人気のない住宅街。私しかいないと錯覚させる程の過疎。しかし着実に何かが近くにいる気配ーーーーーーーーーー
「ーーーーー。」
暗転
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1ヶ月前
私は疲弊していた。怒鳴る上司に使えない同期。連帯責任で残業をさせられ終電に乗って誠士郎の家に行く生活が続く。
相変わらず誠士郎とは毎日一緒にいる、誠士郎が帰ってくるとご飯を作りお風呂に入ってセックスをして寝る。そして私が朝起きてそのまま仕事先へ向かう。の繰り返し。
所謂セフレと何ら変わらない関係。お互い恋愛感情の無い、きっと後腐れない関係なのだ。誠士郎の家に着き合鍵で入る。相変わらず部屋着は脱ぎっぱなしだったので畳んで、布団を綺麗にシワを伸ばす。
家政婦みたいだ。私。でも苦じゃない。
きっと誠士郎はもうすぐ帰ってくるだろう。
彼は面倒くさがりなのでアフターは一切しない。本人がそう言って居たし実際毎日真っ直ぐ帰ってきて居たから。
誠士郎は帰ってこなかった。
お酒飲みすぎて酔い潰れた?スマホを見ると「クライナー30杯飲まされたーー店で死んでた。」の文字。誠士郎がお酒で潰れるのは珍しい。まあ、そんな日もあるだろう。
あれから3日、誠士郎は朝帰りだった。
少し寂しい気持ちもある。でも早く帰ってきてだとか寂しいだとか、それは彼にとっては痛客だと思われてしまうに違いない。私は何も言わずに帰ってきた誠士郎に「おかえり。」といった。誠士郎は少し寂しそうな顔をしていた。
次の日、私は別の営業所に出社するのでいつもより1時間ほど早く誠士郎の家を出た。駅に向かう途中に少し繁華街に入る。
朝の繁華街は酒で酔い潰れて路上で寝ている人や酔っ払って叫んでる人がいて無法地帯だ。私はそれを尻目に歩いて行く。
すると正面前に見慣れた白髪の長身の男。そして横には腕を組む女の子。
誠士郎、女の子といたんじゃん。
少し脳がフリーズする。受け止めきれない、処理できない。脳がシャットダウンする感覚。前から歩いてくる誠士郎と女の子の距離が縮まる。
「誠士郎、気持ちよかった♡またいこーね♡」
すれ違いざまに聞こえた言葉。俯いて歩いていたが、誠士郎はきっと私に気づいているだろう。
「うん、いいよ。俺も気持ちよかった。」
そこからの事は覚えていない。
私はいつのまにか電車に揺られていた。
誠士郎のことを受け止めきれない。なんで。
なんでなんでなんでなんでなんでなんで
思考がぐるぐる回る。
「いや、所詮私セフレだし、誠士郎にセフレがいてもおかしくないかぁ・・」
ショックな気がするが、この街はそう言う所だ。息をするように嘘を吐き、女も男も惚れたら負け。私と誠士郎は元々違う世界にいるだけだ。そもそも私達は付き合って居ないし、お互いの人間関係に口出しする筋合いもないのだ。
「まー。いつまで経ってもうじうじしてもしょうがないしね。誠士郎と私の関係なんてそんなもんでしょ。」
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すれ違った時、名前は泣きそうな顔をしていた。いつも余裕そうな可愛い笑顔を見せる名前。俺を甘やかしてくれる名前。俺の名前・・。
「もっと俺のこと考えて、俺のせいで病んで。頭の中、俺でいっぱいになって。
仕事出来なくなるくらい、ボロボロになって欲しい。」
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いつものように帰宅して誠士郎がいないベッドの上に横たわる。
「今日も女の子といるのかなー。私が家いる意味あんまない気がしてきたかも。」
だってただの家政婦じゃん。と毒を吐く。
眠気が来たので明日も仕事だし眠りについた。
ギシ ギシ
パン♡パン♡パン♡パン♡パン♡パン♡
「んっ、、♡!?んひゃぁあ!?な!?に・・!?!?」
下半身の違和感で目を覚ますと、上には誠士郎がいて、誠士郎のおちんちんが私のナカに入っていた。
ごりゅ♡ごりゅ♡ごりゅ♡ごりゅ♡
「ぁああぁん♡♡せい♡しろ、♡ッ♡ぅ♡」
誠士郎の光を宿さない仄暗い目と合う。
「ねえ、名前。悲しかった?」
「んぁ♡ひぃ♡な、なに・・ッッ♡」
「俺が他の女にお世話されて、悲しかった?病んだ?泣いた?」
「ぁう♡♡ひゃぁあ♡♡ちょっ・・♡とだけ・・かなしかったよ・ッッ♡♡」
「・・・・。」
「ぁ♡せいしろぅっ・・♡ひゃぁああああっ♡♡♡」
ずぷん!!と音を立てて誠士郎は思い切り私の中の入っちゃいけないところにおちんちんを穿たれる。
「らめらめ♡♡それ♡♡むり♡ッッ♡♡ぁあ゛あ゛♡ぁ゛♡」
「足りない。」
「ぁ、あ゛♡♡ひぎぃ♡♡ぁあ゛つ♡」
「なんで泣かないの?なんで?悲しくならないの?俺が取られても平気なの?名前、答えて。」
「ひ・・♡ぅう♡♡・・」
「答えて。」
「ぁう・・やめ・・て・・♡♡」
「答えろ。」
誠士郎は私の首を掴み絞め上げる。苦しい、苦しいけど頭がふわふわして快感を拾う。
チカチカと目の前が誠士郎がぼやけてくる。
「ぐ・・ぉ゛・・♡ぁ゛・・♡」
「首絞めたらまんこ濡れてきたけど。変態なの?」
「ぉ゛・・・ひぅ・・・ひっぐ・・ぅ゛・・」
苦しさと快感で涙が止まらなくなる。
誠士郎の目は何も写していないままうわ言のように呟いた。
「悲しいの?名前・・?辛い?俺、あの女にもちんこ入れたの。名前が好きな種付けプレス沢山した。名前が好きなべろちゅーもしたし、おっぱいも沢山ぺろぺろした。ねえ、悲しいよね?もっと泣いてよ。俺を安心させて。ほら。名前。」
誠士郎の瞳孔は開き切っていた。
怖い・・私はこんな怖い誠士郎・・知らない・・・いつも可愛くてあざとくて、今はそんな欠片も感じられない。
誠士郎、間違ってるよ。
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首を絞め続けてセックスして、乱暴にして、動物の交尾をする。名前のナカにどろどろと精子が注ぎ込まれる。名前は気絶していた。
そんな名前の頭を撫でながら仄暗い瞳は優しさを少し含んでいる。
「俺には名前だけだよ。あの女は名前が俺に依存してもらう踏み台だから安心して。だからーーーーー」
早く堕ちてよ。名前。
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あれから誠士郎は少し変わった。私と居るときは相変わらず「ねー頭撫でて寝かしつけて。」「ご飯食べさせて。」「お風呂一緒にはいるー。」「えっちしたいー服脱がせて。」と可愛い誠士郎のままだ。でも、私が仕事に行ってる間、誠士郎からの連絡はひっきりなしに来るようになった。
「仕事なう?」
「実は他の男といるの?」
「また俺があの女と会ってもいいの?」
「名前が居ないとヤダ。」
「なんで返事しないの?」
「俺より仕事の方が大事?」
「不在着信」
「不在着信」
「不在着信」
「不在着信」
毎日毎日ひっきりなしにくる連絡、不在着信。ただでさえ仕事のストレスで疲弊しているのに誠士郎によってさらに悪化させられた。私達は付き合ってない。誠士郎も付き合ってとは言ってこない。きっと都合いいセフレだから思い通りにならないのが腹立たしいのだろう。誠士郎はわがままだから。
腹立たしいところだが、私は今まで積み重ねてきた誠士郎との関係を崩したくはなかった。ずっと可愛い誠士郎でいてほしかった。
それは私のエゴなのかもしれないが。
もしかしたら誠士郎の精神を乱してしまったのは自分なのかもしれない。私はホストとしての誠士郎としてしか見ていなかった。一人の人としての誠士郎の本質を見て居なかったのかもしれない。それが誠士郎を歪ませてしまったのか。段々と罪悪感が湧いてくる
「ごめんね。誠士郎。」
暫く、距離を置いた方がいいのかもしれない
距離を置くことでお互いがお互いの大切さに気づく、というのはありきたりな話だ。
私と誠士郎は最初から近すぎた。ホストと客の関係ありきではあるが。
一旦お互いが離れることでお互いが冷静になれると、また変わってくるだろうと思う。
見つめ直す時間が必要かもしれない。
丁度いいタイミングで出張の会議が入った。
二日間だけではあるが私は誠士郎の家には帰らず、暫く自宅で過ごそうと思った。
私は寝ている誠士郎を横目に仕事の準備をしている。
「こうやって寝てると、本当赤ちゃんみたいなのになあ。」
すぴーと寝息をかく誠士郎を見ていると愛しさが込み上げてくる。あぁ、私誠士郎のことが好きなのかな。恋かどうかはまだわからないけども。手放したくないなって思った。
その為にもお互い距離を置く事は必要だ。
一週間ほどでも、お互いが一人になれる環境があった方がいい。その間誠士郎は女の子と会うのかもしれない。それだったらそれまでの関係だ。悲しいけども。
「行ってくるね、誠士郎。」
眠っている誠士郎の柔らかい唇にキスを落とした。誠士郎は「んーーー。」と寝返りを打ってすやすやと眠っている。
机に合鍵を置き、玄関に向かう。
「またね。」
誠士郎といたこの空間は甘くて苦しい夢のようだった。
バタン、とドアが閉まる音でうつらうつらと少し覚醒する。ノンレム睡眠の波はもう終わっていた。
「・・・名前。」
無機質な部屋がドロドロとしたナニカに侵食されて行く。
ーーーーーーーーー
「お疲れ様でした!!!!」
二日間の出張が終わり家路につく。
すごく疲れたがやりがいのある仕事だ。会議でも褒められ少し上機嫌だった。
誠士郎のことはブロックをした。距離を置くためだ。一週間後に解除して連絡をしようと思っている。現に私は誠士郎の家を出た日に「少し距離を置きたい、一週間ほどでいいから。ごめん。」と一言連絡を入れていた。
ブロックしているから既読されているかは分からない。でも私達に必要な事だと思ったから、お互い未熟なままだったから。
久しぶりの自宅、いつも誠士郎の家にいたから自宅がとても新鮮に見えた。
久しぶりの自分のベッドで眠りにつく、私は憑き物が取れたかのように身体が軽かった。
「やっぱり一人でいる時間って必要だな。でも、少し誠士郎の事は心配かも。」
誠士郎は私がいなくても大丈夫かな。ごはん食べれてるかな、ちゃんと寝れてるかな、と心配になった。誠士郎が勤めているホストクラブのSNSを開くと「本日のラストソングはーーーーー凪誠士郎ーーーー」と書かれている。ちゃんと仕事にも行けてるし安心した。
「誠士郎、すきだよ。」
あと5日。私を選んで欲しいなあ。
ーーーーーーーー
「本日のラストソングはーーーー!凪誠士郎ーーーー!!!!!」
煌びやかな店内、目の前にはキラキラとした飾りの数々。高級ブランデー。横には頬を染めている笑顔の女。周りに集る男達。耳障りなBGM。
煌びやかな空間を出て期待する女をエレベーターに送る。
「誠士郎、私ホテルで待ってるから。」
待たなくていいよ。俺家に帰るから。
無機質な部屋、白いベッド。
夢の痕。
外に散らばる白い錠剤
「俺、息できないや。」
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もうすぐあれから一週間経つ。日付が変わったら、ブロックは解除するつもりでいる。
誠士郎には愛想を尽かされたかもしれない。
もう連絡は返ってこないかもしれない。他の女の子のところに行ってしまったのかもしれない。焦燥感と不安に駆られる。
でもあのままじゃ駄目だった。きっとこれが正解だった。私も、誠士郎も、成長しなければならなかったから。
でも、心の奥底で変わってほしくないという気持ちが少しあった。どんな誠士郎も好きで居たい。可愛い誠士郎も、歪んでいる誠士郎も。私は否定することができなかった。
仕事帰り、最寄駅を出て家に向かう。
時刻は22時。駅周辺は人がちらほらいるが住宅街に入ると一気に閑静になる。
自分の靴が地面を踏むコツコツと音がする。
スマホでニュースサイトを見ながら最近物騒だなあとか、今日の晩御飯どうしようとか、何気ないことを考えながら歩く。
コツ・・・コツ・・
後ろから人が歩いてくる音がする。きっと方向が同じなのだろう。
コツ コツ
やけに私の歩くスピードに合わせている気がしないこともない。気のせいか。
コツ コツ コツ
なんか不気味に思えてきた・・さっさと家に帰ろう・・。
コツコツコツコツ
え、付いてきてる・・!?それか私を追い抜くだけなのかな・・?分からない、分からないけど怖い。後ろを振り向けない。
私が走ろうとした瞬間、ガバッと後ろから取り押さえられ、口にハンカチを当てられた。
「・・・!?!?ッッ!?」
意識が朦朧とする。混濁し力が抜けて倒れて行く中で見えたのは、フードに隠された白髪だった。
「迎えにきた。名前。」
暗転
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何をするにも面倒くさいし、女の感情なんてもっと面倒くさい。この仕事をしてるのは楽したくてしてるだけ。実際になんもしなくても稼げてるから。
勝手にボトル下ろして、飲んで、酔っ払って、俺の身体と心を求めてくる。なんでなんだろう。面倒くさい。俺は寝てたいしダラダラしてたいのに。客の女達はそれを許さない。勝手に風俗に堕ちて、勝手に病んでるだけ。俺に押し付けてもなんの意味もないのに
「誠士郎は私と一緒にいて!!」
「誠士郎の為に今日頑張るね♡」
「誠士郎にタワーしたら今夜一緒にいてくれる?」
「ラスソン取ったら誠士郎に枕してほしい♡」
面倒くさいなあ。
「私は・・・誠士郎が誠士郎のままで居てくれたら、それでいいよ。私は誠士郎が横に居てくれるだけで幸せだから。」
「いつも膝枕で寝てる誠士郎は可愛いし、見てて私も幸せになってくるの」
「誠士郎のおかげで毎日楽しいよ。私と出会ってくれてありがとう」
名前は違った。一つの光だった。
名前は俺に何も求めなかった。営業中に俺が名前の膝枕で寝て居ても「可愛いね。」と、ずっと笑顔だった。
名前が作ってくれたご飯は暖かかった。
咀嚼は面倒だったけど不思議と嫌ではなかった。名前の身体はぽかぽかして抱き心地が良かった。安心感があった。「誠士郎、起きて?遅刻しちゃうよ?」と囁く声は心地よかった。名前の存在が俺を安心させてくれて、息ができる居場所だった。
名前は俺を否定した事はなかった。ずっと笑顔でニコニコしていた。
その笑顔をぐちゃぐちゃに崩したくなった。俺、もっと名前の表情を沢山見たい。俺ばかり名前の事を考えてて、馬鹿みたい。俺ぐらい名前も俺のことで頭いっぱいになって欲しいのに。
テキトーに連絡先にいた女に連絡してラブホに雪崩れ込んでセックスした。
女の喘ぎ声はでかいし五月蝿いし耳障りだった。名前の声だったら興奮したのに。
女をバックで突きながら、名前が嫉妬してくれたら泣くのかな?病むのかな?悲しむのかな?と色々考えた。「誠士郎・・。」と涙を流して俺に縋る名前を想像したらメキメキと勃ってきた。女は絶頂してビクビクと身体を震わせた。
きっと俺は歪んでいると思う。希望の光だった名前を今から壊そうとしているのだから。でも壊れたら俺がお世話したらいいや。名前は沢山俺のお世話をしてくれたし。
もう仕事も辞めてね。一生俺が養うしここからもう出さないから。名前の為に仕事頑張るよ。面倒くさいけど。
名前にあーんしてご飯を食べさせて、一緒にお風呂に入って名前の身体を洗ってあげて、名前が満足するまでえっちして、俺を抱き枕にして一緒に寝よう。俺、名前が居ないと寝れなくて寂しかった。
でも、俺から逃げたお仕置きはしないと。もう逃げちゃだめだよーって少しおいたをするだけだよ。名前の身体をズタズタにするけど許して。名前が悪いんだから。
時々俺と二人でデート行こう。そういえば一緒にデートしたことなかったよね。俺のって印を沢山つけて、みんなに見せびらかせばいいじゃん。
「早く目を覚まして。名前。」
無機質だった部屋は二人の楽園になった。