「凄いな、こりゃあ…」
地球連合軍特殊戦闘艦、ガーティ・ルーのブリッジに男の感嘆が響いた。
非正規特殊部隊ファントムペイン指揮官、ネオ・ロアノーク大佐は、モニターが表示する敵軍の新戦力を前に、仮面で覆われた顔に笑みを浮かべていた。
「やはり連中は油断なりませんな」
艦長のイアン・リーが、苦い顔で吐き捨てる。
「これ程のものを月起動に配備するとは…デュランダルの言っている和解とは何なのでしょうな。たしか彼は“穏健派”ではなかったか」
「少なくとも、穏やかなやり方ではないだろうねぇ」
ネオの声色は飄々としてどこか楽しそうだった。「さて」と振り向いて、自分の後ろに控えていた部下に向き直る。
その顔にまだ幼さを残した3人の部下は、興味深そうにモニターを見つめていた。
「待たせたね。いよいよ仕事だよ」
その言葉に3人の表情が期待で明るくなる。
「なあ、ネオ。俺達がこれ貰ってもいいんだろ?」
アウル・ニーダが尋ねる。
無垢な瞳を輝かせながら指差す先にあるのは、3機のモビルスーツだ。
「ああ、成功したら好きに使っていいとのお達しだ」
「やったね!」
はしゃぐアウルの横で、ステラ・ルーシェが首をかしげた。
「ステラの分も、ある…?」
「もちろん、この中から好きなものを選びなさい」
アウルとステラは顔を見合わせて笑う。
その無邪気な笑顔だけ見れば無害な子どものようだが、彼らの所属は第81独立起動軍…戦闘用に肉体改造された
「でも、そんな簡単じゃないんだろ?場所が場所なんだから」
そんな2人の様子を見ていたもう一人の
冷静な判断能力を持ったスティングは、ネオにとって有難い存在だった。彼が衝動的に動きがちなアウルとステラの兄貴分の役割を担ってくれるおかげで、任務を遂行することが出来ている。
ネオは画面を目標地の地図に切り替えた。
「3人には式典に出席する一般人として潜入してもらう」
コロニーL4“アーモリーワン”
プラントの軍用コロニーでは、明日ザフトの新造船の進水式が行われる。
「俺等なら余裕さ」
アウルが得意げに言う。
「出発は明朝。期待しているぞ」
ネオの言葉に、3人は誇らしげに大きく頷いた。
他者との協調が難しい3人は、ネオだけには強い信頼を寄せていた。
「楽しいお出かけの前には、しっかり身体を休めないとな。さぁ、“おやすみの時間”だよ」
ネオが退出を促す。
明日は3人でお出かけ。楽しみだと胸を踊らせながらエレベーターに向かうステラは、ふと何かを思い付いて足を止めた。
――“3人”で、おでかけ?
「…フィーネは?」
この作戦に向けたプラントへの潜入任務から戻って来たはずのもう一人の仲間の顔を、ステラはまだ見れていない。
優しいフィーネ。いつもなら真っ先に会いに来てくれるのに。
「彼女も少し疲れたようでね。休ませてるんだ」
「…そう」
ステラはフィーネが好きだった。
優しくて強くて。
しばらく会えなかったから、たくさんお話をしたい。
“おやすみの時間”が終わったら、会いに来てくれるだろうか。
ステラはそんなことを考えながらエレベーターに乗り込んで、見送るネオに「おやすみなさい」と手を振った。