angelic


『陽炎』



 この想いは最早狂気でしかなかった。
脳は支配され心は荒れ狂う水面そのもの。
感情だけが先走り疑心暗鬼に苛まれ、とどまることすらできずに。
 貴方は別人となり、顔も名前も分からず。
愛した人は貴方とは違う赤の他人だったが、その人は貴方と同じ名を私に幾度も告げるのだった。
 現実は私を異次元へと遠ざけたのか。
幻だけが私に残る。
そっと消えた貴方と歩むには、受け入れなければならない現実だけが異彩を放ったままそこに在る。
 貴方がいない。
狂ってしまった私だけ取り残されて、幻と共に生きる。



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