名前 、名前・・・・
「愛してるよ、俺名前のこと養えるように頑張るから。死んだ後もずっと一緒にいようね。」
ザクザクと傷を刻む音と、女の悲鳴。無機質な部屋が赤く染まる。
血塗られたカッターを持って俺は名前の腕に自分の名前を刻みつけた。
誰のものかわかるようにしないと。
俺から離れようとしたお仕置きで根性焼きを入れた。名前は涙で顔がぐしゃぐしゃになっていて、怯えて俺を見た。痛みで泣き叫ぶ姿は可哀想で、可愛くて、可愛くて、満たされていった。
「誠士郎・・!!痛い、いたぃ・・!やめて、やめてよぉ・・しんじゃぅ・・いや・・嫌・・!」
「ありがとう名前、俺今凄く幸せ。全部報われた気がする。名前に出会ってなかったらこんな感情知らなかった・・。愛してるよ。」
こんな愛し方しかできなくてごめんね。
名前がいないと生きていけないから名前も俺が居ないと生きていけなくなってね。
ーーーーーーーーーーーーーー
誠士郎に眠らされてから目が覚めたら誠士郎の家にいた。久々にみた愛しい顔は相変わらず無表情だけど優しい顔をしていた。
お仕置きだと言って誠士郎にはカッターで腕に名前を刻まれて根性焼きをされた。凄く痛い。誠士郎の顔は相変わらず優しい顔をしていた。痛くて痛くて堪らないのに、何故か私は誠士郎に愛されていると思ってしまった。
前は散々愛し合ったベッドは血で所々赤く染まっている。誠士郎は自分が刻んだ腕の傷跡を舐めて、私に沢山愛を囁いた。
「愛してる、名前。ずっと一緒にいようね。ねえ、根性焼きって一生消えないんだよ。俺[FN:名前]に一生消えない傷を付けたんだよ。俺に愛されて名前は幸せだよね?
名前・・・俺今幸せで泣きそう。」
「誠士郎・・・」
私、愛されてるのかな。
ごめんね。酷いことをして。誠士郎を一人にしてごめん。
誠士郎は間違ってなかったんだ。分かってあげられなくてごめんね。大好き。
ーーーーーーーーーーーーー
3ヶ月後
「「「いらっしゃいませー!!!!」」」
キラキラとした空間が広がる中、誠士郎と私は足を踏み入れた。今日は同伴でお店にきている。
ここが誠士郎と出会った場所。少し懐かしくて目の奥がツンとなった。
キャッシャーで誠士郎と別れて内勤さんに案内される。卓に案内されて軽くお酒を頼んでヘルプが来るのを待つ。スマホをいじってると「名前!!?」と呼ぶ声がして見てみると、誠士郎と出会ったキッカケとなったこの店に連れてきてくれた友達が横の卓にいた
「えー久しぶり!全然連絡とれなくて心配したよー!!」
「久しぶり、ごめん、スマホ壊れちゃってて、新しくしたんだよね。」
誠士郎に見つかって傷を刻まれたあの日、私のスマホは取り上げられて次の日に誠士郎の名義でスマホを新しく契約したのだ。連絡先も誠士郎だけ。仕事も辞めさせられて家も解約させられて暫くは監禁されていた。友達は勿論そんなことを知るはずもない。
あの日から誠士郎は毎日仕事から帰ってくると毎日身体を求めるようになった。繋がっていないと不安だと泣きそうな顔で言うからそんな顔をさせたくなくて受け入れる日々。
幸い手錠や鎖で拘束されることはなかった。
仕事も辞めさせられて外部との繋がりを断たれた今誠士郎がいないと生きていけないから
ここから逃げたところで私の居場所はないし、もう誠士郎を悲しませたくなかった。
毎日増える噛み跡やキスマーク。カッターで刻まれた誠士郎の名前は瘡蓋になって消えかけているが、お仕置きと称してされた根性焼きは痣となって残っている。友達は私の首についている異常なほどの跡を見ると怪訝な顔をした。
「ねえ、名前。誠士郎に酷いことされてない?」
「え、されてないよ?誠士郎は相変わらず可愛いよ〜!」
私がそう返答をすると友達は泣きそうな顔をした。
「嘘つかないで・・!アンタ、私と会った時よりこんなにやつれて・・そんな病んだ顔してなかった!!ねえ、誠士郎が名前に何かしたんでしょ・・。ねえ、知ってる?ネットでこのお店の掲示板があるの。ここ最近誠士郎が女に色ボケしてるとか、誠士郎が女囲ってるとか、誠士郎が一人の女を洗脳してるとかよく書かれるようになったの。名前、誠士郎と離れたほうがいい・・!!前に私の卓にヘルプに着いた時名前の事を聞いたらあいつ、「ねえ、俺の話?」ッ・・!!」
友達の話を聞くのに夢中になっていたらいつのまにか誠士郎が来ていた。友達は誠士郎をキっと睨んで席を立った。
「ねえ、あいつと何話してたの?」
「えっ・・?あー、久しぶりだったから何してたのーとか、連絡取れなくなったから心配してくれたの。」
「んー。俺嫉妬しちゃいそー。だって俺よりあいつの方が名前と付き合い長いから、俺の知らない名前をいっぱい知ってるし・・やだなー。」
「ご、ごめんね誠士郎。もう話さないから」
私が謝ると誠士郎は私の首に噛みついた。
歯型が残るように歯をぐりぐりと横にスライドさせる。痛くて涙が出そうになる。
くっきりと着いた歯型を見ながら誠士郎はドロドロとした目を少し輝かせた。
暫くするとヘルプがきてお酒を乾杯した。
そういえば初めて会った時、誠士郎は私の太ももを枕にして寝てたんだっけ。今は私の腰に手を回してずっと私を見ている。
ヘルプと私が他愛ない話をしていても誠士郎は話に入ることなくずっと私だけを見ていた
少し優越感に浸る。誠士郎がこの空間で私以外を見ないことが、少し嬉しかった。
私も相当誠士郎に毒されているのかも。
内勤の人がヘルプに耳打ちをするとヘルプの人は「ごゆっくりどうぞ。」と言って卓を抜けた。誠士郎と二人きりになる。何故かそれが懐かしく思えた。
「ねえ、覚えてる?名前が初めてここに来た時、今の卓に座ってたんだよ。初回できて、俺名前に膝枕してもらって、懐かしいね。」
「懐かしいね・・初めて会った時、赤ちゃんみたいで可愛くて飲み直ししたんだよね。」
「えー。俺赤ちゃんじゃないし。名前のダンナサマだから。」
「んー私と誠士郎、結婚するの?」
「するよ。俺一生名前のこと縛りつけるから。」
「結婚したら誠士郎との子供、欲しいなあ」
誠士郎に似て可愛い子が生まれるんだろうなあ、と言いかけた時ゾワッと悪寒が走った。
誠士郎の目が瞳孔を開き私を見下していたからだ。威圧感が凄くて息が詰まる。ゆっくりと私の下腹を撫でながら誠士郎は口を開いた
「例え俺との子だとしても名前は俺だけの女の子なのに、子供ができて俺だけの女の子じゃなくなってしまうって考えたら殺してしまいそう。ねえ、俺との子供、欲しくないよね?名前は俺だけだよね?ねえ。」
「そ、そうだね。私には誠士郎だけだよ?ごめんね。」
「んー。名前大好き。ねー名前の泣きそうな顔見てたらムラムラしてきた。帰ったらえっちしよーね。」
誠士郎は優しい顔に戻っており、私に軽くちゅ、と口付けをすると「そろそろ退店時間か・・」と呟いて顔に影がかかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
そろそろ退店の時間だ。
エレベーター前まで誠士郎に見送ってもらう。誠士郎はいつも寂しそうな顔をする。私は誠士郎の家に帰るだけなのに。
「ねぇ、真っ直ぐ家に帰ってね。他のキャッチに声掛けられても無視してね。誰とも目を合わせないで。」
「うん。誠士郎以外目を合わせないよ」
「名前、名前・・」
目が虚になっていく誠士郎を見ると少し悲しくなってしまう。不安なのだろう。私は誠士郎をまだ満たせてあげれてないんだね。
虚に下を向きながら私の名前をボソボソと呟く誠士郎をギュッと抱きしめた。
「大丈夫だよ。私は何処にもいかないから。誠士郎だけだよ。それ以外何も要らない」
「名前・・名前・・俺、名前がいないと・・」
「居なくならないよ。帰ったら誠士郎でいっぱいにして。誠士郎を沢山私に刻みつけて・・」
「名前・・名前も俺だけでしか満たせない・・好き・・すき・・可愛い・・。」
誠士郎は時々不安定になる。壊れたおもちゃのように私の名前を呟いたり、突然首を絞めて「このまま名前を殺せば俺だけの女の子になる・・」と言う時がある。
距離を置こうと私が誠士郎をブロックしていた時、誠士郎は一人に耐えられず睡眠薬を通常より多めで飲んでいた。所謂オーバードーズだ。それ程私と離れたくなかったのだと痛感した。罪悪感に駆られた私は生涯誠士郎を一人にしたくないと強く思った。
共依存に限りなく近い関係で、私達はおかしいのかもしれない。でも誠士郎に対する罪悪感と愛情はホンモノで、私のせいでおかしくなってしまった誠士郎が今は可哀想で可愛くて仕方がなかった。
思えば距離を置こうとした時から既に私はおかしくなっていたのかもしれない。
分かっていたもの。誠士郎が私に嫉妬させたくて他の女と寝たのも、わざと帰ってこなかったのも。私はきっと誠士郎を試したんだ。わざと距離を置いて、誠士郎がどうなるのかを。まさか私を拉致して、仕事も辞めさせて家も解約させられるとは思っていなかったけども。
私の身体につけた傷跡も、根性焼きも、噛み跡も、痣も、キスマークも、全てが愛おしい。誠士郎が私の身体に存在を刻むことが私にとって至福の幸せだもの。
「誠士郎、死んでも離さないよ・・」
私が一生誠士郎のことを縛り付けるから、誠士郎も一生私を縛りつけてね。
ーーーーーーーーーーーーーーー
キミは俺だけの女の子になった。
あの子の身体には俺がつけた傷やキスマークだらけで見ているだけで幸せな気分になれる。毎日名前が可哀想で可愛くて愛おしくてどうにかなりそう。
俺、名前の為に仕事頑張るって決めたからなるべく遅刻もしないようにしたし、客の女は鬱陶しいけどペラペラに軽い言葉を並べて褒めれば煽らなくてもシャンパンが入る。
掲示板では色々書かれてるけど、あんなのを鵜呑みにしてる女は要らないからこっちから切る。まー書かれてることは事実。俺名前に色ボケしてるし名前のこと囲ってるし。名前は俺だけの女の子だから。
そういえば名前の友達がピーピーうるさかったなー。この前俺がヘルプついた時
「名前と連絡が取れない。誠士郎がなんかしたんでしょ。」
って言うから
「[#FN:名前]#は俺だけの女の子だからお前と連絡取らせるわけなくない?後名前とはもう関わらないでね。お前があの子をここに連れてきてくれたお陰で俺は名前と出会えたワケだし感謝はしてる・・。でもダメ。
名前は俺以外見たらダメだから。」
って言い返した。友達は目をかっ開いて怒ってたけど知らない。俺は名前が隣にいてくれれば他なんてどうでもいい。
ねえ、俺知ってるよ。名前が俺を試してたの。わざと俺と距離取ったんだよね。名前も不安だったんだよね。だから試したんだよね。お望み通り俺は名前を捕まえてもう何処にも行かせないようにしたよ。
分かってても名前が居ない部屋は寂しくて、名前と寝ていたベッドで一人で寝るのは辛くて、睡眠薬を飲んでもなかなか効かなくて多めの量を飲んでたんだ。名前のせいだ、ぜんぶ名前のせい。だから生涯かけて責任とってね。可哀想な俺をずっと愛してね。俺も傷だらけで泣きそうな可哀想で可愛い名前を一生愛してる。
不安で名前と少しでも離れると俺はおかしくなる。頭が真っ白になって、名前が視界から居なくなると寂しくて辛くて、頭がグチャグチャになる。
名前に依存してるけど名前も俺に依存してる。共依存だよね、ずっとこのまま二人で堕ちて行こう。一緒に幸せになって不幸になろう。
エレベーター前、不安で下を向いている俺を抱きしめた名前は聞き取りにくい声で一言呟いた。その言葉に俺は嬉しくて名前を力一杯抱きしめ返した。何それ可愛い。名前も俺のこと大好きじゃん。俺のとこに堕ちてきてくれてありがとう、俺を世界一幸せな男にしてくれてありがとう、名前。
「俺のこと、置いていかないでね。名前」
その道はもう行き止まりだよ。