『傲慢にも散漫にも』



闇の中に病みがあった
喉には塊があり全てを飲み込む事が出来ない
溢れ出す汗を拭う事も忘れ
目を凝らしてみてもそこには
何も無く伸びた影だけが異彩を放つ

空気は気の流れを失い
淀みながらただ重く行き場を亡くす
静寂、暗闇、怠惰、暗澹、傷痕、気力
何をもが色褪せてしまった
私に在るのは狂ってしまった時間軸

太陽も草木も川も大地も
宇宙の果てで息づいているだろう
そして此処は何処、夜の帳の成れの果て
動きを忘れ思考は留まり五感が固まる
私は私を私に失踪の沽却

満月の夜だった雲に覆われていた
か細い声を放っていた光の残像
瞬きもせずに見下ろした闇の中に
病む人々の意識不明行方不明
無力非力な月はいつものように微笑む

誰かを救う事の傲慢に苛立ちながら
あやふやな光を誤魔化しながら
規則的に形を変えてゆくのだ
その姿を美しいと見惚れる人の健やかな吐息は
誰かを攻撃し堕としてゆくのだった



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