテティカ家
伯爵家。王の側近であり、影から国と王を守る仕事人の家系。
表向きは貴族内でも中立公平な立場。どこの家とも必要以上に関わることはなく、
プロテティカ=護りを捩った。あと語感。
時代を跳躍し、歴史を陰から支える家。
Proteticaは補綴(ほてい)の意味もある(ルーマニア語?)
補綴=破れなどを繕いつづること。転じて手を加えて不足などを補い、よくすること。(goo辞書から抜粋)
「歴史を影からあるべき姿へ導き、ときに手を貸し未来へ導く役割」
両親
穏やかな笑みを絶やさない父親・母親
父親は白銀の髪とくすんだ青色の瞳。母親は金髪に
アルベルト=プロテティカ
長男。白銀の髪に青色の瞳。
末っ子である主人公と同じく父の血を濃く継いでいる。
「御役目」も補佐としてだが何度か経験済み。
時期当主だが未婚で婚約者も居ない。ちょっとワケあり。
次男
=プロテティカ
金髪のイケメン。顔は父親似。
次期当主の兄の補佐役。
末妹の秘密も把握済みなこともあり、故意に他の妹達と末妹を会わせないようにしており、上の妹達からは「いじわる」と言われている。
長女
オリヴィア=クレーン
旧姓:プロテティカ
ふわふわとした雰囲気の女性。中々の切れ者。
まだ幼い末妹が『御役目』を引き継ぐことを心配している。
自分が妹のストレス源になってるとは露程も思ってない。
次女
アウロラ=プロテティカ
凛々しくも可憐な次女。末っ子のことを心配している。
矢面に立つ際は凛々しいが、根は明るい。婚約者と近く結婚する予定。
自分が妹のストレス源になってるとは露程も思ってない。(その二)
三男・四男(伝達する役割)
ヘルメス=プロテティカ(兄)
トリス=プロテティカ(弟)
不思議ちゃん系一卵性双生児。
右サイドの髪が長いのが兄、左サイドの髪が長いのが弟。
末妹と一番歳が近いこともあり、よく秘密を共有している間柄。「魔人さん」について裏で調べているとかいないとか。
三女(末っ子)(運命の子・原初の林檎)
イヴ
主人公。
相棒の「魔人さん」とふたり、土地や国、場合によっては時間さえも越えて『御役目』――恋のキューピットとして日夜暗躍している裏方系ヒロイン。
実は年頃である自分に一切合切縁談の話が来てないことにちょっとした劣等感を感じていた。生々しい。
中身は元々生まれてきた「イヴ」の魂の残滓から喚び起こされた、いわば「どこかの世界線の同じ魂の持ち主」
ただ本来の「イヴ」との記憶や感情の擦り合せがなされている為、事情を知らない人には判別がつかない。
彼女の秘密を知ってるのは、魔人さんと両親、長男・次男のみ。
魔人さん
青年の姿をした「魔人さん」。正体は不明だが、主人公が幼少の頃契約を交わし、後に末っ子の魂から「主人公(わたし)」を喚び起こした。
普段は主人公の親・あるいは兄弟役として過ごし、共に暗躍している。
色々秘密が多い。魔人だからね。
「――《守護者》?」
「ああ、そうだよ。イヴ、君はこれから、《守護者》としての御役目を全うしなければならない」
父曰く。《守護者》とは、尊き立場である王族の方々を裏から支える、大事な御役目らしい。正式な先代は私の父方の叔父にあたる人で、以前、何度か一番上の兄もその御役目の補助をしていた、と。
――つまり我が家は、この国の影を支配する一族なのだという。
「なんで、私が?」
私の疑問は真っ当なものだと胸を張って主張しておきたい。これでも私は貴族の家の娘の一人だ。いずれは上の姉たちのように、婚約者なり許婚候補なりと顔を合わせ、遠からず嫁ぐことになるのだろう――そう思っていたのだが。
我が身を振り返っても、両親に別にわがままを言った覚えは無い。貴族の家に生まれた宿命のようなものなのだからと、恋愛結婚をしたいだとか、そんなこともぼやいた記憶は無い。
だが――私は生まれてこの方、一度もそういった縁談の話が来たことは無かった。
この話を始めると長くなるしちょっと泣きそうなので詳しくは割愛するが、つまり私は、家の中でもトップクラスの行き遅れ候補なのだ。
家族の中でも私のこの話題はタブーとされている程である。
(……それでも、私は「女」だから)
いずれ、きっと父はそういう話を持ってくると、疑わなかったから――だから、今、私はとても驚いていた。
父は、目を細め、綺麗な微笑みを浮かべている。
「この御役目を果たせるのは、私の血を濃く継いだ子だけなんだ。兄弟の中で、長男であるアルベルト以外に私の血を濃く継いでるのは――可愛いイヴ、君だけなんだよ」
プロテティカ家は、ちょっと複雑な家系だ。
父母の実家は古くから王家にお仕えする家でも古参の部類に入るらしく、階級もそこそこ高い。例えるなら、上の下、中の上といったところ。
そんなこともあって、我が家含めうちの親類には、王族の方に嫁いだ人も居たりする。俗に言う政略結婚――とはいえ、顔合わせをした後、愛を育んでほぼ恋愛結婚が近年の主流だそうだが、詳しくは知らない。
しかしそんな我が家の立ち位置は王家のアンダーグラウンドな部分――簡単に言うと、王族ならばどこにでもあるような闇の部分のお掃除や情報の統制が主な役割で、それは建国当時から続いている。つまり影を統括する、そっち界隈では一番の力を持つのだ。
私も詳しくは知らないが、他家の王侯貴族よりもうちの家が王族の皆様と距離が近いのは、そういう理由があるそうだ。普通王族が気軽に屋敷に夕飯食べに来たりすることはない。
私には六人の兄弟が居る。私はその末子で第三女にあたる。
上の三人――跡継ぎである長男、その長兄の補佐をする次男、そして長女の三名と、下の三人――次女、双子の三男と四男、そして末子である私を含めた四人は母親が違う。つまり、『腹違いの兄弟』ということだ。
因みに長女は既に嫁いでいるし、次女も婚約者と年内には挙式を上げるらしい。この世界の女の盛りは短い。まして貴族は尚更であった。
上の三人兄姉の産みの母は、私達の母親の姉だ。元気な方だったらしいのだが、頑張って三人を産んだ後、力尽きたようにぱたりとお亡くなりになったらしい。そして妹である母が、父の元へ嫁いだのだとか。
つまり、本来私達下の兄弟と上の兄弟は、いとこ、になる筈だった。まあ、現実は母が父に嫁いだことによって、腹違いの兄弟というカタチに収まったのだけれど。
ツッコミどころが色々ありすぎて、初めて聞いた時、私は正直飲み込めなかった。どういうこっちゃ、と呟いたのは良い思い出である。こんな複雑な家、さぞ兄弟仲もよろしくないのでは――と勘繰った考えをしていたが、蓋を開けばなんてことはない、むしろ他所の母親が同じ兄弟よりもよっぽど仲の良い兄弟だった。いや、ほんとびっくりした。こういうのって何かしらしこりがあるのが定石だったもので。
一番は母が前妻――つまり伯母ととても仲の良い姉妹で、長男が生まれた時から頻繁に遊びに来ては乳母のようなことまでしていたからだろうけど。姉が嫁いだ相手に自分が嫁ぐとか、私では考えられないことだ。母も母なりに思うところはあるだろうけど、父は母のことも深く深く愛しているようだし、今日も朝からイチャイチャしていたので、まあ、大丈夫だろう。
そんな複雑な我が家でも、外見には特色があった。
父親似で色素の薄い銀髪の長男、顔立ちは父似だが、母譲りの金髪の次男と顔立ちも母似の長女、次女は顔立ちが父似、髪は母似の金髪。三男・四男の双子は髪色は金だが、淡い金髪に、母親似の甘い顔立ち。
そして末っ子の私は、長男と同じく色素の薄い銀髪、顔立ちは何とも言えない――父と母の要素を、見事に足して綺麗に割り振ったような感じだった。可愛いのか、綺麗なのか、自分では判断できない。
自分以外に父の銀髪を受け継いだ兄弟が生まれたことが余程嬉しかったのか、長男は兄弟の中でも末っ子の私に一等甘いような気がする。
それは私が「私」として目覚めた前の《記録》からして間違いでは無いだろう。
デレデレとした顔の長兄に撫で回されてる私の、虚無のような表情。「今でもあの顔は鮮烈で忘れられないよ」――と同時に首を振りながら、三番目と四番目の兄は語っていた。
(ありがとう、お嬢さん)
――どういたしまして。
どこからかそんな声が聞こえた気がして、思わず口元に笑みが浮かぶ。
魔人は言った。
私を喚んだ時、この肉体の持ち主である『彼女』と私は同化したのだと――だけど多分、彼女の『意識(こころ)』は、私の中にまだ残っているのではないだろうか。
彼に言わせてみれば私と「彼女」は同じ人間だ。本人曰く、「彼女の魂の中にあった残滓から喚び起こしただけ」だそうだから。
きっと、私を喚んだ――あるいは蘇らせた――彼女は、願ったのだろう。
自分の人生に終止符を、と。
私には、「彼女」が何故そんなことを願ったのか理解することはできない。たけど、任務(ミッション)をこなしながらつくづく思うことは、「彼女」はきっと、とても勉強していたのだろうということだ。己の知識を蓄える為に――あるいは、後に喚び起こす、私の為に。
とても優しい子だったのだろう。
……優しすぎて、きっと耐えられなかったのだろう。
優しいだけじゃ生きていけないこともある。世界はとても残酷で、優しいだけの人に時に牙を剥く。彼女はその牙に、身を裂かれてしまったのだ。だから、私が目を覚ました。
なら、私がしてやれる弔いは、「彼女」の送るはずだった人生を――私がその分、全うしてあげること。それだけ。
「ハァン? 見合い? ワンモアタイム?」
『俺は認めねーぞ? 認めねーからな!』
ベッドに寝転がっている末妹の姿に、片手で目元を覆い天を仰ぐ。ワンピースを一枚被るように着ただけの、未婚の乙女としてはあるまじき格好。しかもその横には成人男性(正確には、魔人だが)の姿。世間に知れたら大問題だ。父上が見たら、多分卒倒する。
「とりあえず、胡座をかくのをお止めなさい」
「いやだ」
困った表情で次男が言った言葉を、ツンと撥ね退けられる。ううん、これが世間一般で言う、反抗期なのだろうか。
+++
一つの仮説が、私の頭に構築される。
まず、わたしたちプロティカ兄弟の「母親」について。
上の兄弟の生みの親である母の姉は、病弱な人で、上の兄弟を産んで間も無く亡くなったと聞いている。そして母とその姉は、よく似ていたと。
そして思い出してみよう。
私が四大王国の一つの国で助けた王族の方が言っていた「影武者」「替え玉」という言葉を。
私の仮説はこうだ。
本来、母の姉(私にとっては伯母にあたる人)は、確かに父との縁談を持ち込まれていた。だけども、父はその人の妹である母が好きで、また母も、父を好いていた。そしてそれを、伯母が利用したとすれば?
つまり、伯母は、母に自分の「替え玉」を頼んだのではないだろうか。
それも、縁談相手であった父や、自身の信用できる周囲の人間をすべて巻き込んで、壮大な計画を秘密裏に行使したのではないだろうか。
そしてそれを了承した上で、父は名目上は伯母――実際は、母と結婚に至ったとしたら?
これは完全に私の邪推であり、何一つとして証拠はない。しかし今はこの仮説のまま話を進めよう。
母は伯母の替え玉のフリをして父と結婚し、上の兄弟をもうけた。そして、おそらくはここからが真のが伯母の狙いだったのだろう。
――表面的な、自分という人間の死。
伯母が望んだのはきっとそれだ。つまり、死亡偽装である。そしてそれは叶えられた。伯母は表向きは『上の兄弟を産んだ後、産後の肥立ちが悪くそのまま亡くなった。そしてその後、妹である母が嫁いできた』――というシナリオを作り上げた。
母は少々厄介な立場に置かされたかもしれないが、それでも愛する父と、己が腹を痛めて産んだ子の側に居られる。父は、愛する母を正式に妻にできてとってもハッピー。それを知らない周囲は、尾びれ背びれをつけていろんな噂をする。そもそも噂ごときでうちを貶められる筈がない。下手なことを言えば、秘密裏に一族郎党始末されるから。
そして、己の死亡偽装を図った伯母について。
実は伯母の結婚(正確には《母》の結婚だが)、それと同時期に四大王国の王族の中で一人、嫡廃された男性が居たのが分かっている。
その人は第二皇子ながらとても才覚ある人で、いずれは王位継承者である第一皇子の補佐を――、と将来を有望視されていたとか。そんな方が何故王族という立場を、家族も未来も捨て野に下ったのか、その真相を知る人はとても少ない。
そしてその真相らしきものを、私は「御役目」で目の当たりにした。
隣国の皇子と恋に落ちた、頭のよく回る貴族の長女の恋のお話。
ふたりは綿密に策を練り上げ、お互いに極近しい人にのみ事実を話し姿を消した。
片方は、表向き他所の貴族の家に嫁ぎ、子を産んだ後死んだとして。
片方は、深い事情によって、王族と皇子という地位を棄てて。
――こうして、壮大な許されない恋は成就した。
……と、いうことはだ。
ここでプロティカ家における、兄弟間のとっても面倒な認識が一気に覆ることになる。今までは「腹違いの兄弟」だったのが、実際は『実は妹が姉のふりをして嫁いだ先で生まれた、正真正銘同じ腹から生まれた兄弟』ということになるのである。
異母兄弟ではなく、同母兄弟。私達は、父親も母親も同じ兄弟だった――という現実に。
「私の仮説はここまで。あとは、父様と母様たちに訊くしかないでしょう」
「……そんなばかな……」「なんてことだ……」
衝撃を隠せない様子で口元を引き攣らせる双子の兄達。
「そ、それじゃあ、私達とお兄様達は、腹違いの兄弟ではなく、正真正銘、血の繋がっている兄弟だった、ということ?」
うそお、と呟く二番目の姉。あらあらと目を見開く、帰省してきた一番目の姉。
「そして、兄弟の中でそれを知っていたのは、アルベルト兄さん、そして補佐役である二番目の兄さんでしょ」
現に二人の兄は、穏やかな表情を崩してはいなかった。
ああ、イライラする。私は御役目を果たせればそれでいいのに、なんで兄弟の複雑な事情なんかを紐解いてあげなきゃいけないのか。それをするのは、本来、父様と母様の仕事だろうに。
そんな私の胸中を感じ取ったのか、「まあまあ」と影に潜んでいた魔人さんがスルリと姿を表した。
後ろから私を覆うように抱きしめる彼は、やれやれと首を振り、「大人はずるいなんて、ずうっと昔から分かってたことじゃないか」と私に諭すように言う。
そんなの、わかってるよ。
「ふふ。感情を処理しきれないのか。まだまだ、青いねえ」
その青さが失くなったら、君も立派な魔人さんになれるよぉ。のんびりと言い放たれた言葉は、言外に私がまだ《子供》なのだと雄弁に語っている。実際そうなので、ぐうの音も出ない。悔しい限りだ。