『ノスタルジア』
校庭の端、あの樹の下が
いつもの特等席。
見られていることなど
きっと知らないあの人は
いつものように声を出して
練習に勤しんでいた。
ゴール前の、守護神。
涙が頬を滑る時の潮騒が
私の表面張力を揺らし始める。
どこにいても誰といても
あの人の姿はすぐに見つけられるのに
あの人の視界には入ることなど
出来ずに。
隣にいる権利を得たあの子は
幸せそうに微笑んでいました。
私には出来ない表情が、そこに。
あの人の、そばに。
見ているだけなら
ただ想っているだけなら
そのくらいなら、許されますか?
三年間と
その後の数ヶ月。
私はただ長い夢を見続けていたのかもしれません。
今でもはっきり顔を思い出せるというのに。。。
春はもうすぐそこに。
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